IN/OUT (2022.10.23)

自宅に積んだままになっていた書籍を、まとめてブックオフに送りました。目の老化で、最近は電子書籍でしか読書しなくなっているのですが、本好きな人のあるあるで、紙の本を処分する気には中々ならなかったのです。しかし、この夏、実家に置きっぱなしにしていた諸々を処分したことをきっかけに、自宅も多少は断捨離。


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”CASIOPEA-P4 ~Special First Live~ P4” @ ブルーノート東京22.10.21

ブルーノート東京日本のフュージョン界のトップ・バンド、CASIOPEA。結成45周年を迎え、第4期の活動を開始。その初ライブを観に、ブルーノート東京に行ってきた。

CASIOPEAは、1977年に、野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰の4人で結成。1990年のメンバー・チェンジ後が第2期。2006年に活動休止し、2012年に再始動してからが第3期の「CASIOPEA 3rd」。そして、2022年、ドラムスに今井義頼が正式メンバーとして加入し(3rdの時は、サポート・メンバー扱いの神保彰)、第4期「CASIOPEA-P4」となった。

ということで、ギターは不動の野呂一生。ベースは第2期から継続して鳴瀬喜博。キーボードがCASIOPEA 3rdで加入した大高清美。そして、ドラムスが今井義頼。最年長の鳴瀬が72歳。最年少の今井が34歳という布陣である。

登場した4人。やはり、今井義頼が圧倒的に若々しいルックスだ。演奏は、1981年のアルバム「Eyes of the Mind」の収録曲「Take Me」からスタート。流石の王道フュージョン。長老二人の堂々たるプレイ。大高清美(加入して10年、課長に昇格)の包み込むようなキーボード。それを、新入社員 今井義頼のタイトなドラムスが支える。

さらに「Autobahn」、「Sentimental Things」、「The Night In Blue」と、見事な演奏が続く。ここまでの今井義頼のドラムスは、気持ち良く演奏にハマっていて、器用なドラマーという印象だ。演奏中の笑顔も若々しい。

ここから、CASIOPEA-P4としてのデビュー・アルバム「NEW TOPICS」からの曲。野呂一生作曲の「Today for Tomorrow」。大高清美作曲の「Vivaciously」。鳴瀬喜博作曲の「NoOne...EveryOne...」。今井義頼作曲の「Daily Bread」。そして、野呂一生作曲の「Dreamer's Dream 」と、それぞれ作曲者のコメント付きで演奏される。このパートになると、今井義頼が、その超絶パワフルなドラムス・プレイを全開に!凄いテクニックとパワーだ。それが、ベテラン陣の演奏と化学反応を起こして、新アルバムのどの曲も、レベル高し。

終盤は、初期の代表曲「Domino Line」、そして、超代表曲「ASAYAKE」。いやはや、本当に素晴らしい曲だよなぁ。会場、大盛り上がりである。

アンコールでは、会場から「今井コール」が。それに煽られるように、「Days of Future」でさらに弾けたドラムスを炸裂させて、大団円。予想を遥かに超える第4期。これからも楽しみだ。


”RRR”22.10.22

ムビチケカード我が魂の名画、「Baahubali: The Beginning / バーフバリ 伝説誕生 完全版」・「Baahubali 2: The Conclusion / バーフバリ 王の凱旋 完全版」のS.S. Rajamouli監督の新作を観てきた。テグル語映画。タイトルは"Rise Roar Revolt"の略である。

舞台は、1920年、英国植民地時代のインド。英国総督に攫われた村の娘を奪還するためにデリーにやってきた男と、その奪還作戦の阻止を命じられたインド人でありながら英国警察官となっている男の二人が主人公(二人とも、「漢」と表記したくなるタイプ)。互いの正体を知らないまま知り合い、友情を育むようになる二人だが…、というストーリー。

