今回も、終始、的確なドラムスで、バンド・サウンドをしっかり支えています。矢野さん曰く、「皆さんも、バンドを組むときは、是非、彼をドラマーに」
矢野さんの一番最初のライヴで一緒に演奏して以来の仲。「これぞベーシスト」という矢野さん評。
矢野さんをして、「その手に触れた弦で、何でも弾ける」と言わしめる達人。
コロナ禍の2020年。さとがえるはNHKホールの1公演のみ(ただし、有料ライヴ配信も実施)。座席は一つ飛ばし。会場でのグッズ販売はなく、奇数列と偶数列で入場時間をずらすことが依頼されるという、異例の体制となったが、もちろん、開催されるだけで感謝である。
客入れの曲は Frank Sinatra(だと思う)。18時30分。ライヴ配信があるせいか、時間ピッタリにメンバー登場。舞台上、向かって左に置かれたピアノは C. BECHSTEIN。さらにKORGのKRONOSもセットされ、その隣がベース、続いてドラムス、右端がギターという配置は、このバンドの定位置だ。
「バナナ」「シチュー」と食べ物の歌 2曲を演奏し、最初のMC。ここで、感極まって涙が溢れる矢野さん。こちらも同じ気持ちだ。場内からも、半分の客の入りとは思えないほどの大きな拍手。そこから、バンドでやるのは久しぶりという「ふりむけばカエル」など、糸井重里作詞のナンバーが並ぶ。
「Paper Doll」は、このバンドで3年連続の演奏。歌唱パートよりも、長い間奏パートでの、小原礼のベースに乗せての各メンバーのプレイが渋くて熱い。矢野さんの迫力有るスキャットも飛び出す。
ここで、バンドの三人が退場。ソロで「PRAYER」。歌い出しの高音こそ危なっかしかったのだが、矢野さんの力強い想いが込められたような歌唱で押し切る。聴いているこちらも心が震える。
メンバーを一人ずつ紹介し、バンドメンバーが舞台に戻ると、今度は矢野さんが退場し、バンドだけで演奏するという趣向。このコンサートのための曲「H. O. S.」。タイトルそのままに、Hayashiさん、Oharaさん、Sahashiさんが奏でる骨太のロック・インストゥルメンタル。文句なしにカッコ良い。
着替えをした矢野さん再登場。舞台中央のスタンディング・マイクでの歌唱。昨年同様、鍵盤が客席の方に向いた角度でセッティングされたキーボード(立ったまま、手首が自然な角度で演奏できるという工夫)を弾きながら、2曲。「When We're in Space」の歌詞は、国際宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士が、作品を作ったときは6人だったのが、今は7人になっていることを反映し、歌詞を変えているとのこと。
ピアノの前に戻り、糸井氏作詞による新作披露。そして、「また会おね」。どの曲でもそうなのだが、この曲では特に、佐橋氏の器用さに感嘆。
アレンジが熟れてきたと矢野さん自身もおっしゃる「津軽海峡・冬景色」。最初は石川さゆりさんとの共演時の一発かと思っていたが、ライヴを重ね、見事に「他人の曲、矢野が歌えば矢野の曲」に育ったなぁと思う。
ここから鉄板曲の連打で本編終了。最後は、メンバー間のソーシャル・ディスタンスを保ってのご挨拶。
アンコールで登場した皆さん。来年は改修工事が予定されているため、さとがえるが出来たとしてもNHKホールには帰ってこられないということで、観客席をバックに記念撮影。そして、この公演実現に尽力したスタッフへの感謝の拍手の後、アンコール演奏。
今回は、場内でのグッズ販売が無く、生配信されているということもあってか、毎年の公演で恒例となっているグッズ紹介のコーナーや、グダグダになりがちな(それが楽しいのだが)おしゃべりが殆ど無かった。さらに、普段は結構アドリブで歌詞を変えたり言葉を足したりして歌うことが多い矢野さんが、ここまでは、(言葉が飛ぶことはあっても)オリジナルの歌詞通りに歌っている印象だった。久しぶりのライヴだったからかもしれない。しかし、最後の最後「GREENFIELDS」で「穴にズボッと落ちて」と歌ってから、歌詞の自由度が一気に高まり、感情のノリも一段階上がったような気がする。この演奏には、こちらも涙ぐんでしまった。
全ての演奏が終わり、ステージ前に集まったメンバー。本編終了時と同じく、ソーシャル・ディスタンスを保つのかと思いきや、林氏が手袋を配る。これで、メンバー全員、手を繋いでお辞儀という、恒例のスタイルでエンディング。Will Leeの「1-2-3」が流れる中、ブロック毎に規制退場。
かくして、丸一年ぶりの矢野さんのライヴ終了。ライヴ開催が決まった後も、感染の再拡大が騒がれるなどして、最後の最後までスタッフの皆さんの苦労は大変な物だったと思うが、見事に実現してくださって、本当に感謝である。そして、このバンド、どんな曲でも演奏できてしまう実力派だと、改めて思い知った。果たして、来年がどのような年になるのか全く分からないが、一つでも多くのライヴが開催され、そこに足を運べることを願う。