2本とも、行くことが出来ました。
誤りのご指摘や追加情報等あれば、送っていただけると助かります。
*8月14日、15日の八ヶ岳高原音楽堂公演は、(「リサイタル」名義では無いため)別ページに記載しています。
年末恒例の神奈川公演。長年(23回!)続いた鎌倉芸術館ではなく、今年は神奈川県立音楽堂。15年前の 矢野顕子2010「ここが音楽堂!」弾き語りツアー以来だ。
このホールは、1954年に開館。ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールをモデルに、前川國男が設計。開館当時は「東洋一の響き」と言われていたそうで、2021年に神奈川県指定重要文化財(建造物)に指定されている。キャパ 1,106人。座席の狭さに時代を感じる。
ピアノはSteinway。客入れの音楽は、今年のさとがえるの休憩中に流れていたのと同じ、John Leventhalの曲(”That's All I Know About Arkansas”が聞き取れたので、アルバム”Rumble Strip”かな)。
開演。1曲目「BAKABON」。ホールの素直な響きに、15年ぶりに驚く。そして、2曲目「ひとりぼっちはやめた」。ピアノの音の端正さも良いが、とにかく、ヴォーカルの響きが美しいことに改めて感嘆。ということで、ここからも、ホールの素直で美しい音響と矢野さんの好調な歌唱&ピアノが見事な相乗効果を発揮するパフォーマンスが続く。
一方、ピアノをつま弾きながらのMCもたっぷり。今年は、ソロ公演の本数が少ないので、こういう自由でリラックスした雰囲気を、矢野さんも楽しんでいるのだろうか。「仕事論」から、「『矢野顕子、小田和正を歌う』というアルバムを作りたいなー」、そして「朝ドラ」と、話が次々と脱線していくのが、聞いているこちらも楽しい。そうしたMCを挟みながらの、久々の「たいようのおなら」や、「潮騒のメモリー」。名演奏だ。そして、ホールの音響の良さが最大限の効果を発揮していたと思う「PRAYER」の美しさに痺れる。
終盤2曲は、ここで収録されたアルバム「音楽堂」のラスト2曲(録音した当時と、ピアノは代替わりしているそうだ)。特に「いい日旅立ち」の弾けっぷりが見事。そして、「ひとつだけ」で本編終了。
アンコールは、炭水化物セット。「ごはん」から、シームレスに「ラーメン」につなげ、最後でまた「ごはん」に戻る、血糖値を上げるべく工夫されたアレンジ。これで全編終了。
正直、今年の年末は鎌倉芸術館ではないと知った時には、少々、がっかりしたのだが、それは、全くの杞憂だった。ピアノもヴォーカルも本当に美しく響く音響の素晴らしさ。矢野さんのリラックスした雰囲気と、クオリティの高いパフォーマンス、そして、ちょっとマニアックな選曲。鎌倉芸術館ならではの良さと思っていたものが、全て、超高いレベルで、神奈川県立音楽堂にも詰まっていた。大満足の年末である。
東京のビジネス街の中枢「大手町」でエンタテインメントを届けるというコンセプトで、日本経済新聞社が主催する「大手町座シリーズ」。5年連続で矢野さんのリサイタル開催である。会場の日経ホールは、大手町・日経ビルの3〜5階に位置し、キャパは 610席。客席に背面収納型の机と手元ライトが装備されていて、講演会やシンポジウムにも対応。一方で、クラシック系のコンサートにも対応できる音響を備えているという、日本経済新聞社らしいホールである。
ピアノはSteinway。客入れの音楽は、John Leventhalの曲(アルバム”Rumble Strip”と思われる)。私の席は、前後左右、ほぼ中央。客席の傾斜が良い案配で、視界良好かつ、音のバランスも良いポジションだ。
「SUPER FOLK SONG」で開演。通常よりも、かなり、ゆったりしたテンポの演奏だ。歌唱の方は、歌詞をしっかり届けようという意思が感じられる。その傾向は、2曲目「Home Sweet Home」でも同じ。コアなファン以外も多く訪れるであろう日経ホールを意識した、丁寧なパフォーマンスという印象だ。
しかし、5年連続となると、もはや、矢野さんのホームグラウンド。どんどん、自由度が増してくる。特に、(最初の2曲も嬉しかったが)ここからの選曲が渋い。”急にやりたくなった”ということでSMAPのカヴァー「しようよ」。作詞の石川セリさんのことも話されてから「昨日はもう」。演奏後に歌詞の背景説明付きの「Nothing In Tow」。安井かずみさん・加藤和彦さんコンビの「ニューヨーク・コンフィデンシャル」。今年のさとがえるで演奏されず残念に思っていた「わたしのバス(Version 2)」。演奏される機会が少ないものも多いが、もろに、私の偏愛する曲ばかりだ。
「生きものたちへ」〜「ごはんができたよ」で、安定の鉄板曲モードで終盤か、と思ったのだが、次の曲、ピアノをポロポロつま弾いている感じから、耳馴染みのあるフレーズが浮かび上がってくる。ピアノ・ソロでの「Rydeen」! 出だしのかなり崩した演奏から、グイグイ盛り上がっていく。ブルーノート東京では、ヒロ・イイダ氏が仕込んでいたトラックのあたりも、1人力で再現。超絶カッコ良いピアノ・アレンジだ。いやはや、凄いものを聴くことが出来た。そして、本編ラストは「ひとつだけ」
アンコール。”みんな、知っている曲だから一緒に歌って”と呼びかけ(岡崎体育氏が、ライヴでの新曲初披露なのに「皆も一緒に歌って!」と呼びかけることを、ご自分もやってみたいそうだ)、演奏し始めたのは、矢野版「いい日旅立ち」…。そりゃムリだ…。もちろん、矢野さんも、皆が歌うことなど想定せずの、弾けた熱演。そして、いつもより低音を強調した「ラーメンたべたい」で全編終了。とても良いライヴだった!
これで、2025年の(公式の)ライヴは終了。今年は、ソロ公演が少ないなと思っていたのだが、最後に音楽堂と日経ホール、大充実のパフォーマンスが続き、不満は一掃された。年末の風物詩として、バンド公演のさとがえると共に定着してきた神奈川と日経ホールでの弾き語り公演。リラックスした雰囲気と自由度の高さが共通しつつ、お馴染みさんへの信頼感を感じる神奈川、一見さんも引き込もうという意思を感じる日経ホール、というのが私が受ける印象だ。どちらも素晴らしい。今年もありがとうございました!(この後、クローズドなイヴェントは予定されているが、私は参加出来ない。が、これで悔い無し)。