矢野顕子 リサイタル2024〜ピアノ弾き語り〜


誤りのご指摘や追加情報等あれば、送っていただけると助かります。

*9月14日、15日の八ヶ岳高原音楽堂公演は、(「リサイタル」名義では無いため別ページに記載しています。


button スケジュール

公演日会場
9月7日(土)江戸川区総合文化センター 大ホール
11月19日(火)鎌倉芸術館 小ホール
11月22日(金)日経ホール
11月24日(日)豊川市文化会館 大ホール

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button 9月7日(日)/ 矢野顕子 江戸川スペシャルリサイタル2024〜ピアノ弾き語り〜@江戸川区総合文化センター 大ホール

buttonセットリスト

  1. そりゃムリだ
  2. ひとりぼっちはやめた
  3. 音楽はおくりもの
  4. 海のものでも、山のものでも
  5. 悲しくてやりきれない
  6. SUPER FOLK SONG
  7. 自転車でおいで
  8. 星のラブレター(The Boom
  9. 春咲小紅
  10. PRAYER
  11. GREENFIELDS
  12. ひとつだけ
アンコール
  1. ごはんができたよラーメンたべたい

buttonレポート

ソロ・ライヴは、4月に「TOKYO春爛漫、」、5月に「矢野顕子 Into The Space <Version 2>を開催しているが、”リサイタル”名義の弾き語りライヴは、今年初。会場の江戸川区総合文化センター 大ホールは、キャパ 1,497席。私は初めて訪れたが(矢野さんも初めてとのこと)、昔ながらの豪華なホールという雰囲気だ(ロビーに、何気にパブロ・ピカソの絵が飾られていたりする)。

ピアノはSteinway。客入れの音楽は、Sérgio Mendes(& Brasil 66)。この日、訃報が流れた彼への弔意だろうか。

開演。1曲目「そりゃムリだ」と2曲目「ひとりぼっちはやめた」をシームレスにつなげる。最初から絶好調だ。ホールのSteinwayも良い響きだし、矢野さんの声の調子も良い。何より、一つ一つの言葉を明瞭かつ丁寧に届けようとしているような歌唱だ(この印象は、最後まで持続した)。

MCも、終始リラックスした感じ。都心近くの(ただし、高速の出口周辺に高いビルは無く、空が広い)会場の気安さかな。

「音楽はおくりもの」では、これまで聞き取りづらいと個人的には感じていた「モータウン」の歌い方が工夫され、くっきり聞こえたのが印象的だった。

「悲しくてやりきれない」の演奏後には、「ピアノ演奏に、角野隼斗さんから盗んだ()テクニックを使ってみた」との発言(すいません、私には分からなかった…)。そして、「次の曲は、長い間、演っていなかった曲です」と言って、演奏を始めようとキーを探っていたのだが、結局、思い出せない。ということで、この曲は見送り…。ただ、そこからの「SUPER FOLK SONG」、「自転車でおいで」の流れが素晴らしかったので、無問題だ。

「星のラブレター」は、The Boomの1989年の作品。矢野さんは、初めて演奏するつもりだったが、スタッフから「昔、演ってましたよ」と指摘されたそうだ。演奏後、歌詞カードに、「ヤノ」、「ミヤ」、「大貫」、「奥田」、「鈴木」、「全員」などの書き込みがあることを発見し、ようやくこれが、「Beautiul Songs」で演奏した曲であったことを思い出す矢野さん(この曲が歌われたのは2回目の”Beautiful Songs 2002"。ライヴ盤として発売されている”LIVE Beautiful Songs”は1回目の公演の記録なので、この曲は収録されていません)。

ここから、鉄板曲が続く終盤戦。特に、「GREENFIELDS」の熱演に、やはり大名曲だとの意を強くした。本編ラストは「ひとつだけ」

アンコール。どうせ、二択を観客に問いかけても反応は「両方」になるのだから、ということで、炭水化物セット、「ごはん」と「ラーメン」。矢野さんの素晴らしい即興アレンジで、見事なメドレーのつなぎ。これで全編終了。いつにも増して、極めて高レベルな弾き語りパフォーマンスだったと思う。大満足であるが、矢野さんが思い出せず、演奏を断念した曲が何だったのかだけが気になる……

追記:翌日の矢野さんのTwitter(現X)によれば、断念したのは「 Evacuation Plan」だったとのこと。私のメモでは、2008年~09年頃はしばしば採り上げていたが、2011年に上原ひろみさんと行った「さとがえる」で演奏された以降、記録されていない。エモーショナルで大好きな曲なので、これは、聴きたかった!

