年末は、関西で過ごしました。 大晦日の夜は、宿泊していたホテル内の和食屋で、蕎麦の無料サービス付き。サービス開始時刻の19時30分になると、ちょっと浮き浮きした表情でエレベーターに乗り合わせる宿泊客達。そこに漂う緩い連帯感に、日本の年末を強く感じました。こういうの、悪くないですね。
19世紀末に活躍したスイスの画家Félix Vallotton(1865-1925)の回顧展を観に、三菱一号館美術館に行ってきた。彼は、当時のパリで活動していた前衛芸術家集団 ナビ派に参加していたが、絵画だけで無く、木版画でも名声を博していた。三菱一号館美術館は、世界有数のVallotton版画コレクションを誇っているとのことで、今回、約180点のコレクションを一挙初公開という次第。
モノクロームの木版画が展示作品の大半を占めるので、ぱっと見は地味である。ただ、私が持っていた木版画に対する先入観とは、かなり違う作風だ。黒いところは大胆に黒のまま。作品によっては画面の2/3以上が真っ黒という物もある。描かれている題材の中には「自殺」「処刑」「暗殺」と、物騒な物も多い。そして、どの作品にも、不穏な空気と捻くれたユーモアが漂う。雑誌の挿絵なども多く手掛けていたようだが、現代的なグラフィック・アートのセンスも感じられる。
音声ガイドは津田健次郎。かなり凝った構成になっているが、個人的には、もっと直球の解説が好みだ。また、三菱一号館美術館の館内のそこかしこに、動画が投影される演出も仕組まれている。ちょっと欲張りすぎな気もするが、展覧会の雰囲気には上手く調和していると思う。展示されている作品も展示の構成も、中々にハイ・センスな展覧会だった。