IN/OUT (2022.9.18)

台風14号。この辺りは三連休中の直撃は無さそうと油断していたら、その影響か、日曜日はかなり激しい雨になりました。


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「イエス『危機』50周年記念ジャパンツアー(追加公演)」@ Bunkamura オーチャードホール22.9.12

Bunkamura オーチャードホールYESの傑作アルバム”Close to the Edge(邦題「危機」)”の発売50周年を記念したツアーの追加公演を観に、Bunkamura オーチャードホールに行ってきた。先週も2 daysに参戦しているが、追加公演が発表されるや、前のめりでチケットゲットしたのは、言うまでも無い。

ただ、気になるのは、この追加公演が、「9月5日、6日の東京公演と一部内容が異なる「スペシャル・アコースティック・インタールード」を含む」と発表されていること。日本ツアーで疲れが溜まった最後に、アコースティック多めのセット・リストで、もう一儲け。みたいな感じだったらやだなぁと邪推する気持ちもあったが、果たして…

これまでの2回に比べると、かなりセンター寄りにはなったが、今回も、私の席は左サイド。Steve Howe側である。開演して、まずはAlan Whiteの追悼ヴィデオが”Turn of the Century”("Going for the One"収録)をバックに流される。そして、Stravinskyの”The Firebird Suite”をバックに、メンバー登場。演奏が始まる。

”On the Silent Wings of Freedom”("Tormato"収録)。
"Yours Is No Disgrace"("The Yes Album"収録
"Does It Really Happen?"("Drama"収録
ここまでは、先週と同じだ。東京の後、大阪と名古屋を回ってきての追加公演だが、疲れは見られず。むしろ、皆さん、かなりの充実ぶりだ。

今回は、このまま、"Wonderous Stories"("Going for the One"収録
新作、"The Ice Bridge"("The Quest"収録)。
とバンド演奏が続く。

そして、ここで、「スペシャル・アコースティック・インタールード」。
Steve Howeのギターソロ。
”To Be Over”("Relayer"収録
”The Leaves of Green”("Tales from Topographic Oceans"収録
2曲目は、後半に Jon Davisonが登場し、ヴォーカルが入る。Billy Sherwoodも、ちょこっとだけコーラスで参加。

続いて、Geoff Downesのソロ。
The Bugglesの”Video Killed the Radio Star”
これにはビックリ。Asiaのライヴでは聴いたことがあるが、YESのライヴでこれをやるかぁ。また、後ろのスクリーンに、この曲のビデオ・クリップが映されていたのだが、この場にいないTrevor Hornが目立つ映像を流されてもなぁ…。「黄金期のYES」原理主義者の私としては、ここにRick Wakemanがいて、”The Six Wives of Henry VIII”から1曲とか演ってくれたら、どれだけ狂喜乱舞したことかと、妄想してしまう。まあ、そうは言っても、「ラジオスターの悲劇」。インストゥルメンタルで聴くと、メロディーの美しさが際立つ。やはり、超が付く名曲であることには間違い無い。

そして、アルバム”Close to the Edge” 全曲演奏。
"Close to the Edge"
"And You and I"
"Siberian Khatru"

アンコールは、ド鉄板曲の連打。
"Roundabout"("Fragile"収録
"Starship Trooper"("The Yes Album"収録

この、「危機」からアンコールまでの5曲の演奏がすさまじい。もはや、神がかっていたと思う。とにかく、Steve Howeがノリノリ。先週よりも、舞台中央で観客にアピールする回数は多いし、片足でジャンプする回数も多い(さすがに転倒が怖くて、観ている方の心臓に悪い…)。さらには、ギターを逆さまにしてヘッドを床に立てるような姿勢で弾くという変態奏法を見せるなど、終盤になるにつれ、どんどんノリが加速していく。こんなHoweは見たことが無いような気がする。そんな彼に牽引され、バンド・メンバーも素晴らしいプレイだ(むしろ、皆が全力でHoweを盛り上げていると言うべきか)。まさに圧巻。ライヴ終わりには、圧倒されまくった疲労感と昂揚感がごっちゃになり、呆然とする。

この追加公演は、溜まった疲れを誤魔化すためにアコースティック多めなのかも、などと邪推した自分が恥ずかしい。Steve Howe師匠はもちろん、メンバーは替わろうとも、YESというバンドの魂を継承する現ラインナップの皆さん。本当に、素晴らしい。もう、感涙である。

ということで、来日ツアーはこれが最後といわず、また、すぐにでも来ていただきたいのである。


”BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guest BOB JAMES” @ ブルーノート東京22.9.13

ブルーノート東京エリック・ミヤシロ率いるブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。今回のメンバーは、 サックスに本田雅人、鈴木圭、竹村直哉、寺地美穂、今井晴萌。トランペットに西村浩二、小澤篤士、高杉和正、山崎千裕。トロンボーンに鹿討奏、高井天音、藤村尚輝、小椋瑞季。ピアノが宮本貴奈。ベースが川村竜。そして、ドラムスが川口千里という布陣。ここに、スペシャル・ゲストでBob Jamesが加わる。

ジャズ / フュージョン界の巨匠、Bob Jamesは、2004年にシンガポールで観たことがある。その時は、あまりピンと来なかったのだが、それから18年。私も、彼のような王道プレイヤーの演奏を楽しめるようになった、と言いたいところだが、イマイチ、自信が無いので、翌日からのBob James Trioの公演ではなく、ビッグ・バンドへのゲスト出演という分かりやすいフォーマットの方を観に行くことにしたのだ。