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button 11月19日(火)/ 矢野顕子 リサイタル in 鎌倉2024@ 鎌倉芸術館 小ホール

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  1. さようなら
  2. 赤いクーペ
  3. へびの泣く夜
  4. 引っ越し
  5. David
  6. ちいさい秋みつけた
  7. 夢のヒヨコ
  8. ドラゴンはのぼる
  9. 夢の世界で(作詞:野口聡一の未録音曲
  10. PRAYER
  11. ごはんができたよ
  12. ひとつだけ
アンコール
  1. 希望のうた
  2. ラーメンたべたい

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一昨年まで、「年末」恒例の鎌倉芸術館小ホールでのライヴだが、23回目となる今年は、昨年に続いて11月の開催だ。さとがえるで盛り上がった後、親密感溢れるソロ公演で年越しを迎えるという感覚が染みついているので、まだ、調子が狂う感じはある。

客入れの音楽は、Sérgio Mendes(& Brasil 66)。もちろん、Steinwayの前の椅子は、コクヨのingLIFE ピアノ演奏仕様特注版。

まずは、この日の朝、11月13日に亡くなったことが公表された谷川俊太郎氏が作詞した「さようなら」。終盤のピアノの力強い打鍵に、想いが込められているような演奏。そのまま、シームレスに始まった2曲目も、谷川俊太郎氏作詞の「赤いクーペ」。糸井氏の曲を1曲挟んで、さらに谷川俊太郎氏の「引っ越し」。この曲は、2017年のさとがえるで披露されて以来の難曲だが、やはり、心のこもった名演だ(矢野さんご本人は、次に演るのは30年後かも、とおっしゃっていたが)。

難易度の高い曲の次に、5曲目「David」でほっこりした後、始まったのは、サトウハチロー氏作詞の「ちいさい秋みつけた」。演奏開始直後は、尖ったアレンジに驚いたが、演奏が進むにつれ、元祖さとがえるトリオ(Anthony & Cliff)の名演を想起させる展開になり、どんどんヒートアップしていく。実にカッコ良し。

続いて、糸井重里氏作詞の「夢のヒヨコ」。今回、オリジナルのFax原稿を見いだしたところ、録音版に採用されなかった2番の存在が明らかになったということで、1番から3番のフルセットでの演奏。没になった2番には、なんとヒヨコが登場しないという驚きの展開(代わりに登場するのは、カエル!)。

野口聡一宇宙飛行士とのプロジェクトから、「ドラゴンはのぼる」。そして、今年5月の「矢野顕子 Into The Space <Version 2> 矢野顕子の歌とピアノで宇宙へ行こう。」で披露された、地上に戻ってきたその後の宇宙飛行士のことを描いた「夢の世界で」。演奏後、例によって、宇宙についての話を色々としている内に、Space X社のElon Musk氏に話が発展しそうになり、"腹が立ってくる"前に、「Prayer」でクールダウン。そして、本編ラストは、「ごはんができたよ」と「ひとつだけ」の鉄板構成。

アンコールは、「MISIAさんに提供した曲だから、自分で歌うのは控える」と公言していた「希望のうた」。やっぱり、自分でも歌いたくなって、MISIAさんに了解を得たということだが、この名曲の矢野ヴァージョンは、清水ミチコさんに頼るしか聴く術が無いと思っていた我々には、ありがたい限りだ。そして始まった演奏が素晴らしい。想いの詰まった歌唱とピアノ。凄みすら感じる熱演だ。そのため、アンコール2曲目で「ラーメンたべたい」が始まった直後は、蛇足かも… と思ってしまったのだが、これがまた、素晴らしい熱量のパフォーマンス!毎年、鎌倉のラーメンの熱さは、特別だ。

ということで、「冬の矢野顕子祭り」開幕である。一連の公演を、23回目の今回も衰えない音を出してくれる素晴らしいピアノを擁し、通い詰めてるコアなファンも多いこの会場で、リラックス・モードでスタートするというのは、正解だなと思い直したのである。

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button 11月22日(金)/ 大手町座 第37回 矢野顕子リサイタル2024 〜ピアノ弾き語り〜@日経ホール

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  1. さようなら
  2. 赤いクーペ
  3. 横顔
  4. 悲しくてやりきれない
  5. 仕事を終えたぼくたちは
  6. 夢のヒヨコ
  7. 中央線
  8. うちゅうから(作詞:野口聡一さんの娘、作曲:矢野顕子
  9. 透き通る世界
  10. PRAYER
  11. ひとつだけ
アンコール
  1. 津軽海峡・冬景色
  2. 希望のうた
  3. ラーメンたべたい

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東京のビジネス街の中枢「大手町」でエンタテインメントを届けるというコンセプトで、日本経済新聞社が主催する「大手町座シリーズ」。4年連続で矢野さんのリサイタル開催である。会場の日経ホールは、大手町・日経ビルの3〜5階に位置し、キャパは 610席。客席に背面収納型の机と手元ライトが装備されていて、講演会やシンポジウムにも対応。一方で、クラシック系のコンサートにも対応できる音響を備えているという、日本経済新聞社らしいホールである。

