IN/OUT (2020.2.2)

暖冬というか、日の光の雰囲気など、すっかり春になったような気候だと思う今日この頃です。


in最近のIN

寺井尚子カルテット "The Precious Night 2020" @ ブルーノート東京20.1.30

ヴァイオリニスト 寺井尚子のライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。先週の川井郁子がクラシック系のヴァイオリニスト。今週はジャズ系である。これまでも寺井尚子のライヴは何度か観たことがあり、先にこの公演を予約したのだが、その際、一週間前にクラシック系のヴァイオリニスト(お二人の年齢も近い)の公演もあるということで、聞き比べを狙って川井郁子の公演も予約したのだった。

バックは、北島直樹(ピアノ)、古野光昭(ベース)、荒山諒(ドラムス)。王道のジャズ・トリオを従えたカルテット編成。最初の一音を聴いたところで、先週の川井郁子のヴァイオリンとの音色の違いに驚いた。アコースティック楽器としての音色は、川井郁子の方が圧倒的に深く、美しい。さすが、クラシック系と言うべきか。

しかし、パフォーマンスとなると、私としては、断然、寺井尚子派だ。オリジナル曲、シャンソン「枯葉」、ピアノの北島直樹の作品など、どれも秀逸なジャズ・アレンジ。寺井尚子だけで無く、ピアノ、ベース、ドラムス、それぞれに見せ場があるところも楽しい。そして、寺井尚子のヴァイオリン演奏は、川井郁子の自己陶酔型のスタイルとは全然違う。「どやっ」と言わんばかりの弓使いに、姐御感が漂い、文句なしにカッコ良い。

演奏曲の中では、「誰も寝てはならぬ」(歌劇「トゥーランドット」の、というか、荒川静香でお馴染み)と、私にとって寺井尚子と言えばこの曲、Chick Coreaの”Spain”が圧巻だった(ただ、”Spain”を聴くと、清水ミチコの日本語詞バージョンを思い出すようになってしまったのは、困った…)。アンコールで演ったPat Methenyの"James"も好演。

と言うことで、先週の客層に感じたアウェイ感もなく、今後も、寺井尚子は積極的に聴いていこうと思うのだった。


”Knives Out”20.2.1

Daniel Craig主演のミステリー映画を観てきた。邦題は「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」

高名なミステリー作家が、85歳の誕生日パーティーの翌日、遺体で発見される。自殺と思われたが、Daniel Craigが演じる名探偵の元に、匿名の調査依頼が届く。屋敷には、莫大な遺産を狙う、一癖も二癖もある家族達。監督兼脚本のRian JohnsonがAgatha Christieに捧げたというだけに、舞台設定は、いかにも古き良き本格ミステリーの趣だ。

名探偵が、関係者に質問を重ね、彼らが抱えている秘密を暴きつつ、真相に迫っていくという展開も、本格ミステリーっぽい。しかし、Daniel Craigが果たして名探偵なのか、迷探偵なのか、だんだん怪しくなってくる。さらに、重要な役割を担う登場人物が、嘘をつくと必ず嘔吐してしまう特異体質という、およそ本格ミステリーではあり得ない設定になっているのが、効果的に活かされていて、楽しい。

クライマックスの、大時代がかった探偵の謎解きを、笑いを交えて描写することで、現代風に仕上げているが、笑いの要素だけで無く、細かい伏線もしっかり仕込んであり、ミステリーとしての完成度も高い。遺産を狙う大家族に看護婦と家政婦と登場人物が多く、医療ミス疑惑も絡めた謎も凝っているが、それらをスッキリと観客に示す演出が冴えている。

主演のDaniel Craigだけでなく、Chris Evans(007とCaptain Americaの対決映画なのだ)、Jamie Lee Curtis、Christopher Plummer、Don Johnson、Toni Collette(Gwyneth Paltrowに喧嘩を売っているような役柄に大笑い)など、錚々たる名優が演技合戦を繰り広げているのも見所だ。もっとも、看護婦役のAna de Armas嬢が、美味しいところを全て持って行ってしまうという感じもある。

良い人が、ちゃんと良い人だったという後味の良い終わり方も含め、とてもクオリティの高い映画だ。



有り難いことに、スギ花粉は、まだ本格的には飛散していないので、花粉症に悩まされない春という雰囲気が味わえる貴重な時期という感じです。