IN/OUT (2020.1.26)

QRコード決済のOrigamiが、メルカリ傘下のメルペイに買収されるというニュースに愕然としてしまいました。一応、時代の流れに乗っかっておくためにQRコード決済というのを試そうと思った時、私が選んだのがOrigami。使い勝手が良かったし、何より、国内ではこの分野で先陣を切ったスタートアップを応援したいという気持ちがあったのです。が、雨後の竹の子のようにIT系大手企業がこの分野に参入。私は、そうした後追い参入組を毛嫌いしているのですが、彼らが下品な還元競争を繰り広げた結果、資金力に劣るスタートアップ系は窮地に、という流れは、悔しい。けど仕方ないか…


in最近のIN

川井郁子 ~Passion in Blue~ @ブルーノート東京20.1.24

ヴァイオリニスト 川井郁子のライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。

日頃、クラシック系のミュージシャンの公演には足を運ばないので、いかにもハイソな方々が集ったという感じの客層や、著名人から贈られたロビーの花など、この日のブルーノート東京の雰囲気には、結構、気圧されてしまう。

バックを務めるのは、弦楽四重奏、ピアノ、ウッドベース、和太鼓、パーカッション。曲によっては、さらにバンドネオン、尺八、ヴォイス(インド出身のteaというシンガー)が加わるという、和洋混在のメンバー。そこに、クラシック系のヴァイオリニストらしい風情のドレスに身を包んだ川井郁子。

「アランフェス協奏曲」、ヴィヴァルディの「四季」から「夏」で演奏が始まり、Édith Piafのシャンソンの数々、Astor Piazzollaの”Libertango”、Irving Berlinの”Puttin' on The Ritz”(我々世代には、タコの「踊るリッツの夜」だ)、Michel Legrandの映画音楽、チャイコフスキーの「白鳥の湖」、Holstの"Jupiter"と、殆どが知っている曲だ。それらを、川井郁子がアレンジしているのだが、いずれも耳障り良く聴くことができる。そこに、巨大な和太鼓の低音や、尺八の音色、女性ヴォイスが加わると、もはや、ニューエイジ・ミュージックの趣さえある。そして、当たり前だが、彼女のヴァイオリン演奏は、とても上手い。

川井郁子の自己陶酔に浸りきったような演奏する姿も、いかにもクラシックの一流奏者という感じだ。正直、このスタイルでニューエイジ調の音楽となると、個人的には苦手意識もあるのだが、間近でライヴを観ると、説得されてしまうという感じだ。


”The Man Who Killed Don Quixote”20.1.25

Terry Gilliamの新作を観てきた。邦題は「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」。

Terry Gilliamは、Monty Pythonのメンバーで、主にアニメーションを担当していた(私は、名作スケッチ ”The Spanish Inquisition”での、彼のとぼけた演技も大好きだ)。その後、映画監督に転身。”Brazil”や、”Twelve Monkeys”などで高い評価を得、熱狂的な支持者がいる一方で、そのマニアックな作風から、メジャーには成り切れないという感じもある。そんな彼が、30年前から企画し、2000年に撮影を開始したものの、度重なるトラブルで制作中止。その後も、何度も企画を再始動するものの、トラブルが多発し、その度に制作は中断。呪われた映画とまで言われていたが、それらを乗り越え、ついに2018年に完成にこぎ着けたのが、この作品だ。しかし、権利関係の問題で、日本での公開は、ようやく2020年に入って実現。Terry Gilliam好きにとっては待ちに待った公開である。

映画の冒頭"and now"の文字が出てくるのにニヤニヤしながら鑑賞開始。主人公は、Adam Driverが演じる大物CM監督。スペインの田舎での撮影中、彼が学生時代に撮影した”The Man Who Killed Don Quixote”のロケ地が近くにあることに気づき、CM撮影の合間にその村を再訪してみる。しかし、10年前に村人達を起用して撮影した学生映画は、彼らの生活を変えてしまっていた。清楚な少女は女優になると村を飛び出し、ドン・キホーテを演じた靴職人の老人は、自分のことを本物のドン・キホーテだと信じている。そして、再訪した主人公をサンチョ・パンサだと思い込んだ老人は、彼を無理矢理、騎士の冒険の旅に連れ出す。というストーリーだ。

ただし、そこから先のストーリー展開も、演出も、俳優陣の演技も、全てが狂っている。途中までは、映画制作がここまで迷走せず、彼が若い内(Terry Gilliamは現在79歳)に完成していれば、もっと良い作品になっていたかもしれないのに、結局、失敗作になってしまったのか、という気がして、眠気すら襲ってきた。しかし、そもそもこの話は、気が狂った老人の妄想に引っ張り回される主人公の受難を描いているわけで、現実と狂気が多層的に入り交じった世界を描いているのだ。全てを現実として捉えるというつまらない見方を拒否する作風で、まさに、Terry Gilliamらしい映画だということに気づく。そして、ラスト近くでは、不覚にも感動してしまう展開となる。結果、大満足だ。

配給会社は、予告編で「全世界、賛否両論。欧州絶賛。一方、北米酷評」と煽っているが、確かに、観る人によって、評価が両極端に分かれる作品だと思う。そういった評判も含め、まさにTerry Gilliamの集大成と呼ぶにふさわしいカルト作品だ。



どうも、私が思い入れを持って選んだ商品やサービスは、大抵、競争に敗れ去る。Windows Phone然り、Gateway 2000などのPCメーカーの数々然り。ビデオもベータ派だったし、腕時計は太陽電池では無くKINETIC(自動巻き方式の発電)。古くは、エルカセットなんてのもあったなぁ…