ピアノはSteinway。客入れの音楽は、Sérgio Mendes(& Brasil 66)。

鎌倉と同様、谷川俊太郎作詞の2曲からスタート。この会場独特の、ピアノもヴォーカルもハキハキとクリアに響く音響が、詩を聴かせるパフォーマンスに良く合っている。

続いて、”まだ生きている”大貫さんの「横顔」。サトウハチロー作詞・加藤和彦作曲の「悲しくてやりきれない」。さらに、”もう1曲、悲しい曲を”ということで、矢野さんが高橋幸宏氏に詞を提供した「仕事を終えたぼくたちは」。特に、高橋幸宏氏の曲は、思い入れたっぷりという感じの熱演。

鎌倉でも披露した、録音版では割愛された2番も含めた「夢のヒヨコ」完全版。この曲は、しばらく、コンサート中にちょっと笑いを取る change of pace的鉄板曲になりそうだ。さらに、宮沢和史氏の息子さんの話も飛び出しての「中央線」。

ここから、例によって、話が長くなりがちな”宇宙コーナー”。ただ、事前にスタッフから相当釘を刺されていたようで、いつもより巻き気味で話を締めて 2曲。さらに、”宇宙飛行士は、出発前に遺書を書く”と話をしてからの「Prayer」。今日は、全体的にメメント・モリというか、死を隣に感じるような印象を受ける選曲だと感じる(どれも熱演で、しんみりしたパフォーマンスという訳では無く、あくまでも個人的な印象だが…)。

本編は、次の「ひとつだけ」で終了。11曲というのは少ないなと思っていたら、アンコールで登場した矢野さん、”スタッフから、短いと怒られた”とのこと。やはり、宇宙話が長くなるのを警戒し過ぎていたのか…。

ということで、アンコールは3曲に。まずは「津軽海峡・冬景色」。ピアノ演奏も歌唱も、この曲に関しては過去最強かもと思えるほどの熱演。さらに「希望のうた」の力強さも、「ラーメンたべたい」の熱さも、物凄い事になって、大団円である。

予備知識の無い大手町サラリーマンも一定数来ると思われる日経ホールの公演だが、回を重ねる毎に、遠慮が無くなってきたという印象を受けてきた。そして、いよいよ今年は、完全に矢野さんのホームグラウンドになったな、と思わせる好演だった。

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button 11月24日(日)/ 矢野顕子 リサイタル2024 〜ピアノ弾き語り〜 豊川市文化会館 大ホール

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  1. BAKABON
  2. 音楽はおくりもの
  3. David
  4. 雷が鳴る前に
  5. ふりむけばカエル
  6. SUPER FOLK SONG
  7. 中央線
  8. ドラゴンはのぼる
  9. PRAYER
  10. GREENFIELDS
  11. ひとつだけ
アンコール
  1. ラーメンたべたい

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2024年最後の弾き語り公演は、豊川市文化会館大ホール。名鉄諏訪町駅から徒歩15分。昔ながらの市民会館という風情だ。キャパ 1,328席。残念ながら、後列には空席が目立つ。

ピアノはYAMAHA。客入れの音楽は、Sérgio Mendes(& Brasil 66)。

最近続いた谷川俊太郎氏の詩ではなく、「BAKABON」〜「音楽はおくりもの」でスタート。今回は、コンサートをやる機会が少ない地方での公演にありがちな、分かりやすいセットリストを、崩しすぎないアレンジでお届けするパターンだ。カッチリしたプレイに、癖のないYAMAHAのピアノが良く合っている。

2曲終わって、最初の挨拶で「豊橋」と言い間違える矢野さん。すぐに気がつき、「稲荷寿司の豊川」と言い直す(最寄りの新幹線駅が豊橋なので、確かに紛らわしい)。そして、「今日は、万遍なく名曲の数々を披露する」と宣言。

その言葉通り、鉄板曲が続く。MCも丁寧で、「SUPER FOLK SONG」の演奏前には、この歌の舞台が、谷岡ヤスジが描く「村(ソン)」である旨も説明(歌詞に出てくる”ラッタッタ”の意味も、今の人には分からないだろうな…)。

分かり易さ重視のセットリスト&明快なプレイの公演でも、宇宙の話と曲は欠かさない(いつもよりは話は短めで、演奏は1曲だけだったが)。「ドラゴンはのぼる」は、今日のカッチリしたピアノとの相性が、特に良かったと感じた。

「GREENFIELDS」では、曲の終盤、歌詞が飛んでしまったが、そのリカバリーで、(怪我の功名と言うべきか)いつも以上にドラマチックなパフォーマンスになった。さらに、イレギュラーな演奏になったにも関わらず、バッチリのタイミングで照明を合わせるスタッフが Good Job!!

短めの11曲で本編ラストの「ひとつだけ」。アンコールは ”思いの丈をこの1曲に集約する!” ということで「ラーメンたべたい」。これで全編終了。

本編11曲+アンコール1曲のみで、選曲にもサプライズが無い。ということで、いささか淡泊に感じた部分もあるが、ベーシックなソロ・コンサートとして、しっかり楽しめた。

いよいよ、2024年のライヴは、12月初旬からのさとがえるを残すのみ。ソロ公演の好調さから、期待大である(今日のMCからすると、宇宙の新曲もあるかも)。

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