IN/OUT (2022.1.9) |
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かつて、仕事始めの日は、午前中は挨拶回り。午後は拘束解除となって、職場の皆で初詣に行ったり、ボーリング大会をしたり、という時代がありました。が、令和の今、新年初日も、リアル出社しているのは1割ほどで、大半の社員は淡々とテレワーク。昔に戻りたいとも思いませんが、味気なさも覚えます。 最近のIN「"SAVE LIVE MUSIC 4" 上原ひろみ ソロ "ORIGINALS"」@ブルーノート東京 (22.1.3 & 9)上原ひろみがコロナ禍に苦しむライヴ業界のため、スタートさせた長期公演シリーズ「SAVE LIVE MUSIC」の第4弾。今回は、自身のオリジナル作をピアノ・ソロで披露する「ORIGINALS」、昨年のブルーノート東京での初披露からアルバム製作、Japan Tourへと発展したピアノ・クインテットが戻ってくる「BACK at the CLUB」、そして、ピアノ・ソロによる「STANDARDS」の3種のプログラムで、12日間24公演が開催される。1月3日は「ORIGINALS」。 “SAVE LIVE MUSIC”開演前のお楽しみ、公演限定コラボレーション・メニュー。この時ばかりは、南青山のジャズクラブで客の過半数がラーメンをすするという異様な光景が見られるのだが、私は、しっかりしたものを食べたかったので、ラーメンは別の日に回し、通常メニュー。それに加えて、上原ひろみセレクションのワインとチーズ。美味しゅうございました。 ちょうどお腹一杯になったところで、ライヴ開始。昨年末、ホール・コンサートを3本観た後だと、このサイズのハコでのライヴ感が嬉しい。ピアノの音色、ひろみ嬢の表情。全身から溢れ出すパワー。全てを至近距離で味わえる贅沢。特にピアノは、ヤマハって、こんなに良い音だったっけ?と思う鳴りっぷりだ。 演奏は、新旧様々な曲が採り上げられていたが、アレンジが工夫されまくっていて、最初、何の曲かな?となって、その内、馴染みのメロディーラインが浮かび上がる。「Desert on the Moon」のしっとりさ、「Mr. C.C.」の楽しさ。そして、Anthony Jackson & Simon Phillipsとのトリオでレコーディングした「Desire」などの曲であっても、一人で三人分の音数を叩き出すスリリングな演奏。一方で、ソロ公演だからか、どこかリラックスした雰囲気も漂わせつつの熱演という印象もある。 アンコールに登場したひろみ嬢。頭には「ら」の文字の髪飾り(ラーメンの「ら」だろう)。三が日限定企画のお年玉抽選会の後、「Joy」の演奏で全編終了。楽しかった。 「ORIGINALS」は、もう一回、9日にも参戦。この日は、しっかりコラボレーション・メニューの「タタンタタンタン麺」をいただく。割にオーソドックスな担々麺。 さて、演奏。セットリストは基本的には同じだが、今回は、ダイナミズムをさらに押し出しているような気がする。そして、アンコールでは、"SAVE LIVE MUSIC 4"開催記念グッズ、オリジナルのラーメンどんぶりを掲げて入場。どんぶりとレンゲをピアノ横のイーゼルに立てかけ、「キャリアを重ねた結果、大好きなどんぶりと一緒にステージに立つ夢が叶いました」。一見、ふざけているようだが、海外ミュージシャンの招聘が出来ず、苦境が続くブルーノート東京のために一肌脱いだグッズ販売なのだ。こういうところも、つくづくカッコ良いミュージシャンだと思う。そして「上を向いて歩こう」をたっぷりフィーチャーした「Joy」で全編終了。年始から飛ばしまくるひろみ嬢。2022年の活躍に期待大だ。 「ドライブ・マイ・カー」 (22.1.4)村上春樹の短編小説を原作にした映画を観てきた。日頃、日本映画は敬遠しているのだが、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞、さらに、カンヌ映画祭の公式選出とは別に、独立して選ばれる国際映画批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞(キリスト教関係者が選ぶ賞らしい)、AFCAE賞(フランスの独立興行主たちの連合組織が選ぶ賞らしい)も受賞、さらに、ボストン映画批評家協会賞やロサンゼルス映画批評家協会賞も受賞するなど、2021年の映画賞を席巻する評判の良さなので、観てみることにした。 物語は、同名の村上春樹の短編小説をベースにしているが、大幅に加筆・脚色がされている。テーマも拡大されていると感じる。さらに、他の村上春樹作品の要素がいくつも組み込まれており、村上春樹好きとしては、やや複雑な感慨を持ってしまう(彼の小説の映画化作品では、「パン屋再襲撃」が最高だと思っている)。主人公の乗る車が、黄色のサーブ900コンバーティブルから、赤色のサーブ900ターボに変わっているのも、何だか残念。 しかし、余白の多さと情報量の多さを両立させたシナリオの巧妙さ、そして、演出のキレは素晴らしいと思う。