IN/OUT (2022.2.27)

水曜日に、三回目の新型コロナウイルスワクチン接種に行ってきました。最初の二回がモデルナの場合、三回目をファイザーにした方が効果は高いということですが、予約が一ヶ月以上先まで埋まっていたので、早く接種できる方を優先。結局、三回ともモデルナ製となりました。


in最近のIN

"Death on the Nile"22.2.26

Agatha Christieのミステリーの映画化を観てきた。邦題が、慣れ親しんだ「ナイルに死す」ではなく、「ナイル殺人事件」というのが、古くからのChristieファンには腹立たしい。1978年に映画化された時(サンディーが歌った「ミステリー・ナイル」が懐かしい)も、映画邦題は「ナイル殺人事件」だったし、「Murder on the Orient Express」は、1974年の映画化も、2017年の映画化も、「オリエント急行の殺人」ではなく、「オリエント急行殺人事件」だった。原題が"xx murder case"=「XX殺人事件」じゃないことの意味を、配給会社には考えていただきたい。

今回、Hercule Poirotを演じるのは、2017年の「Murder on the Orient Express」に引き続き、Kenneth Branagh。個人的には、その外観が、原作のPoirotからは相当印象が異なるのが気になるところだ。

映画は、冒頭から、原作をかなり改変している。そのポイントは三つ、
・原作では戯画的な描かれ方をされている名探偵Poirotに人間的な奥行きを与えること。
・古色蒼然たる登場人物達を2020年代に公開される映画らしい仕様にアップデートすること。
・いささか複雑で余剰と思えるサイド・ストーリーを整理してすっきりさせること。
あ、もう一つ、「Murder on the Orient Express」に登場したBouc(演じるのは Tom Bateman)が本作にも登場することも改変ポイントだ。

この中で、特に二番目、登場人物達を(過剰なほど)ダイバーシティに配慮した人物造型に仕立て直したのは、良くも悪くも、さすが、ハリウッドの名人技だ。そして、サイド・ストーリーを整理したのも納得。現代ではあまりにも非現実的な印象を与えそうな要素をバッサリ切ったという感じだ。その一方、メインのトリック自体は原作にかなり忠実。これらの要素に、監督も務めるKenneth Branaghの舞台劇的演出が加わり、見応えのあるミステリー映画となっている。

ただし、Poirotの人物造型を原作から変えたのは(理解はできるが)納得いかない。認めたくない。特に、彼の自惚れの象徴と言える口髭に余計な意味合いを付加した事は、オールド・ファンとしては、断固、反対だ。本当に余計なことをしてくれたと思う。Christie原理主義者の頭は固いのである。


「大野雄二トリオ LUPIN THE THIRD JAZZ」@ブルーノート東京22.2.26

ブルーノート東京大野雄二トリオの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。

公演の正式名称には”Office Augusta 30th MUSIC BATON vol.4 ”という言葉が付く。音楽事務所「オフィスオーガスタ」が設立30周年を記念して開催するライヴ・シリーズの一環として、オフィスオーガスタと業務提携する作曲家 大野雄二をフィーチャーして行われるライヴなのだ。トリオは、ピアノの大野雄二、ベースの上村信、ドラムスの市原康という布陣。公演タイトルには、作曲家としての彼の代表作「ルパン三世」が入っているが、ピアノトリオで、果たして、どんなライヴになるか。

大野雄二は1941年生まれの80歳。見た目は年相応だが、演奏が始まると、堂々たるものだ。もちろん、スーパー・テクニックを繰り出すというタイプの演奏とは対極の、古き良きピアノ・トリオという感じのプレイだが、白熱してくると中腰になって鍵盤を叩き、ベーシストとドラマーに手振りで指示を飛ばす。演奏曲は、「C Jam Blues」、「Manhã de Carnaval(黒いオルフェ)」、「Cute」、「You Don’t Know What Love Is」などのスタンダード曲が続く。ベースもドラムスも、実に的確な演奏で、とても聴きやすいピアノ・トリオだ。

この二年間は、ライヴ活動はしていなかったということで、MCでは「二年間ですっかり忘れた」など、鉄板の老人自虐ネタで笑いを取る大野雄二。「今日は、自分が好きなスタンダードを中心に。ルパンは少しだけ」とのこと。

と言いつつも、終盤は、大野雄二自身の作品、「セーヌの風に…(Adieu) 」( ルパン三世 PART5のエンディングテーマ)、「犬神家の一族・愛のバラード」、「ルパン三世・愛のテーマ」、「ルパン三世のテーマ」が続く。どれもお馴染みの曲だが、しっかり、ピアノ・トリオとしての楽曲にアレンジされている。「犬神家の一族・愛のバラード」は、しみじみ名曲だと実感。さらに、「ルパン三世のテーマ」では、曲を始める直前に大野雄二の気が変わったようで、まず、ドラムとベースに先に演奏を始めるように指示。戸惑いながらも、探り探りで音を出す二人に大野雄二がピアノを被せ、インプロビゼイションのような感じがしばらく続いた後、お馴染みのあのメロディーが入ってくるという、お洒落かつ高度なトリオ演奏だ。演奏家としての大野雄二、本当に楽しんでいる感じだ。

私が観た1st Showでは、アンコール無しで終了。本家のジャズ・アレンジで「犬神家」や「ルパン三世」を聴けるというのは、何とも贅沢な事であり、これはこれで良かったのだが、2nd Showでは、アンコールに「炎のたからもの」(from カリオストロの城!)をソロで披露したらしい。これも聴きたかったな。



結果、今回もしっかり副反応。接種後、9時間後~54時間後ぐらいの間、38度ちょいの発熱。まぁ、これで、強化された人間になったかのような安心感を得られるので、ありがたいことではあります。