2010年2月10日発売
YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS YCCW-10108
Produced by 矢野顕子
これまでの弾き語り三作のいずれとも違う柔らかいピアノの響きに、吉野金次さんが闘病生活から復帰し、このシリーズの新作が出たことを、本当に嬉しく感じます。
糸井&矢野コンビの新作として、大分前からライヴで演奏されていたものの、ポップ過ぎるせいか前作"akiko"には収録されず、どうなることかと思っていましたが、この作品に無事収録。歌詞の世界は、どこかで「SUPER FOLK SONG」の「村(ソン)」と地続きのような気がします。
「おとなが歌える歌」をテーマに宮崎駿氏がプロデュースしたアルバム「お母さんの写真」に収録されている曲です。同アルバムには矢野さんの作曲作品「「秋」」が収録されている縁でしょうか。
くるりのカバーが二曲入っているところに、矢野さんとの相性の良さが伺えます。先の「グッドモーニング」もそうですが、矢野さんが歌うくるりの曲は、歌詞の風景がありありと目に浮かんでくる気がします。
古くからの盟友、ムーンライダーズの曲。シビアな歌詞ですが、1990年代から矢野さんはライヴで取り上げていました。ついにレコーディング。
2009年、サンケイホールブリーゼでのリサイタルにゲスト出演し、その意外な顔合わせに驚かされた「フォークの神様」岡林信康氏の曲。力強さが溢れています。
アメリカのオルタナティブ・ロックバンド Weezerの1994年発売のデビューアルバム収録曲。
曲自体は、忌野清志郎氏が病を得る前から作り始められていたそうですが、氏の闘病中、ライヴで何度も歌われていた曲。当初は、最後の「雨上がりの夜空に」からの引用はありませんでした。清志郎氏が亡くなられてからこの最後のフレーズを聴くと、たまらないものがあります。
「友人が、家族の結婚式のために作った曲」という紹介で、歌われていました。今回、ライナーノーツを見てみると、"English Coach"としてJeff Mclean氏の名前が記載されています。
細美武士氏率いるインディーズ・ロックバンドの曲を、大胆にアレンジ。この曲がライヴで取り上げられたときは、そのアレンジだけでなく、日本のインディーズ・シーンにまで目を配る矢野さんの柔軟さに驚かされました。細美氏は、2009年、サンケイホールブリーゼでのリサイタルにもゲスト出演。因みに、彼が尊敬するバンドがWeezerだそうです。
"American Pie"でも知られるアメリカのシンガー・ソングライター Don McLeanの代表曲の一つ。画家のゴッホ(Vincent van Gogh)に捧げられた曲です。
アルバム録音前に、MySpace上で「矢野さんこれ歌って!」と題して、収録曲のリクエストを募った結果、採用された曲。元は、フジテレビの「ポンキッキーズ」で使われた歌です。
静岡県出身で、今では世界を飛び回って活躍する上原ひろみさんが、変わらぬ故郷への思いを込めた歌。まだ、矢野さんと直接の面識が無いときに、彼女の声質を念頭に作ったそうです。矢野さんも、昔からライヴで良く取り上げていました。
意外な選曲とアレンジ。これぞ、ピアノ弾き語りアルバムの醍醐味と言えそうな作品。オリジナルと違う軽やかな旅立ちは、「PIANO NIGHTLY」収録の、「椰子の実」を思い出させます。矢野さんの中で、旅というのは、とてもポジティブなものなのかもしれません。