IN/OUT (2022.12.25) |
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ついに、2022年も最終週に突入。 最近のIN”SAVE LIVE MUSIC FINAL" 上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット @ ブルーノート東京 (22.12.20)新型コロナウイルス感染拡大のため、公演中止・海外アーティストの来日中止が続き、苦境に立たされていたブルーノート東京を救おうと、「空いた日は、私が全部埋めます!」と侠気を出した上原ひろみが立ち上げた企画「SAVE LIVE MUSIC」。2020年8月の第一弾は、観客数を40%に抑え、食事の提供は無し(その代わり、テイクアウトのディナーボックスが用意された)。それ以来、度々変わる規制内容に驚くべき柔軟さで対応しながら、4シリーズ、100回以上の公演を重ねてきて、ついに最終シリーズである。 ブルーノート東京だけでなく、ライヴ業界全体の救済に多大な貢献をしたこのプロジェクトのファイナルとして、現在、ホール・ツアーが開催されている。先週は、東京国際フォーラムでの公演を観てきたが、ホールだけでなく、本拠地 ブルーノート東京でも3日間の特別公演が開催された。その初日は、2020年年末から翌年始にかけて開催された"SAVE LIVE MUSIC RETURNS"で初披露された「上原ひろみ ザ・ピアノクインテット」の凱旋公演だ。 この企画が始まった当初は、ライヴに出かけることに躊躇する人も多かったようで、比較的、楽に良い席を押さえることが出来たのだが、今回のチケット争奪戦は熾烈。残念ながらアリーナ席は取れなかったが(取れたのは右側のサイドエリア。巨漢チェロ奏者の影になって2ndヴァイオリンとビオラ奏者が全く見えないポジションだった)、やはり、配信で観るよりは現場の空気を共有したいのだ。 SAVE LIVE MUSICのお楽しみの一つ、特別メニュー。今回は、ひろみ嬢と言えば "YES! RAMEN!!"「感謝の一杯」。そして、自作の曲名にもしたワイン Ribera Del Duero & おつまみのセット「バルめぐり」。アーティスト・カクテルは、彼女が「ダウンタウンナポレオン」だと言って海外でも勧めまくっているという麦焼酎 いいちこをベースにした「南青山のナポレオン」。私は、バルめぐりをチョイス。チーズとチョリソーとピンチョスの盛り合わせにテンプラニーリョの赤ワイン。美味しゅうございました。 演奏は、驚いたことに、先日のホール・コンサートの第二部と同じ構成である(5,012席の東京国際フォーラム ホールAに対し、キャパは20分の1ぐらいだと思うが)。まず、西江辰郎(1st ヴァイオリン)が一人で登場し、「Sliver Lining Suite」組曲の1曲目「Isolation」を奏で始める。続いて、上原ひろみが登場し、さらに、向井航(チェロ)、ビルマン聡平(2nd ヴァイオリン)、中恵菜(ヴィオラ)と、一人ずつ登場しては音を重ねていく趣向。このオープニング、本当にカッコ良いし、特に今回は、その響きの豊かさにシビれる。やはり、室内楽とも言えるピアノ+弦楽四重奏だと、巨大ホールよりもこれぐらいのハコの方がしっくり来る。そして、そのまま「Sliver Lining Suite」組曲「Isolation ~ The Unknown ~ Drifters ~ Fortitude ~」をしっかり演奏。相変わらず自由にアドリブを繰り出すひろみ嬢だが、キメるところはバッチリ弦楽四重奏組と息が合う。お互いの信頼感が凄いと思う。終盤の、手拍子 → 西江辰郎のソロ → ひろみ嬢のソロと畳みかけてくる昂揚感が堪らん! 続いて、「Jumpstart」。今回も、クリスマスっぽいフレーズを入れたりしつつ、ピアノとストリングスの掛け合いが楽しい。タイトル通り、ひろみ嬢はジャンプ!そして、本編最後は「MOVE」。レコーディングされているのは、The Trio Project(Anthony Jackson & Simon Phillips)による演奏だが、このピアノ・クインテット版も、是非、音源化していただきたい素晴らしいアレンジだ。