ありがたいことに、かなり前方の席。ただ、ビッグ・バンドの場合、音のバランスが悪いし、譜面台に隠れて、ほとんどのプレイヤーの顔が見えない。あまり、好位置とは言えない。このビッグ・バンドの場合、川口千里のドラムス・プレイが楽しみの一つなのだが、彼女の姿は全く見えない席だ(さらに、その後登場するBob Jamesの姿も、全く見えない…)。

まずは、バンドだけで演奏開始。5月に観た夏木マリがゲストの公演と同じく、エリック・ミヤシロが作曲した、このオーケストラのテーマ曲とも言える「Blue Horizon」。そして、昨年亡くなったT-SQUAREの和泉宏隆の作品をエリック・ミヤシロがメドレーにアレンジした曲を、T-SQUAREに在籍していた本田雅人をフィーチャーして演奏。メンバー全員が世界的に活躍するスーパー・プレイヤー軍団だけに、実に心地よく盛り上がる。

そして、Bob James登場。1939年生まれの御年82歳だが、さすが、現役トップ・プレイヤー。若々しい姿だ。熱烈な拍手に応える表情に、人柄の良さが滲み出ている。

演奏曲は、どれも、耳に覚えのあるフレーズだ。タイトルは、ブルーノート東京のサイト掲載のセットリストで確認。"One Mint Julep", "Feel Like Making Love", "Maputo", "Nautilus", "Lover Man", "Westchester Lady"。代表曲揃いだ。いずれも、知的でクールなピアノが、ビッグ・バンドの高い熱量の演奏に見事に絡んでいる。

アンコールの儀式は無く、エリック・ミヤシロの「ここからアンコール。と気持ちを切り替えてください」のMCで、アンコール曲 "Angela”。凄腕集団のブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラに、レジェンド級のピアニストが参加して、十分なリハーサル時間は無かったと思うのだが、見事に調和した音楽を響かせる。ミュージシャンって、つくづくカッコ良い人達だと思う。

Bob Jamesが退場したが、せっかくなのでもう1曲。というところで、宮本貴奈がエリク・ミヤシロに何やらささやきかける。客席に、小曽根真がいる。彼をアンコールに引っ張りだそうというサプライズ! まさかと思ったが、一番後ろのカウンター席に座っていた小曽根真、舞台へ。これは嬉しい。

ということで、最後の最後は、小曽根真とブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラの共演で”Spain”。急遽、参戦しても、演奏のハマり具合はバッチリ。川口千里と小曽根真の二人だけでプレイするパートは、小曽根真のピアノは勿論だが、川口千里のドラムスの的確さにシビれ、その後、ソロでアドリブをたっぷり聴かせる小曽根真に、さらにシビれる。いやはや、ミュージシャンって人達は、なんとカッコ良いことか。


「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」@ アーティゾン美術館22.9.18

アーティゾン美術館1882年、福岡県久留米市生まれの二人の画家、青木繁と坂本繁二郎。彼らの作品を集めた展覧会を観に、アーティゾン美術館に行ってきた。このうち、青木繁は、代表作「海の幸」で知っていたが、坂本繁二郎の方は、知らなかった。しかし、知人が、その縁者だということを聞き、興味を持ち、観てみることにしたのだ。

同じ年に同じ町で生まれ、同じ高等小学校で学び、上京し同じ洋画塾に進んだ二人だが、人柄とその後の生涯は真逆という感じだ。青木繁は、若くして注目された天才肌だが、父親が危篤になって帰郷。父の死後は、家族を支える現実的な甲斐性は無かったのか、家を飛び出し、九州各地を放浪。再び脚光を浴びること無く、28歳で結核のために死去。一方、坂本繁二郎は、当初は青木繁ほどの才気は感じられなかったが、1924年から3年間のパリ留学。その後は、故郷近くの八女市を拠点に、馬や静物を落ち着いた筆致で描き続け、87歳の長寿を全う。

二人の生涯に合わせ、展示の冒頭は、彼らが共に学んだ若い頃の作品。そして、青木繁の作品が目立つようになるが、展示の後半は、青木の死後、画風を成熟させ続ける坂本の作品が主。そして、展示の最後には、二人、それぞれの最晩年の作品が並ぶ。青木は朝日を描き、坂本は月を描いている。二人の対照的な性格と生き方が凝縮しているようで、上手い展示だなぁと感心する。

なお、青木繁の「海の幸」は、恋人や坂本を含む友人達と滞在した千葉県館山で描かれたのだが、この大漁の風景を実際に見たのは坂本繁二郎。その様子を聞いた青木繁が、想像で描いたとのこと。青木の天才ぶりが実感できるし、二人の性格の違いが表れたエピソードだと思う。

なお、同時開催されている「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 田園、家族、都市」も、中々のボリューム。アーティゾン美術館の音声ガイドは、無料でスマートフォン・アプリで聴くことができるのだが、このコレクション展の何点かもオーディオガイドの対象となっているのは良心的だと思う。



暑さの盛りが過ぎた三連休。各地で予定されていた野外イベントが中止になったり、雨の中で大変な思いをしたり、ということも起きているようです。すっかり野外フェスから足が遠のいている今となっては、以前のように、そういうトラブルも込みで楽しめる気力・体力が残っているか、まったく自信がないなと寂しい気もする今日この頃です。