IN/OUT (2022.1.16) |
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オミクロン株の感染力は凄まじいようで、職場にもついに感染者が。テレワーク主体なので、職場内に濃厚接触者がいないのは幸いでしたが、いくら気をつけていても防ぎようが無い=感染する・しないは、単に運次第という気がする、今日この頃です。 最近のIN"John Carpenter Retrospective - Escape from New York" (22.1.10)”John Carpenter Retrospective”と銘打ち、Carpenter監督の80年代の3作品、"The Fog(1980年)"、”Escape from New York(1981年)"、"They Live(1988年)”の4Kレストア版が劇場公開される。これは、行かねばならない。まずは”Escape from New Yor”。邦題は「ニューヨーク 1997」 制作年から16年後の1997年が舞台。犯罪の激増の結果、ニューヨークのマンハッタン島全体が巨大なコンクリート壁で隔離された刑務所となっている。そこにテロリストに乗っ取られた大統領専用機が墜落。Kurt Russellが演じる主人公、元特殊部隊の強盗犯 Snake Plisskenに大統領救出の命が下る。もう、設定からして、B級の匂いプンプン、中二病全開である。これこそ、Carpenter! 40年前の低予算作だが、4Kレストア版の映像は劇場の大スクリーンでの鑑賞に十分に耐えるクオリティだ。ただし、この作品、実のところ、派手なシーンは無く、アクション映画としてのカタルシスには乏しい。主人公のSnakeも、超人的な活躍をする訳でも無く、ドジも多い。しかし、無骨な彼が醸し出すハードボイルドな印象は強烈。そこに、ドライな演出と、全編に流れるCarpenter御大自身が手がけた音楽(チープ感漂うアナログシンセの単調な調べは中毒性高し)が加わると、まさに記録よりも記憶に残るB級映画のマスターピースと呼ぶべき傑作になるのだ。 ということで、久々に大スクリーンでJohn Carpenter節を堪能。残りの2作品も楽しみだ。個人的には、同じくKurt Russell主演の”Big Trouble in Little China(邦題「ゴーストハンターズ」)”と、Carpenterの特質が最も良く現れていると思っている”Vampires(邦題「ヴァンパイア/最期の聖戦」)”を大スクリーンで再見したいところだが… 「"SAVE LIVE MUSIC 4" 上原ひろみ ソロ "STANDARDS"」@ブルーノート東京 (22.1.12)「SAVE LIVE MUSIC」の第4弾。いよいよ、3種のプログラムのラスト「STANDARDS」。 予約開始時のチケット争奪戦には敗退したが、その後、リリースされた臨時席を確保。キャッシャーの目の前のカウンターに設置された臨時席だが、舞台に向かってやや左、ひろみ嬢の手元がバッチリ見える最高の角度。しかも、フロアよりも一段高いので、前の人の頭が邪魔になることは無い。結果的に、極めて好ポジションで嬉しい。スペース的に食事を取るのは無理なので、特製Artist Cocktail、"New Year Booster"を頼む。生姜の効いたジン・ベースのカクテル。 今回は、ひろみ嬢が以前から親しんできた「スタンダード曲」を「この日、この場所だけの味付けで探る冒険」で楽しむという趣向。「ORIGINALS」とも「THE PIANO QUINTET」とも違う、ひろみ嬢の趣味性全開という感じのプレイが炸裂する。 「スタンダード曲」と言っても、分かりやすいジャズ・スタンダードとは違う。Red Hot Chili Peppersの「Under the Bridge」まで飛び出す、あくまでもひろみ嬢にとってのスタンダード。曲への思い入れが強いせいか、いつも以上に演奏の工夫が凄いと感じる。実に様々なタッチでピアノを奏でる。そして、今日は、声も良く出る。演奏に集中した時のお約束の唸り声、合いの手のように入るシャウト、そして、メロディーがつい口を衝いて出ているようなハミング。実に楽しそうだ。しかも、ステージが後半になるにつれ、やりたい放題の度合いが高まる。