2021年8月25日発売
45周年記念盤/初回限定盤(CD+Blu-ray Disc)VIZL-1833 / 通常盤(CD)VICL-65453 / 生産限定アナログ盤(LP) VIJL-60245
Arranged and Produced by 矢野顕子、小原礼、佐橋佳幸 & 林立夫
このアルバムはバンドにこだわって製作、という事前知識からすると、ちょっと意外な電子音からスタート。しかし、すぐにこのメンバーならではのグルーヴが拡がります。宇宙好きの矢野さんに触発された糸井氏も宇宙をテーマにした作詞。
この曲の出だしは、1981年 村田有美さんのアルバム「卑弥呼」収録の同名曲。けだるい雰囲気がカッコ良い旧バージョンに比べると、グッとロック寄りのアレンジに生まれ変わっています。そして、新たに加えられた力強い後半が、実に爽快。このバンドの結束力を感じます。
食べ物シリーズの新作は、奥田民生氏が魚肉ソーセージを生で囓っているところを見たことから作られたとのこと(加熱派の矢野さんには衝撃の光景だったらしい。因みに、私は「伊藤ハムのポールウインナー」派。魚肉ソーセージに思い入れは無いなぁ)。カントリー調の演奏は、佐橋氏の器用さが存分に発揮されています。因みに、林氏は、本当に魚肉ソーセージでパーカッションを叩いたそうです。
コロナ感染拡大による自粛期間中にリモート・セッションで録音され(ヴォーカルだけは、後でスタジオで取り直したそうです)、このアルバム製作のきっかとなった作品。エンジニアの飯尾芳史氏がリズムを打ち込んだものに、矢野さんがピアノと歌を録音。それに対して、林氏がドラムを宅録。ミックスしたものに小原氏がベースを入れ、それを佐橋氏へ。最後に矢野さんに戻してハモンドオルガンなどを追加…と、データを受け渡しながら製作されたとは思えない、一体感のある演奏。特に、ラストのコーダ部は、まさにバンドのライヴ感に溢れていると感じます。
2017年の石川さゆりさんとのコンサートで、石川さんからのリクエストで初披露。それ以来、何度かソロ・コンサートで演奏され、熟成を重ねてきましたが、前年のさとがえるでのバンド・アレンジでさらに完成度が高まったカヴァー曲(矢野さん曰く、コンサートで演奏したら全員のミュージシャン魂が燃えに燃えた、とのこと)。演歌であり、ジャズであり、ブルースでもあるような、一種独特の緊張感とカッコ良さが詰まった、攻めた演奏。バンドメンバーも、これは、もはや津軽海峡では無く、マゼラン海峡だと言っていたとか。
シンプルなようでいて、壮大なスケールも感じるメロディー。「大貫妙子」・「Carol King」と固有名詞が出る歌詞に滲み出るパーソナルな手触り。効果的なコーラス。そこに浮かび上がるのは、プロ音楽家としての矢野さんの毅然とした姿。アルバムのタイトル曲にふさわしい力作です。歌入れの際、その難易度の高さに「いっそMISIAに歌ってもらえないだろうか」とTwitterに投稿したことがきっかけで、本当にMISIAさんがコーラスに参加されました。また、アルバム発売前に公開されたMVには、女優ののんさんが出演されました。
夏の米国でよく見かける、トレーラーを牽引(Tow)してバケーションに向かう家族連れの車。季節の移ろいに、やがて、子供が成長し、牽引する物も無くなるという人生の移ろいを重ねたような歌詞。秋が近づき、夏を過ごした別荘からの帰り道という趣きを感じる曲調。12弦ギターの響き。夏の終わり独特の寂寥感が美しくパッケージされた作品だと感じます。