IN/OUT (2025.7.13)

週の途中で、極端な豪雨の後、一気に気温が下がりました。この程度で良いんだよ、と思ったのも2日間ほどで、すぐに猛暑に戻ってしまいましたが。あるところには、あったんですね、冷気。


in最近のIN

”Superman”25.7.12

丸の内ピカデリーJames Gunn監督がリブートした”Superman”を観てきた。

Marvelに押され、迷走気味のDC Comics。これまで描いてきたJustice Leagueとは違う世界線で仕切り直し。結果、これまでの映画化作品の中で、最も人間味溢れるSupermanと、最も冷酷にして凶悪なLex Luthorの登場となった。これまでのJustice Leagueメンバーとは別のMetahumansが登場し、優等生 Supermanとは違う魅力を見せるのも面白い。大活躍する犬ちゃん=Krypto the Superdogも可愛いし(Supermanは、絶対に猫派ではなく犬派だと思う)、その本当の飼い主の正体も楽しい。その一方で、1978年の映画化作品のJohn Williamsによるテーマ曲を活かした音楽がエモい。さすがJames Gunn、見事なリブート。やはり信頼できる監督だ。

また、Lex LuthorがSupermanを敵視する理由と、それに対し、真っ直ぐなメッセージを伝えるSupermanが、極めて現代的。今の世界情勢に対する断固たる意思表明のようでもある。

もう一つ、James Gunn映画で外せない楽しみが、音楽だ。劇中でClark Kentが口にする”Punk Rockの本質”には、ちょっと胸が熱くなってしまった。そして、エンディングでは The Mighty Crabjoys(DC Comicsの世界に存在する架空のバンド)名義のいかにもそれっぽい音楽が流れ、ニヤニヤしていたら、その次に流れるのが、Teddybearsの” Punkrocker (feat. Iggy Pop)”! James Gunnのこのテイスト、好きだなぁ。

ということで、今度こそ、DC Comicsの逆襲が成功しそうな気がする快作だ。


「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」 @ アーティゾン美術館25.7.12

アーティゾン美術館オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートの展覧会を観に、アーティゾン美術館に行ってきた。

アーティゾン美術館展示されているのは、7名と1組の女性アボリジナル作家による計52点。抽象絵画、ガラス造形、アニメーションなどなど。

アボリジナルの伝統だけでなく、オーストラリアが抱える歴史上の問題、現代の環境問題など、ハードなテーマを持つ作品も多い。その一方で、村のお婆さんが語る話を朴訥なストップモーション・アニメーションで描いた映像作品など、ホッコリするものある。

アーティゾン美術館私は、白人入植者による先住民族の抑圧ぐらいは知っていたが、アボリジナルが暮らしていた地域で、冷戦時代に核実験場となっていた所があった事などは、この展覧会の展示で初めて知った。それ以前に、"アボリジニ"という単語が、差別的な響きや先住民の多様性への配慮から、"アボリジナル"や、"アボリジナル・ピープル"という表現に置き換えられていることすら知らなかった。自分の知識の狭さと偏りを思い知らされる。

そして、何より、アフリカやアジアとは違う、独特のプリミティブな色彩と造形に溢れる空間自体が新鮮な感覚の展覧会だった。


”Maaveeran”25.7.13

新宿ピカデリー 新聞に長期連載されているヒーロー漫画を(自身の名前ではなく、ゴーストライターとして)描いているが、自分自身は気弱な漫画家が、悪徳政治家に立ち向かうというタミル語映画を観てきた。邦題は「マーヴィーラン 伝説の勇者」。”Maaveeran”は、漫画の主人公のヒーローの名前である。

主人公とその家族、隣人達は、それまで住んでいたスラムから、新築の高層集合住宅に強制移住させられる。しかし、その建物は、悪徳政治家らにより建築予算を大幅に中抜きされた欠陥住宅。しかし、気弱な主人公は、正面切って文句を言う事も出来ない。そんな彼に、漫画の主人公、Maaveeranの声が聞こえるようになる。その声に従って、彼は巨悪に挑む!

粗筋をまとめるとカッコ良いのだが、この主人公、物語が進むに連れて強くなるどころか、気弱さが加速していく感じで、イマイチ感情移入できないところが辛い。悪徳政治家の悪辣さや、集合住宅の欠陥ぶりが、非現実的なまでに過剰に描かれているのも、やり過ぎ感に引いてしまう。

あと、映画が始まって割に早い段階で賑やかなダンス・シーンがあり期待が膨らんだのだが、その後は、ミュージカル的な盛り上がりも今ひとつ。ということで、ちょっと欠点の目立つ映画ではある。

が、久しぶりに、粗も多いがお楽しみもたっぷりの、いかにもタミル語映画らしい世界を堪能。

あと、ヒロイン役のAditi Shankarが、”Sivaji”や、”Endhiran(ロボット”、”2.0(ロボット2.0”など、"Super Star" Rajinikanthとのコンビでお馴染み、S. Shankar監督の娘さんというのも、個人的にはちょっと盛り上がってしまった(そのせいか、劇中、Rajniのポスターが映っているシーンがあった)。



涼しいと言っても、確か、一昔前の夏って、これぐらいだったような気もしますね。