IN/OUT (2020.4.5)

週末の人気が減った繁華街の様子がニュースで流れていますが、報道すべきは、平日のいまだに混み合うオフィス街の方だと思う今日この頃です。


in最近のIN

007まとめ読み20.4.5

外出自粛も、いよいよ深刻度が高まってきたこの週末。新しいINネタも乏しいので、ここ数ヶ月読んでいる007シリーズについて。

最近、クリスティー、クイーン、カー等々、翻訳古典ミステリの再読にハマっていたのだが、Kindle化されているものは読み尽くした感じになり、これまで映画でしか観たことが無かったイアン・フレミングによる007シリーズの原作に手を出してみることにした(因みに、007の映画シリーズ最新作 "No Time to Die"は、COVID-19問題の影響で4月公開の予定が11月に延期となってしまった)。

第一作「カジノ・ロワイヤル」が発表されたのは1953年。今読むと、いかにも時代がかった雰囲気が漂うが、意外にハードボイルドな印象で悪くない。同時に、2006年公開の映画"Casino Royale"が、原作を尊重した脚色だったことが良く分かる。小説は三人称での記述ではあるが、実質一人称と言えるほどジェイムズ・ボンドの視点で描写されていて、生身の人間としてのボンドが息づいている。

しかし、原作小説は、第2作「死ぬのは奴らだ("Live and Let Die"の翻訳タイトルとして秀逸)」から、一気に、中二病気味の通俗スパイ小説になっていく。敵に捕らえられたボンドが、美女と一緒に縛られて珊瑚礁の海を引きずり回されるなんて、本当にに中学生の妄想レベルだ。さらに、フレミングの生前に出版された最後の作品「007は二度死ぬ」になると、ボンドの宿敵が密かに日本に渡り、福岡の古城に、毒のある植物や毒蛇、ピラニアなどを集めた庭園を作るという設定。そこには、日本中から自殺志願者が集まってくる。なんと、ボンドの宿敵は「死」をコレクションにしているのだ!そして、このトンデモ庭園に、日本人に変装した英国人スパイが乗り込むという荒唐無稽さが炸裂する…(因みに映画版"You Only Live Twice"は、日本を舞台にしている点が共通している以外、原作とはかけ離れたストーリーだが、荒唐無稽さは似たり寄ったり。丹波哲郎率いる忍者部隊が大活躍する珍作だ

それでも駄作とは言い切れない、何かしら惹きつける魅力があるのが、このシリーズ。一冊読むと次々と手に取ってしまう(何故かAmazonでは「ムーンレイカー」と「ダイヤモンドは永遠に」の二作がKindle化されていないのが難)。原作者 Ian Flemingが、自ら生み出したJames Bondに深い愛着を抱いているのが伝わってくるのだ(シリーズ物のミステリーを書く作家の多くに共通していると思う)。時代が時代なのでスパイ活動はローテクだし、今なら非難で炎上しそうな女性の描かれ方など問題もあるが、映画版とはかなり違う手触りのスパイ小説は、読む価値十分だと認識する引き籠もり生活である。



このCOVID-19禍。少しでも早く終息してもらいたいものですが、単なる一過性の災いではなく、その後の世界中の人々の意識や行動様式を確実に変えることになる一大事象となりそうです。