IN/OUT (2020.12.27)

2020年、最後の更新です。


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「清水ミチコ BEST LIVE 2020 ~GoToメルパルク東京 with シミズ~」@メルパルク東京ホール20.12.26

清水ミチコのライヴを観に、メルパルク東京ホールに行ってきた。

恒例の年始の武道館ライヴは2021年にも予定されているのだが、その「追加公演」を先に演ってしまうという企画である。会場のメルパルク東京ホール(かつての「東京郵便貯金会館」の名前の方がしっくり来るな)は、清水ミチコが若かりし日、弟のイチロー氏と共にタモリの「ラジカル・ヒステリー・ツアー」のライヴで訪れ、「タモリのような、音楽と物真似とお笑いを融合した芸をやりたい」と誓い、プロを目指した思い出のホールということだ。

観客席は、完全な1席飛ばしではなく、2人連れの場合は2席連続の座席で、その両脇を一つ空けるという並びになっている。公演中も観客はマスクを付けたままで、声を出すことを控えるため、観客席からのリクエストを募るなどコール&レスポンス的な事が出来ない。それ以前に、声を出して笑うことも憚られる状況だ。お笑いの演者としてはやりづらいだろうと思うが、これがニュー・ノーマルである。私の座席は、舞台向かって左側の前方。ピアノを弾く手元が見える良い角度だ。

オープニングのビデオ・ネタは、当然「あの人」。そこは予想通りだが、笑いの切り口が流石だと思う。ご本人登場一発目は、ダンサー(光浦靖子の妹さん!)を従えた歌唱。ここから、一気に清水ミチコ・ワールド。

ステージ中盤には、ゲストのU-zhaanが登場。皆が知っている4拍子の歌を、5拍子や7拍子で演奏するというド・マニアックネタ。さらに、実弟イチロー氏も登場。偽矢野顕子・偽細野晴臣 & U-zhaanという、ある意味超豪華メンバーでの演奏。さらに、私の大好きな「Spain」ネタも演ってくれて嬉しい。この三人の演奏、ミュージシャンとしてのレベルが、ガチで高い。

定番「瀬戸内寂聴」ネタには、今年、大ヒットしたあの曲を絡めるなど、新しい工夫もたっぷり。「作曲法」には、今、大人気のあのバンドが新登場。終盤には「高輪ゲートウェイ」をこう使うか!という新ネタも登場し、つくづく才気溢れる人だと思う。こういうのがあるから、何度もライヴに足を運ぶのだ。


2020年を振り返る20.12.27

年明け早々は、中国のローカルな感染症程度に思っていたのが、全世界の人々の日常をすっかり変えることになってしまったCOVID-19。楽しみにしていたイベントが次々とキャンセルになり、旅行にも行けず、飲み会も無くなり、映画の公開スケジュールはガタガタに崩れ…。それでも、INが無かった訳ではない。

まず、印象に残った映画から。
2020年。最大の衝撃作。映画館の閉館騒動がなければ、あと数回は映画館に通いたかったほどハマったのが
「Midsommar」
この映画は、通常版ではなく、ディレクターズカット版を観るべきだ。
それ以外だと、

完璧な技巧に凄みがあった
「Parasite」

Terry Gilliamの集大成を見届けた
「The Man Who Killed Don Quixote」

見応えのある洒脱なミステリー
「Knives Out」

その撮影・編集技術に感嘆する
「1917」

本人には問題があるのかもしれないが、それでも、Woody Allenの作品は良いなぁと思った
「A Rainy Day in New York」

観る度に発見があり中毒性が高い大作
「TENET」

一見、色物的だが、中々良く出来ていた
「The Hunt」
などが印象的だった。

ライヴは、
1月30日の寺井尚子カルテット "The Precious Night 2020" @ ブルーノート東京
から、
7月3日の寺井尚子カルテット "The Precious Night 2020" @ ブルーノート東京
まで、丸5ヶ月間の空白があった。期せずして、どちらもブルーノートでの寺井尚子が区切りになった。再開後は、来日ミュージシャンの出演が無くなり、座席数もメニュー数も減ってしまったブルーノート東京には頑張っていただきたい。

そして、ブルーノート東京と言えば、今年、最も印象的だったライヴ・シリーズが、
"SAVE LIVE MUSIC" Hiromi ~Spectrum~@ブルーノート東京
"SAVE LIVE MUSIC" Hiromi ~PLACE TO BE~@ブルーノート東京
"SAVE LIVE MUSIC" Hiromi ~BALLADS~@ブルーノート東京
"SAVE LIVE MUSIC" Hiromi ~Since 2003~@ブルーノート東京
音楽的な凄さと楽しさ、この企画を実現した上原ひろみの侠気、そして、ディナーボックスに込められたブルーノート東京スタッフの熱意。本当に素晴らしい企画だったと思う。

美術館は、長く閉館時期が続き、その後も事前予約が当たり前になるという変化があり、あまり足を運ばなかったが、
「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」@森美術館
「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」@東京都現代美術館
の二つは、質・量共に、見応えがあった。

また、来年1月には閉館してしまう原美術館。
「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020 ー さまよえるニッポンの私」@原美術館
「HARA X 山田タマル サンセットライブ」@ 原美術館
「メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2018-2020」@原美術館
「光―呼吸 時をすくう5人」@原美術館
と、楽しむことが出来たが、来年、あの空間が無くなってしまうのは、つくづく残念である。今日は、恐らく最後となる原美術館訪問をし、最も印象深かった展覧会の一つ、「Nicolas Buffen : The Dream of Polifilo」の図録を売っているのを見つけて買ってきた。本当に、面白い企画が多い美術館だった。

あと、「007シリーズ」をまとめ読みして、映画とは違う魅力を新たに発見したり、「吸血鬼カーミラ」・「ドラキュラ」・「フランケンシュタイン」と、定番ホラーの原作をきちんと読んでみて、映画との差違に驚いたり、PC環境を一新したのは、COVID-19に伴う外出自粛のおかげとも言えるだろう。

そして、2020年。矢野顕子のライヴは、「さとがえるコンサート2020」「ブルーノート東京公演」「鎌倉芸術館公演」、の三本のみ。それぞれ、レベルの高いパフォーマンスではあったが、本数の少なさと地方遠征が出来なかったのは残念だ。来年こそは、新アルバムとライヴ・ツアーを是非楽しみたい。

ということで、楽しい事も沢山有ったし、1席飛ばしの観客席のゆったりさが快適になったり、ライヴを楽しんだ後に配信で復習できるのが嬉しかったり、人気の美術展でも激混みにならなかったりと、悪いことばかりでも無かったかな。



自分で付けるのも、人が付けているのを見るのも嫌いだったマスクにも、仕方なしに慣れてしまった2020年。特異な1年として記憶に残るのか、新しい時代への転換点として記録されるのか。とにもかくにも、来週は2021年です。