人体の構造も物理法則も無視し、カッコ良さだけを追求した画面がとにかく熱い。これ以上のアクション・シーンは有り得ないと思っていた「バーフバリ」に匹敵する映像の連打に興奮しっぱなしである。二人の男を、それぞれ炎と水に例えたアクション・シーン、監督お得意の弓矢を使ったアクロバティックなバトル・シーン、さらに、娘を奪還するために総督の邸宅に乗り込む場面では、「バーフバリ」の『椰子の木をバネにビヨヨーン(観た人には分かる)』にも負けない、驚愕の作戦が決行される。普通の映画でこんなシーンが出てきたら、馬鹿馬鹿しくなるかもしれないが、異常なまでの熱量で押し切るこの作品でなら、説得力しかない。3時間7分の上映時間の真ん中あたりで、インド映画でお馴染みの"Interval"の表示が出るのだが(インドと違い、日本では休憩は入らず、そのまま上映が続く)、その時点で既にハリウッドのアクション映画を2本観たほどの満腹感だ。そして、全編見終わった頃には、5本連続で観たほどの、大充実の疲労感。

もちろん、S.S. Rajamouli監督、ミュージカル・シーンもバッチリである。劇中の、主人公二人による男臭いダンス・バトルの熱さも良いし、エンド・クレジットでのヒロインも交えたダンスも楽しい。残念なのは、アクションがひたすら男達の肉弾戦で、「バーフバリ」のような女性戦士の活躍が無いことぐらいか。インド娯楽大作として、多くの人に超お薦めできる作品だ(個人的には"SUPER ☆ STAR" Rajinikanthのような、ユルさとコメディ要素も欲しい所だが…)。



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”After Yang”22.10.23

近未来を舞台にしたSF映画を観てきた。

監督は、Kogonada。韓国出身で、小津安二郎を敬愛。その名前は、多くの小津作品の脚本を手がけた野田高梧(のだこうご)から取ったという。さらに、テーマ曲は坂本龍一。渋いメンツだが、製作スタジオは「Midsommar」など癖の強いホラー系映画でお馴染み A24。製作スタジオ名で客を呼べる、希有な存在だ。果たして、どんな出来なのか?

Colin Farrell演じる主人公は、茶葉店を経営する物静かな男。妻は黒人。中国系の養女と、中国文化に詳しいだろうという事で購入し、すっかり家族の一員となっているアンドロイド(劇中ではロボットやアンドロイドではなく「テクノ」と呼ばれている)の4人家族で仲良く暮らしている。ある日、アンドロイドのYangが故障し動かなくなる。彼に懐いていた娘の懇願を受け、主人公は修理方法を探し回るのだが…、というお話。

極めて静謐な映画だ。様々な設定が、あるがままに提示され、声高に説明されることが一切無い。白人・黒人・中華系・アンドロイド(見た目はアジア系)というダイバーシティを絵に描いたような主人公の家族構成。アンドロイドが日常生活に溶け込んでいる様子。クローン技術で産まれた人が当たり前にいる状況。さらには、主人公が乗る自動運転らしき乗用車。これらの設定について、わざわざ言及することは無いのだ。

しかし、描かれていることは深い。機械が保持する記録と人間が抱える記憶の違い。AIが抱く人間への感情的な絆。中古の(refurbishされた)アンドロイドが流通する未来が抱える問題、などなど。これは、高度な思索系SFだ。

極めて良質な作品だとは思う。ただ、あまりにも静謐過ぎる。主人公もその妻も、終始、小声で最低限の事しか喋らない。ちょっと凝りすぎているというか、ぶっちゃけ、辛気くさいというか。正直、睡魔との戦いが大変だった。前日に「RRR」を観たので、その落差に身体が付いていかなかったのだろう。違う体調の時に観れば、印象は違っていたかもしれない。



買い取り価格は、300冊ちょっとで 20,374円。村上春樹の作品などベストセラー系は、状態の良いハードカバーでも、ほとんど値がつかず。比較的高値がついたトップ3は、ジョン・グレイの評論「わらの犬 地球に君臨する人間」、エリック・マコーマックの奇想ミステリ「ミステリウム」、そして「ビル・ブルーフォード自伝 イエスとキング・クリムゾンを叩いた男」。ニッチな需要があるということですかね。