鉄を用いた彫刻を手掛ける青木野枝と、ガラス作品を手掛ける三嶋りつ惠。二人の現代美術家が、旧朝香宮邸の各所に作品を配置し、アール・デコの装飾空間を照らし出すという企画展を観に、東京都庭園美術館に行ってきた。
入り口を入ってすぐの空間にずらっと並ぶ三嶋りつ惠のガラス作品「光の海」。いきなりのインパクト!
旧朝香宮邸の名物の一つ、香水塔の近くには、三嶋りつ惠の「宇宙の雫」
大客室に入ると、青木野枝の「ふりそそぐもの/朝香宮邸 - I」。天井のシャンデリアに呼応するような形状。ここまで大きなオブジェがこの空間にあるのは、中々の衝撃だ。
(スマホのカメラでは、この部屋のホワイトバランスは難しい…)
さらに、大食堂にも青木野枝の「ふりそそぐもの/朝香宮邸 - II」。こちらは、閉じた球体。部屋と共鳴しているようだ。
階段を上がったところには、2万2千個のガラスビーズを吊した、三嶋りつ惠の「光の場」。
そして、2階の若宮寝室、青木野枝の「ふりそそぐもの/朝香宮邸 - III」が部屋全体を占める。窓から入る光も作品の一部のようだ。
青木野枝の「ふりそそぐもの/朝香宮邸 - V」は、石鹸を積み上げた作品。
ベランダには、三嶋りつ惠の「SPIN」。
妃殿下居間には、三嶋りつ惠の「RULIO」と「MILLELUCI」。
続く妃殿下寝室と殿下寝室では、それぞれ、三嶋りつ惠と青木野枝の制作を巡る資料が展示され、インタビュー映像が流されている。見応え有るヴィデオで、お二人ともカッコ良し。
3階のウインターガーデンには、お二人の作品が同居している。
青木野枝の「ふりそそぐもの/朝香宮邸 - VIII」と
三嶋りつ惠の「HELIOS」
本館だけでも見応え十分だが、新館のギャラリー1を全て使った青木野枝の「ふりそそぐもの ー 赤」も圧巻。
これら立体作品の他に、同じ「光の記憶」というタイトルで、お二人が撮影した写真を編集した映像が流れる展示も、それぞれの個性が表れていて興味深い。
拠点を構えるヴェネチアの陽光をガラスに閉じ込めたような三嶋りつ惠の作品と、熱した鉄が放つ赤黒い光を奥底に封じ込めたような青木野枝の彫刻。全く異なる個性のお二人の作品群が、旧朝香宮邸の空間を介して響き合う。滅茶苦茶面白い展覧会だ。なお、うっかり見逃してしまいそうな所まで、館内一杯に作品が展示されているので、展覧会マップが必携である。
The Policeのギタリスト、Andy Summersの公演を観に、川崎のクラブチッタに行ってきた。
今回の公演は、フォトグラファーとしても活動するAndy Summersが撮影してきた写真を投影しながら、ギターを演奏し、トークするという企画。
The Policeのライヴ・パフォーマンスは、一度も観たことは無いのだが、
Stingの公演は
・2005年@Singapore Indoor Stadium
・2017年@日本武道館
・2023年@有明アリーナ
に参戦。
Stewart Copelandは
・2018年のGIZMODROMのライヴ@オーチャードホール
で観戦。
今回で、ついに、The Policeのメンバー全員のライヴ・パフォーマンスを観ることが出来たことになる。
ステージの左にギター演奏用のスペース。真ん中は画像投影用に空けてあって、右にソファが置いてある。客入れの音楽は、The Policeの他に、King Crimson(”Red”や”Fracture”)が流れている。私の席は、左端の方だったのだが、結果的に、彼のプレイを観るのに良い場所だった。
17時開演。事前情報通り、写真が投影され、Andyが淡々とギターを弾く。写真は、風景写真から街角のスナップ、ポートレート等々、カメラマンとしての腕は確かだと思うが、何か特別な仕掛けがあるという訳では無い。ギター演奏は、自作の他、Thelonious Monkの作品や、映画 ”Orfeu Negro”の主題曲など自身のルーツの音楽、そして、もちろん、The Policeの”Tea in the Sahara”、”Roxanne”、”Spirits in the Material World”など。テクニックは相変わらず素晴らしいし、この音色は、まさにAndy Summersならではだ。そして、合間に緩いトーク。どれぐらい緩いかと言うと、”Tea in the Sahara”の演奏後、サハラ砂漠に行った時の話をして、「どんな所かと言えば、”Sandy”(← ここ、笑うところ)」。これが英国ジョークか……
本編ラストはThe Police / 40 FINGERS feat. Andy Summersの”Bring on the Night"。アンコールで”Message in a Bottle”。全体で1時間半ほどで、あっさり終了。
The Policeのナンバーは、やはり、盛り上がるのだが、よく考えたら、今回演奏されたのは、全てStingの作曲(Andy Summersは、ソング・ライティングの面での貢献度は低い)。Andyが奏でているのは、Stingが歌うメロディー・ラインで、オリジナルのギター・パートでは無い。これで、有り難みがあるのかと言うと、客観的には微妙だろう。それでも、彼のギターの音色とニュアンスは、The Policeの重要なパーツであることを再認識し、それが生で聴けるだけで往年のファンは盛り上がってしまうのだ。
と言うことで、1942年生まれ、82歳のミュージシャンを囲む、ほのぼのとしたファン・ミーティングという雰囲気もあったが、中々、好印象のイベントだった。