超速弾きに、鍵盤の肘打ち、右手で超ピアニッシモを繰り出すかと思えば、同時に左手でフォルティッシモ。いやはや、楽しい。 前日に、通算100公演目を迎えた"SAVE LIVE MUSIC"(15%ぐらいは参戦できたかな)。彼女のライヴにかける情熱と、このジャズ・クラブへの愛情が伝わってくる素晴らしい企画だ。今日のMCでは「来て下さった皆さんに、スタッフ一同、感謝します」と、自分もスタッフの一員であるかのような挨拶をして笑うひろみ嬢だが、私が座る臨時カウンター席では、バックヤードから、本物のブルーノート東京スタッフがそれを聞いて愉快そうに笑う声が聞こえてくる。ミュージシャンとスタッフが、本当に良い関係を築いているのだなと、こちらも嬉しくなってしまう。 アンコール。例によって、ラーメン丼を掲げて入場。私の目の前を通るのが嬉しい。そして「Lean on Me」で全編終了。これで、私の新春上原ひろみ祭りは完了。実に楽しくもエキサイティングな年明けとなった。 "Cry Macho" (22.1.15)Clint Eastwoodの主演・監督最新作を観てきた。1971年に”Play Misty for Me(恐怖のメロディ)”で監督業に進出して50年。40作目の監督作である。 この映画で彼が演じるのは、昔、ロデオのスターだったカウボーイ。自身の落馬事故と、妻子を交通事故で失ったことで、今ではすっかり落ちぶれた暮らしを送っている。そんな彼が、かつての雇用主に、別れた妻と一緒にメキシコで暮らしている息子を米国に連れてくることを依頼されるところから物語は始まる。 映画のフォーマットは、年老いた主人公と少年のロード・ムービー。少年を連れ戻そうとする母親が放った追っ手との攻防もあるが、派手なアクション・シーンがあるわけではない。そもそも、Eastwoodに往年の身体のキレは無い。しかし、憎まれ口を叩きながらも、昔取った杵柄で荒馬を手なずけ、動物に優しく、世話になった家族には手料理を振る舞い、その家の聾唖の孫娘とは自然に手話で会話し、結果、知り合った美人の未亡人と良い雰囲気になる。頑なだった少年が心を開くのも当然のカッコ良さは、正にEastwood自身のイメージと重なる。。映画の雰囲気としては、2008年の”Gran Torino”に近い感触を覚えるが、13年の間に、Eastwoodの枯れた味わいはさらに熟成されている。しみじみと良い映画だと思う。 正直、リアルタイムで"Dirty Harry"を観ていないような今の若い人に、Eastwoodの渋さ、さらには、この映画の良さが伝わるのかは微妙な気がする。しかし、世代がハマる私のような者には、90代に突入してもなお、コンスタントに良質な映画を製作し続けるEastwoodの新作を観られることは、本当に嬉しいことなのだ。 "John Carpenter Retrospective - They Live" (22.1.15)”John Carpenter Retrospective”の2作品目、"They Live(1988年)”の4Kレストア版を観てきた。 異星からの侵略者が、武力ではなく、地球のエリート層と結託して、大衆を洗脳し経済的に搾取している。主人公は、偶然、手に入れた特殊なサングラスをかけることで、異星人の正体=骸骨のような醜い容貌が見えるのだ! もう、設定からして、B級の匂いプンプン、中二病全開である。やっぱり、Carpenter! ただし、私としては、醜い姿をした異星人を問答無用で殺すという部分に、どうも抵抗感がある。ゾンビ映画にしても宇宙人の侵略物にしても、この手の描写は多いが、ルッキズムだと思う。John Carpenterの代表作に挙げられることの多い作品だが、私は、この部分が気になって、あまり高評価はしたくない。 が、低予算臭溢れる画面と、チープなベースラインが癖になるCarpenter御大による音楽、そして、主役を務めるRoddy Piper(本業はプロレスラー)の味わい深い演技で、そうした抵抗感は麻痺してしまう。そして、徹底してドライな演出と、ラストシーンに溢れる無常感。やはり、Carpenter映画は癖になるのだ。 身近な人が感染したとなると、一気に自分事になってくる訳で、暖房の強い部屋で火照っただけでも、発熱したのでは無いかと心配になり、精神衛生上、よろしくないっす。 |