The Trio Projectバージョンよりも、プログレ度が高いとすら思われるカッコ良さ。やはり、上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテットのセカンド・アルバムを出して欲しいなぁ。 アンコール。ガッツポーズをしながら登場した上原ひろみの挨拶に、こちらも感極まって涙目になったところで、「Moonlight & Sunshine(月と太陽)」featuring ビルマン聡平(今回のfeaturingは、あみだくじで選んだそうだ)。そして、「Ribera Del Duero」。ヴァイオリンとヴィオラの3人はステージを離れ、観客席内を歩き回りながら演奏。私も、西江辰郎とビルマン聡平のピチカート奏法を超至近距離で目視。そして、チェロ → ビオラ → 2ndヴァイオリン → 1stヴァイオリンと、皆、たっぷりと工夫を凝らしたソロ。全員凄いが、やはり、西江辰郎の切れ味最高。終わった瞬間、当然のスタンディング・オベーション!! この編成は、やはり、ブルーノート東京で聴くのが最高にして最強だと思った。というか、この人達のパフォーマンスは、観る度に今度こそ最高!と思うのだが、次に観ると、結局、最高が上書きされ続けるのだ。 ”SAVE LIVE MUSIC FINAL" 上原ひろみ ~ソロ~ @ ブルーノート東京 (22.12.21)「SAVE LIVE MUSIC FINAL」のブルーノート東京特別公演の2日目。本日は、ピアノ・ソロである。やはり、アリーナ席争奪には敗退。今回は左側のサイドエリアだ。背中越しに彼女の手の動きがしっかり見える角度。 まずは、大胆にアレンジされた「上を向いて歩こう」からスタート。コロナ禍の時期に取り上げ始めた曲だ。演奏後の、この企画について語るMCは、何度聞いても泣ける。 繊細なタッチで「Haze」。一転して力強い「Spectrum」。そして、とにかく楽しい「Mr. C.C.」と、好きな曲が続いて嬉しい。 一転して、しっとりとした「Blackbird」。本編ラストは、アップテンポな「Dançando No Paraiso」。左手側の弦に細工をして通常とは違う音を出したり、鍵盤に蓋をして叩きながら手拍子を煽ったり、とにかく観客を楽しませることに全力を尽くすような演奏だ。 アンコールで、Tシャツに着替えて登場したひろみ嬢。今回が108公演目だと明かし、108回、調律をしてくれた調律師の米澤裕而氏への感謝を語る。そして、「Green Tea Farm」、途中、たっぷりとアドリブを加えた演奏。ラストは、唱歌「故郷」のフレーズで締める。 彼女の場合、ソロと言っても、左手と右手、それぞれ三人ずつぐらいで弾いているんじゃないかという勢いと表現力。さらに今回は、この企画を完結させる感慨と、支えてくれた人達への感謝が加わっていたのだろう。彼女自身、SNSで語っているように、そもそも、第一弾のSAVE LIVE MUSICは、4種のプログラム(Spectrum、PLACE TO BE、BALLADS、Since 2003)で16日間32公演を駆け抜けるソロ公演だっただけに、ファイナルのソロ公演に懸ける想いは、ひとしおだったようだ。それが観客にもしっかりと伝わるパフォーマンスだったと思う。 なお、翌日には、タップダンサー 熊谷和徳とのデュオ公演が予定されていて、これまた素晴らしい公演になるはずだと思うのだが、この日は矢野顕子の鎌芸があるので不参加。矢野顕子とひろみ嬢がダブるのは辛い。(後日、SNSに溢れた情報によれば、熊谷和徳とのデュオ公演は、アンコールでクインテットの4人も乱入し、尋常じゃ無い盛り上がりだったようだ) 「BLUE NOTE TOKYO presents Hiromi JAPAN TOUR 2022 "SAVE LIVE MUSIC FINAL」@ アクトシティ浜松 (22.12.23)「SAVE LIVE MUSIC FINAL」のホールツアー最終公演参戦のため、浜松へ移動。ここは、ひろみ嬢の地元だけに。毎回、他会場とは一線を画するパフォーマンスになりがちなのだ。