IN/OUT (2025.5.25)

ビルボードライブ東京春の矢野顕子強化月間、終了。楽しかった!


in最近のIN

”Mission: Impossible - The Final Reckoning”25.5.22

TOHOシネマズ日比谷Tom Cruiseの人気シリーズ「Mission: Impossible」の最新作を観てきた。2023年の前作「Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One」の続編になる。

見応えのある、これまでのシリーズの集大成的な作品だ。過去作品からの引用映像もたっぷり見せてくれるし、「M:i:III」における謎のアイテム ”rabbit foot”の正体も明かされるし、何よりも、第1作(1996年だから、ほぼ30年前)で、かわいそうな目に遭ったCIA職員の再登場もある。そして、Tomは走る、走る。鍛え上げた身体を見せまくる。とにかく、長年、このシリーズを観てきたファン達が観たい物を、全て、出し惜しみしない気合いを感じる。

2時間49分の長尺映画だが、ストーリー自体は、割とシンプル。設定は、かなり適当。今回の敵はAIなのだが、まさか、物理的かつ目に見える形で捕らえるとは…。ただ、どの場面も、Tomの身体を張ったアクションがてんこ盛り。ギリギリで何とかなるとは分かっていても、手に汗握るシーンの連続だ。その、”何とかなる” 肝心のところを、敢えて描写しない演出が多いのだが、さすがに全部見せちゃうと非現実的になりすぎるという判断かもしれない。

Tom Cruiseと、Ving Rhames & Simon Peggのチームワークが良いのはこれまで通りだが、前作に登場した女スリと女殺し屋、そして、今作で新たにチームに巻き込まれてしまった人達を加えた、即席ながら一体感のあるチームが、良い味を出している。本来はヒロインのポジションに該当する女スリ=Hayley Atwellよりも、女殺し屋=Pom Klementieffの方が、萌え要素高し(それもそのはず。彼女は、「Guardians of the Galaxy」シリーズのMantis役!)。

今作では、ついに、全人類を救う運命を託されたTom Cruise。さすがに、誇大妄想的とも思えるが、プロデューサー兼主役としてシリーズを牽引してきたTom Cruiseが、Tom Cruiseをカッコ良く見せることに全精力を傾けたシリーズの集大成。彼の超人的な頑張りを知っていると、許せてしまう。

なお、この映画に出てくる米国大統領は、黒人女性(演じるのは、Angela Bassett)。ギリギリで賢明な決断を下してくれるのだが、これが現実のTrump大統領(と、その取り巻き達)だったら、Tomの活躍も空しく、世界は滅びていたかも……


”MICHEL CAMILO TRIO featuring DAFNIS PRIETO & RICKY RODRIGUEZ" @ ブルーノート東京25.5.23

ブルーノート東京先週のオーケストラとの共演に続き、ジャズ・ピアニスト Michel Camiloの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。今回はトリオ演奏。プエルトリコ出身のベーシスト Ricky Rodriguez、キューバ出身のドラマー Dafnis Prietoを従えてのカリビアン・トリオは、昨年の公演と同じ。

私が参戦したのは、4日間公演の最終日、2nd Show。ドラムス寄りの席だったので、Camiloの手元が見えないのは残念。

最後のステージだからか、いつも以上にご陽気に登場したMichel Camilo。1曲目から、超高速で圧倒的な音数を繰り出す。鍵盤を力強く叩きつけるような奏法は、一歩間違えれば乱暴な音になりそうなのに、1音1音の輪郭がくっきりとした濁りの無さが素晴らしい。そして、昨年も度肝を抜かれたDafnis Prietoのドラムス。やはり凄い。とにかく手数が多く、アイディアに溢れた様々なパターンのリズムを歯切れ良く繰り出す。しかも、演奏中の表情は涼しげ。楽しそうに掛け合いを繰り広げるピアノとドラムスを、しっかりと支えるベースも、見事な仕事ぶりだ。アップテンポの曲と、比較的スローな曲を交互に演奏していくが、どの曲も素晴らしい。先週は、オーケストラという枠の中で輝きを放っていたMichel Camilo。もちろん、それも刺激的だったが、やはり今回の、3人のアイコンタクトから、その場で瞬間的に生み出される熱量とスピード感は、格別だ。

