IN/OUT (2022.1.2)

新しい年が始まりました。久しぶりに帰省も出来、多少は落ち着いてきた感じの世の中ですが、それにしても2022年。”2001: A Space Odyssey”も"2010: Odyssey Two"も通り越し、”Blade Runner”や「AKIRA」の舞台だった2019年もとっくに過去となり、"Soylent Green"で描かれたのが2022年。自分がその年代を生きているということに、非現実感すら覚える今日この頃です。


in最近のIN

「上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット JAPAN TOUR 2021 “SILVER LINING SUITE”」@Bunkamura オーチャードホール21.12.27

オーチャードホール上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテットの公演を観に、オーチャードホールに行ってきた。12月9日のオーチャードホール12月12日のアクトシティ浜松に続いて3回目。これが私の、2021年ライヴ納めだ。

今回は、比較的前方、左側の席だったので、ひろみ嬢の右手の動きを後ろからバッチリ見ることが出来るポジションだ。弦楽四重奏(西江辰郎(1st ヴァイオリン)、ビルマン聡平(2nd ヴァイオリン)、中恵菜(ヴィオラ)、向井航(チェロ))と、真っ赤な衣装の上原ひろみが登場し、演奏が始まる。やはり、オーチャードホールで聴くピアノ&弦楽四重奏の響きは美しい。

ツアーも終盤。どの曲も、色々と演奏に工夫が増えているのが楽しい。ひろみ嬢だけで無く、弦楽四重奏組も、皆、ノリノリ。特に、西江辰郎が素晴らしいキレ具合だと思う。さらに、後半になるにつれ、ひろみ嬢のプレイにワイルドさが増し増し。このツアーでは控え目だったと思う演奏中の唸り声も出てきた。特に「11:49PM」の演奏には、鬼気迫るものを感じる。

この会場で使っているピアノは、レコーディングと同じ物とのこと(レコーディングよりは、ハードに叩いていると、ひろみ嬢)。本編の演奏での酷使ぶりに、アンコールの拍手の間、ギリギリまで調律が行われる。調律師と入れ替わりに登場したひろみ嬢、「米澤裕而!」と、調律師の名前をコール。長年、一緒にやっているお二人の信頼関係が見える。

そして、アンコールのお楽しみ。日替わりデュオのお相手は、2nd ヴァイオリン、ビルマン聡平。真面目そうな容姿なのだが、実は、喋りが上手い。関西(神戸)出身だからか、オチの付け方も天才的。物販もしっかりこなす。散々、会場(と、ひろみ嬢)を笑わせた後の「月と太陽」の演奏は、一転、どこまでも繊細。これで、4人中、3人のソロを観ることができた。西江辰郎だけ観られなかったのは残念。

アンコールラスト「Ribera Del Duero」。ひろみ嬢の唸り声も全開だ。一人ずつが前に出て披露するソロも、全員、テクニック炸裂。思いっきり弾き倒している。中でも、ヴィオラの中恵菜嬢が繰り出した奏法に感嘆。

ということで、熱の入ったライヴを堪能。良いライヴ納めとなって嬉しい。嬉しいのだが、今日がこれだったら、明日の千秋楽は、どんな事になるのだろうか。チケット争奪戦に敗れたのが残念でならない。


「清水ミチコ大感謝祭 in 武道館~作曲法SPECIAL~」@日本武道館22.1.2

日本武道館年始恒例、清水ミチコの日本武道館ライヴを観に行ってきた。2013年の年末、別の大物の公演がドタキャンになった事で、急遽、開催が決定したのを皮切りに、開催時期を年始に移して続いている清水ミチコ武道館公演も、これで8回目。私は、5度目の参戦となる。

8回目ともなると、ステージの構成は、武道館だからだと気負った所は無く、現在進行中のツアーと同じだ。既に、仙台名古屋で鑑賞済みなので、ネタに対する驚きは無いのだが、さすが武道館。大会場ならではの音響のゴージャスさを実感するし、正月二日目から(箱根駅伝の応援もせずに)武道館に駆けつける好事家の集まりということで、客層も良い感じだ。この手の色モノだからこそ、純粋音楽ライヴ以上に、観客のリアクションがパフォーマンスに与える影響は大きいと思うのだ。

結果、どのネタも、素晴らしい切れ味だ。実のところ、清水ミチコの物真似って、本当に声が似ているネタは少ないと思う。しかし、特徴の切り取り方のセンスと、音楽的な模倣度合いが他に類を見ない。矢野顕子ネタなど、その典型だろう。歌声には首を傾げても、ピアノ・アレンジのコピーぶりが、ファンも納得のクオリティなのだ。そして、このツアーの見所である「作曲法」でも、その特長は遺憾なく発揮されている。そのミュージシャン特有の「音色」にも、しっかりと拘った作り込みが素晴らしい、今回の新ネタでも、あの大物アーチストの作曲法での間奏のギターの音色に、つくづく感心した。

昨年受賞した伊丹十三賞に対する感謝のスピーチで「今後もふざけ続ける」ことを誓っていた清水ミチコだが、音楽的センスに裏付けされたおふざけは、私のツボど真ん中だ。その最高峰と思っているのが「日本語歌詞付きSpain」なのだが、お笑い芸人と飛騨高山の喫茶店店主の姉弟が、武道館の大舞台で、Chick Coreaの「Spain」を堂々と演じ切るライヴって、ホント、希有だなと思う。



ライヴ納めとライヴ初め、どちらも素晴らしいパフォーマンスでした。この調子で、INの多い一年になれば良いのですが、どうなりますかね。