特に今回は、彼女が魂を込めたシリーズ企画の最終公演。行かねばの娘である。 二部構成の第一部はソロ。アレンジと技巧をたっぷり凝らした「上を向いて歩こう」でスタート。そして、最初の挨拶は「帰って来たにぃ」の遠州弁。「心の住民票はずっと浜松」と地元愛を語るが、このプロジェクトの説明になると、さすがに締まらないということで標準語。 「Haze」、「Spectrum」と続く流れはブルーノート東京でのソロ公演と同じだが、4曲目に、ご当地ソングとも言える「Green Tea Farm」。(”彼女にしては”、という但し書き付きだが)比較的アッサリ目という気もする。こちらの過剰な期待値と、ブルーノート東京での演奏が熱量高過ぎだったせいだと思うが。 第一部ラストは「Dançando No Paraiso」。左手側の弦に細工をして通常とは違う音を出したり、拳打ち → 肘打ち → 鍵盤に蓋をして叩きながら手拍子を煽るというサービス精神たっぷりの演奏。やはり、この演奏は熱い。 第二部は上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット。これまでと同様、西江辰郎(1st ヴァイオリン)、上原ひろみ、向井航(チェロ)、ビルマン聡平(2nd ヴァイオリン)、中恵菜(ヴィオラ)と、一人ずつ登場しては音を重ねていき「Sliver Lining Suite」組曲「Isolation ~ The Unknown ~ Drifters ~ Fortitude ~」。演奏が進むに連れ、第一部で感じたアッサリ目という印象はなくなり、どんどん、勢いが高まっていく。 「Jumpstart」、「MOVE」。つくづくカッコ良し。全ての曲で、演奏後はスタンディング・オベーションだ。 アンコール。弦楽四重奏組一人一人を、エピソード付きで丁寧に紹介し、感謝を述べるひろみ嬢。特に、西江辰郎に対しては、2015年の新日本フィルハーモニー交響楽団との共演で出会った際、「即興はできますか?」というひろみ嬢からの問いかけに、「出来る/出来ない」ではなく、「やってみたい」と返事をされたことがひろみ嬢に刺さり、今回のクインテット結成に繋がった(この強力メンバーを集めたのは、彼の尽力)というエピソードを披露。「出来る/出来ない」ではなく「やれそうなことを、とにかくやる」というスピリッツ、これこそ、SAVE LIVE MUSICを支えてきたものなのだ。そして、演奏されたのは「Moonlight & Sunshine(月と太陽)」featuring 西江辰郎。 最後の最後は、「Ribera Del Duero」。上原ひろみはサンタ風のマントを、西江辰郎と中恵菜はサンタ帽を、ビルマン聡平はとんがり帽子を、そして、向井航は謎のカチューシャを装着してのクリスマス仕様で、大盛り上がり大会。皆、ノリノリだが、今回も西江辰郎のアイディア溢れるソロが出色。当然のスタンディング・オベーション。最後に、ひろみ嬢の「浜松、サイコー!」のガッツポーズで、ついに、SAVE LIVE MUSIC、本当にファイナルである。 演奏の熱量という点では、ブルーノート東京の方が圧倒的だったと感じたが(今回の曲数を絞ったセットリストは、クラブ公演でこそ盛り上がると思う)、アクトシティ浜松での公演は、地元愛に溢れた、どこかリラックスした感じもあって、ファイナルを締めくくるにふさわしいパフォーマンスだったと思う。上原ひろみは、今後も精力的にライヴ活動を続けるだろうが、上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテットの再集結も是非、実現していただきたいのである。 浜松で一泊し、翌朝は、これで3回目ぐらいの訪問になる浜松市楽器博物館へ。職員の方々の応対も素晴らしく、とても良い博物館だが、例によって、展示品に触りたくなってしまうのが(もちろん厳禁)、困ったところだ。 新幹線ホームのYAMAHA看板に見送られ、雪のため30分遅れとなったこだま号で帰京。全国旅行支援キャンペーンでもらった「ふじのくに 地域クーポン」を使い、普段は手を出せないお値段の鰻弁当付き。良い小旅行になりました。 |