IN/OUT (2025.11.23)

先々週に書いた、国立新美術館でのBVLGARI展東京都庭園美術館でのVan Cleef & Arpels展。どちらも、床にフカフカの絨毯が敷き詰められていたのを、雰囲気作りのためだと思っていたのですが、実は、防犯対策のために張り巡らされた振動感知器の電源や配線を隠すため、会場全体に仮設の床を設置して特注のカーペットを敷き詰めたのだという話を知って(日本経済新聞 11/17のカバーストーリー)、自らの思慮の浅さを思い知る今日この頃です。


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「花の詩女 ゴティックメード」25.11.20

TOHOシネマズ日比谷リクエストを元に上映イベントを開催するというサービス「ドリパス」の企画で、2012年公開のアニメ映画が上映されるのを観てきた。

この作品は、原作・監督・脚本・絵コンテ・レイアウト・原画・デザインを全て手掛けた永野護(彼がメイン・デザイナーを務めた「重戦機エルガイム」は大好きなTVアニメだ)の意向で、配信もソフト販売もされておらず、今では幻の作品となっている。私は、名前だけは知っていたのだが、昨年、横須賀美術館の展覧会「日本の巨大ロボット群像」で大きく取り上げられていたのを観て、是非、一度は観たいと思っていたのだ。

タイトルの読みは「はなのうため」。植民惑星カーマインで民を導く女性預言者。そして「ゴティックメード」は人型装甲戦闘兵器のこと。新たに詩女に指名された少女と、彼女の護衛を命じられた大国の皇子の二人が主人公。永野護のライフワークとも言える「ファイブスター物語」と共通の世界観を有している。

70分間のコンパクトな物語は、争いを否定する少女と、戦うことを宿命付けられた少年の、対立と、そこからの相互理解を描くものだが、展開はかなり淡泊だ。大河ドラマ的なストーリーも秘められているのだが、それは字幕であっさり処理される…。タイトルから、戦闘ロボット・アニメを予想すると、全く裏切られる。

とにかく全編、永野護の美意識とこだわりを愛でる作品だ。登場人物達の、12頭身ぐらいの超細身のスタイル。極めて複雑な関節機構と華奢過ぎるウェストを持つゴティックメードのデザイン。その「女性の幽霊が泣き叫ぶような音」と形容される起動音(IHIジェットサービスが協力)。遺伝子操作されて生まれた戦闘人種などのSF設定の数々。そして、ほんの数分間しかない戦闘シーンに詰め込まれた情報量と圧倒的スピード感。期待以上の良作だ。

70分間で収めるには勿体無いと思う反面、これ以上の長尺にして密度が薄まると、ストーリーの弱さが目立ってしまうかもしれない。いずれにしても、幻と言われている作品を観る機会があって、幸甚。


”The Fall”25.11.22

ヒューマントラストシネマ有楽町Tarsem Singh監督が、2006年に私財をつぎ込んで製作したカルト映画の4Kデジタルリマスター上映を観てきた。邦題は「落下の王国」。

監督のデビュー作「The Cell」は、彼の現代美術への偏愛が溢れた怪作だった。その2作目も、評判は聞いていたのだが、観る機会を逸していた。しかし、衣装を担当した石岡瑛子の回顧展での展示がとても印象的で、いつか観たいと思っていたのだ。

無声映画の時代のロサンゼルスの病院に、撮影中の事故による怪我で入院しているスタントマンの男性と、オレンジ農園での作業中に木から落ちて腕を骨折したルーマニア移民の少女。失恋で自暴自棄になっていたスタントマンは、ある思惑のもと、彼女に勇者達が登場する作り話を語り始める。

映画は、この作り話のパートと、現実の病院のパートを行き交い、時には交差しながら進んでいく。観念的な小難しい映画に陥りかねない設定だが、意外に分かりやすいストーリーだ。

そして、見どころはやはり、ストーリーではなく、その圧巻の映像美だ。選び抜かれた風光明媚なロケ地を舞台に、冴え渡る構図と色彩。そこに躍動する石岡瑛子による衣装が、俳優以上に圧倒的存在感を放つ。眼福。

そして、ラストで明らかになるのは、Tarsem Singh監督の溢れんばかりの映画愛。予想以上に素晴らしい作品で、4Kデジタルリマスターに大感謝である。


「清水ミチコのHAPPY PARADISE」 @ 浦安市文化会館25.11.22

浦安市文化会館今年も、清水ミチコのツアーが、いよいよ開始。その初日公演を観に、浦安市文化会館に行ってきた。

浦安市文化会館来年正月の武道館公演にゲスト出演が決定しているMISIAから花が届いていた。

まずは、偽・小池百合子東京都知事と、偽・高市早苗内閣総理大臣の対談という豪華なヴィデオで開演。そこから、新ネタ多めの爆笑ステージとなる。

特に感心したのが、アラビアの音階による「アンパンマンのマーチ」、日本の伝統音階による「トルコ行進曲」、琉球音階による「うっせぇわ」という、音楽ネタ。深い音楽知識と、高い演奏&歌唱技量があってこそ成立する、清水ミチコの面目躍如たる傑作ネタだ。

恒例、矢野顕子の物真似は「相合傘」。途中の語りも含め、超絶ハイクオリティ!

後半には、高田漣(アコースティック・ギター)と実弟 ICHIRO氏(ピアノ & ベース)が登場。この3人の演奏パートは、本当にレベルが高い音楽パフォーマンスだ。

そして、怒濤の終盤。昭和歌謡有り、作曲法の新ネタ有り、ひさびさのアラビア語歌謡有り(2013年2016年に観て、ドハマりしたネタ。再見できて、至福!)。タップリ楽しませていただいた。

まだ初日ということで、会場のリアクションを探りながらのネタおろしもあって、今後、どのように熟成されていくのか楽しみだ。



そんなオーバーな、と思えるような防犯対策も、ルーブル美術館で、あまりにも漫画チックな事件が起きてしまったので、当然の準備だと納得せざるを得ないですな。