主人公が車の中で復唱する戯曲、チェーホフの「ヴァーニャ伯父」を、劇中劇として物語の重要なパーツに組み入れ、その台詞と実際の主人公達の心情をシンクロさせるところなどは、実によく考えられた技巧だ。これなら、ほぼ3時間の上映時間も必然と思える。 ということで、映画と原作小説は別と割り切れば、とても良質な作品だと思う。主人公の西島秀俊は、やや優等生過ぎる感じもあったが、その分、岡田将生の心に闇を抱えた演技が際立つ。そして、ドライバーを演じる三浦透子の存在感と表情が、とても印象的だった。 「"SAVE LIVE MUSIC 4" 上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット "BACK at the CLUB"」@ブルーノート東京 (22.1.4)「SAVE LIVE MUSIC」の第4弾。今日のプログラムは、昨年のブルーノート東京での初披露からアルバム製作、Japan Tourへと発展したピアノ・クインテットが戻ってくる「BACK at the CLUB」。 “SAVE LIVE MUSIC”のお楽しみ、公演限定コラボレーション・メニューの「あけましておめで鯛ラーメン SIO」をいただく。文字通り、鯛の出汁が効いた塩ラーメン。毎回、ブルーノート東京のラーメンのクオリティには感心する。 演奏は、ツアーと同じく「Someday」からスタート。ホールの豊潤な響きも良かったが、小さなハコで、5人の弾ける響きを浴びるのは格別だ。昨年一年間ですっかり一人一人のキャラが分かってきた弦楽四重奏組の表情を、間近で観られるのが嬉しい。 「Sliver Lining Suite」。4楽章全てにカタルシスのある演奏が、実にエモーショナル。ジャズ・クラブの空間を制圧する手練手管に精通したひろみ嬢がアドリブ全開なのは予想通りとして、それに追随し、有機的に絡んでいく弦楽四重奏組が凄い。1年前に観たときは、とても上手なクラシックの弦楽四重奏という印象だった4人が(ヴィオラのみ、メンバーチェンジがあったが)、即興演奏を繰り出しまくり、思いっ切り弾けている。特に1st ヴァイオリンの西江辰郎のキレ具合がエグい。この5人、もはや、鉄壁のバンドだ! ツアーではアンコールでの演目だった「月と太陽」の日替わりデュオは、本編中に披露。今回は2nd ヴァイオリンのビルマン聡平。喋りも達者な彼が書き初めネタでしっかり笑いを取った後は、例によっての繊細な演奏。終盤に弦楽四重奏全体が演奏に参加するのが新機軸。美しい響きは新年のご褒美のようだ。 本編最後は「Jumpstart」。文字通り、ひろみ嬢が飛び跳ねる! そして、アンコールは「Ribera Del Duero」。ソロ回しもタップリ。全員、とても楽しそうに凄テクを繰り出す。観ているこちらも、楽しいったらありゃしない。このフォーマットでの公演が、これで見納めかと思うと残念至極。早くも、2022年ベスト・ライヴ確定と思わせる体験だった。このメンバーの再集結を熱望する。 "Spider-Man: No Way Home" (22.1.8)MCUの最新作を観てきた。"Spider-Man: Homecoming"、"Spider-Man: Far from Home"に続くシリーズだが、予告によれば、2000年代のSam Raimi版 "Spider-Man"三部作(このシリーズ、大好きだ)や、2010年代のMarc Webb版 ”The Amazing Spider-Man”二部作(このシリーズは未見)に登場したヴィランが集結する(演じる役者も同じ)という、話題作だ。 平行して存在する多元宇宙(マルチ・バース)で、それぞれのSpider-Manが、それぞれのヴィランと戦っているという設定と、Avengersの一員 Dr. Strangeの魔法の暴走で、それらが交錯するという荒技には、感心する。さらに、予告では一切触れられていないサプライズ展開もあり、Sam Raimi版、Marc Webb版、そしてMCU版、全てのSpider-Manシリーズに(どのシリーズも、ちょっとしたモヤモヤが残るのだ)、一気に見事な決着を付けるというストーリーは、新春のお年玉だ。 しかも、これだけ風呂敷を拡げてしまったら、収拾の付かない大袈裟なだけのストーリーになりそうなところ、映画の核は、あくまでも”Your Friendly Neighborhood Spider-Man”らしい青春映画というところが素晴らしい。 もちろん、MCU次回作への伏線もしっかり仕込まれ、"Sony's Spider-Man Universe"とのクロスオーバーも示唆されるという、商売上手さも相変わらずである。 1月4日の上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット公演では、もう一つのコラボレーション・メニュー、「おみくじガレット」もオーダー。中にフェーベが入っていると事故の可能性もあるからか、巻紙に書かれたおみくじが別添されているパターン。私が引き当てたのは → 2022年。うん十年ぶりに楽器に触れてみるのも悪くないような気もしますが、余裕があるかなぁ… |