IN/OUT (2022.10.9)

急に寒くなりました。季節は移ろうものという常識はもはや通用せず、今や、季節はカットイン/カットアウトで入れ替わるみたいです。


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「途中のページが抜けている」 @ インディアンムービーウィーク2022リターンズ22.9.30

キネカ大森インド映画に特化した映画配給会社SPACEBOXがセレクトした作品を、日本語字幕付きで上映する特集企画「インディアンムービーウィーク」。今年6月の「インディアン ムービー ウィーク 2022」で”Pizza”を観たが、9月には「インディアン ムービー ウィーク 2022リターンズ」が開催。その内の一本を観に、キネカ大森に行ってきた。

時間があれば、もっと多数の作品を観たかったところだが、今回はこの一本。『低予算作品ながら驚異のヒットとなったコメディ』という紹介文に釣られての鑑賞。タミル語映画である。ポスターの中では、左上の黄色い写真の作品だ(なお、右上のイラストは、キネカ大森の名画座企画の際に先付け上映される片桐はいり主演のショートムービー「もぎりさん」)。

4人の仲良し男性の1人が結婚することになる。その式の前日、暇つぶしに野原でクリケットをしていたら、肝心の新郎が転倒し、記憶喪失になってしまう。結婚に反対する相手の両親を説き伏せてようやくこぎ着けた結婚式をなんとか無事に挙げさせようと、残りの3人が奮闘する。というストーリー。

見始めてすぐ、鑑賞したことを後悔する出来だと頭を抱える。そもそも、主人公の4人組が、揃いも揃って、超が付くボンクラばかり。いい歳した男性達が大切な日の前日に草クリケットなんかしてたのがバレたらマズい、という葛藤は分からなくはないが、ここまで苦労するなら、素直に告白すれば良いのでは?という疑問がつきまとう。しかも、この映画で描かれる記憶喪失は、コメディ・タッチではなく、深刻な脳の障害でも不思議では無いような重症で、笑えない。

演出も素人臭い。わざとらしいカメラワークと、無意味なクローズアップ。笑うタイミングが取りづらいジョーク。いかに、ベタなところが癖になるインド映画とは言え、これは酷い。低予算なので仕方ないとは言え、歌とダンスのシーンが無いのも大いに不満だ。ということで、161分の上映時間の内、155分までは、絶望的な駄作を選んでしまい大失敗だったと確信していた。

それでも、ラストの締め方は意外に良かったなと、少しだけ考え直した直後、エンド・クレジットが始まるところで、とんでもないドンデン返しというかネタばらしがある。いやはや、これには驚いた。良く言えば、映画全編に周到に仕組まれた叙述トリック!

まぁ。落ち着いて考えれば、このネタも酷いと言えば酷いのだが…。とにかく、こんなことが商業映画で許されるのが、さすがインド映画だ。


「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」@ 東京都庭園美術館22.10.8

東京都庭園美術館全世界レベルでの移動制限が続いた2年半。多くの人が「旅」とは何かを考えた時期かも知れない。それを踏まえて開催された展覧会を観に、東京都庭園美術館に行ってきた。展覧会のテーマは、「他者の旅を手がかりに、再考するための『旅のアンソロジー』」。

東京都庭園美術館最初のパートは、この建物、旧朝香宮邸の主、朝香宮鳩彦王の1920年代の欧州旅行の軌跡を辿る展示。当時の絵葉書(朝香宮が家族に宛てた、くだけた調子の文面も微笑ましい)、写真が趣味だったという彼によるスナップ写真、パリで交通事故に遭った彼のために後を追うように渡仏した允子内親王のお洒落っぷり(今なら、トップ・インフルエンサー間違い無しのフォトジェニックぶりだ)。100年前の海外旅行の記録なのに、見ているだけで、実に心躍る。当時のペリカン?(ペンギンと聞き間違えたのだろう)の置物も可愛い。

続いて、高田賢三の1964年の欧州旅行。アジアからスエズ運河経由でヨーロッパに向かう、朝香宮と同じ航路だ。そして、その後、彼が発表したフォークロア・ファッションを纏ったマネキンが展示されている。これもまた、旅の記録だ。

さらに、20世紀前半の鉄道関連資料を蒐集するコレクターの居間を再現するという、鉄分の高い展示。違う角度からの旅情を誘う。

後半は、現代美術家たちによるインスタレーション、映像作品、音響作品などが展示されている。デジタル系の作品には、あまり感心はしなかったが、どの作品も、この建物の各部屋の特徴を見事に活かしている。特に、福田尚代のシリーズ作、書籍を使った「翼あるもの」という作品群が書庫や書斎に並ぶ空間は、とても印象的だ。

東京都庭園美術館旧朝香宮邸という建物自体の魅力を見事に引き出す、新旧バラエティに富んだ展示が誘う旅情。素晴らしく見応えのある展覧会だ。本当に、ここ最近の東京都庭園美術館の企画は、ハズレ無しだと思う。



冬用布団を出すタイミングを完全を読み間違えたことを後悔する、今日この頃です。