スイスの田舎町を舞台に、潰れかけの刺繍店を営む女性が犯罪に巻き込まれ、針と糸を武器に立ち向かうという、「お裁縫クライムサスペンス」を観てきた。邦題は、「世界一不運なお針子の人生最悪な1日」。最近のラノベのような長いタイトルだが、原題が分かりにくいので、悪くはないと思う。
主人公は、車の運転中、麻薬取引の現場に遭遇する。何らかのトラブルがあったようで、撃たれて倒れている売人と、大金の入った鞄が路上に…。周囲に人はいない。彼女は、「完全犯罪を狙い、お金を奪う」、「警察に通報する」、「そのまま通り過ぎる」という選択肢を考えるのだが…。
ここから、話は次から次へと意外な方向に転がっていく。主人公も、周囲の人物も、麻薬の売人達も、クセ強の曲者揃い。彼らが織りなす皮肉の効いたストーリーが、(途中、語り口がもたつくところはあるが)飽きさせない。”if”で分岐するところをやり直したらどうなっていたのか?というところの見せ方も上手い。
そして、オチも、中々に気が利いている。結局、彼女が選択を間違えたポイントは、そこじゃなかったんだよなぁ。コメディ要素のあるクライム・サスペンスとして、好印象の作品だ。
今年は、1925年に開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」(通称 アール・デコ博覧会)から100周年。アール・デコ期の服飾の展覧会を観に、三菱一号館美術館に行ってきた。
当時のモードの状況について、この展覧会を通して私が理解したところだと
コルセットが強要する曲線によって特徴付けられていたアール・ヌーヴォー期のファッションから、
コルセットの束縛から解放し、シンプルな裁断が生みだすアール・デコ期のファッションへと流行が移り、Gabrielle Chanelや、Jeanne Lanvinなど、今も、そのブランドが生き続けているデザイナーが活躍する。という流れ。
ということで、世界的な服飾コレクションを誇る京都服飾文化研究財団(KCI)が収集してきた、約100年前の服飾作品が並ぶ。それだけでなく、当時の絵画や工芸品(日本の漆芸を応用した服飾小物など、興味深い)も、たっぷり。全310点の展示品は見応え十分。
ただ、宝飾品やRené Laliqueのガラス工芸などは、先日観た、東京都庭園美術館でのVan Cleef & Arpelsの展覧会が圧倒的だったので、そこは見劣りするのは仕方ない。我ながら、使い途のないところで目が肥えてしまったか…