特に、本編最後の「On Fire」は、今回もとんでもないことになっていた。圧倒的なスピード感で展開するトリオ演奏は、どこまでも高みに駆け上がっていく。会場も大興奮のスタンディング・オヴェイションである。

アンコールは、少しギアを下げた曲で締めて、全編終了。と書きつつ、実のところ、昨年のライヴの記録と、かなりの部分、同じ文章になってしまった…。メンバーも、ショーの構成も、昨年のトリオ公演と同様なことに、改めて気がついた。しかし、新鮮味が無いというような不満は皆無。むしろ、こんなに凄いライヴ体験を、毎年届けてくれることに、大感謝である。


「酒呑童子ビギンズ」 @ サントリー美術館25.5.25

サントリー美術館平安時代、都で貴族の娘や財宝を次々に略奪していた鬼=酒呑童子が、源頼光とその家来によって退治される有名な物語に関する展覧会を観てきた。

酒呑童子の物語は、絵画や能など、様々な形で現代に伝わっているが、それらの中でも特に重要なのが、サントリー美術館が所蔵する重要文化財、狩野元信筆「酒伝童子絵巻」。1522年に、小田原の北条氏綱の依頼で製作されたものだ。保存状態が相当悪かったということだが、2020年に解体修理が完了。今回、サントリー美術館史上最大規模に広げて展示し、物語の全容を紹介する。という気合いの入った展覧会だ。

当初は、そこまで興味を惹かれていなかったのだが、やのとあがつまのライヴを観る前に時間が空いたので、軽い気持ちで覗いてみた次第(ライヴ会場のビルボードライブ東京は、東京ミッドタウンの4階。サントリー美術館は3階)。

いやはや、驚いた。滅茶苦茶、面白い!これまで、不勉強にして酒呑童子のことをほとんど知らなかったことを恥じ入るばかりだ。まずは、狩野元信筆「酒伝童子絵巻」、全長35mが、ドドーンと大公開されているのだが、非常に分かりやすい説明文が付いていて、たっぷりと楽しめる。この物語、こんなにもエンターテインメント要素に溢れていたのか! 魅力的な悪役(酒呑童子が最初に登場する姿は、長身のイケメン!)、猟奇的な展開にヴァイオレンス描写、超自然的な力を味方に付けた主人公達。このまま、ハリウッド映画化しても、十分に通用すると思えるほどだ。

さらに、次のコーナーでは、酒呑童子の”エピソード・ゼロ"が紹介されている。先ほどの「酒伝童子絵巻」の前半に、酒呑童子の出生の秘密を描き加えた”スピン・オフ"絵巻が次々と作られたらしい。その一つ、1786年頃に描かれ、現在はライプツィヒ・グラッシー民族博物館(GRASSI Museum für Völkerkunde zu Leipzig)が所蔵する住吉廣行筆「酒呑童子絵巻」の一部が、今回は里帰りして展示されている。付け加えられた前半というのが、スサノオノミコトに退治されたヤマタノオロチの亡魂が、伊吹山に飛んで伊吹明神となり、その息子として生まれたのが酒呑童子という物語。これがまた、中々にエンターテインメント性に富んだ物語なのだ。

最後に、これらの、ヴァイオレンス描写もたっぷりの絵巻物が、当時の姫君の嫁入り道具となっていた歴史的背景への考察が展示されていて、これまた興味深い。

ということで、ライヴ前に駆け足での鑑賞になってしまったことを後悔する、もっと時間をかけて観るべき非常に面白い展覧会だった。



夏の矢野顕子祭りも、既に発表されている分のチケットは確保済み。冬の上原ひろみのツアーの抽選にも当たり、色々上手く行っていると思っていた矢先、テレビが壊れた…。観たい番組は、NHK+やTVerで視聴することが多いとは言え、時計代わりにつけっぱなしにしていることが多いので、これは痛い…。好事魔多しとは、このことか…