IN/OUT (2021.1.3)

帰省することが当たり前だった年末年始。流石に今年はそうも行かず。今の住まいで元旦を迎えるのは初めてかも。


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"SAVE LIVE MUSIC RETURNS" Hiromi ~PIANO QUINTET~ @ ブルーノート東京20.12.28 / 21.1.1

8月から9月にかけて、コロナ禍に苦しむライヴ業界のためにと、16日間・32ステージの"SAVE LIVE MUSIC"を自ら企画し実現させた上原ひろみが、再び、新たな3種の企画で18日間・36公演に挑む。その第一弾公演の初日 1st Showを観に、ブルーノート東京に行ってきた。

このシリーズは「PIANO QUINTET」。上原ひろみのピアノと弦楽四重奏(西江辰郎(1st ヴァイオリン)、ビルマン聡平(2nd ヴァイオリン)、東条慧(ヴィオラ)、向井航(チェロ))の共演。上原ひろみが以前から温めていたという異色の編成だ。ジャズ・ピアニストと、クラシックの弦楽四重奏(しかも、4人とも超一流)がどのような化学反応を起こすのか興味津々で、初日1st Showと最終日(1月4日)の 2nd Showを押さえたのである。なお、前回の"SAVE LIVE MUSIC" では、まだ自粛モードが色濃く残っていたせいか楽勝で良席を取れたのだが、今回のチケット争奪戦は熾烈を極めた。

収容人員は減ったままだが徐々に通常営業に戻りつつあったブルーノート東京。しかし、ここに来て、急速にコロナ感染第三波が勢いを増したため、席の並びは、皆、前を向く教室形式に逆戻り。食べ物の提供も無くなってしまった。一方で、開演前、前回と同じく場内に「映画泥棒」まがいのお楽しみビデオが流れるのが嬉しい。

舞台は、向かって左にYAMAHAのグランドピアノ。右に弦楽四重奏。弦楽四重奏のメンバーは、皆、クラシック畑のプレイヤーらしい正装で登場。一曲目はひろみ嬢の既存曲のアレンジだが、そこから、自粛期間中に作曲したという組曲を披露。初日の1st Showということは、世界初演の場に立ち会えたということだ。光栄である。これまで例の無い編成で、まったく予想のつかない展開な訳だが、ひろみ嬢は、ソロと変わらず、唸り、中腰になり、右足を蹴り上げ、鍵盤を引きちぎる勢いの高速プレイに、拳打ち・掌底打ち・肘打ちを繰り出しまくりの圧巻の演奏。一方、弦楽四重奏組も、通常の弓弾きにピチカート奏法とテクニック全開。特にチェロは、ジャズのウッドベース的な演奏も展開しつつ、ピアノとの息はピッタリ。ひろみ嬢の渾身のソロと完璧なタイミングでシンクロするストリングス。プロ・ミュージシャンのカッコ良さを遺憾なく発揮する5人が、凄過ぎて楽し過ぎる。

その楽しさに圧倒されている内に本編終了。アンコールは、この公演のオリジナルTシャツを着てひろみ嬢が登場し、ソロで演奏を始め、途中から、やはりTシャツを着用した四重奏メンバーが舞台に現れ共演するという趣向。

観たことも無い凄いものに立ち会えたという興奮で、直ちに1公演の追加にトライ。ラッキーなことに元日の公演を予約できた。ブルーノート東京は、席が売り切れていても、電話するタイミングが合えば、後ろのバー・カウンター前の臨時席を取れることがあるのだ。

ブルーノート東京 と言うことで、元日のブルーノート東京へ。この席は、配膳作業の邪魔になる場所なので、開演5分前にならないと入場できないという制約はあるが、ピアノの左斜め後方の、鍵盤を弾く手元が見える角度で、しかも、全体も俯瞰できる、とても良いポジションだ。なお、元日公演は来場者全員に限定の「枡」のプレゼント付き。

演奏は、2回目という事で、私も余裕を持って観ることが出来る。初日に比べると、激しさはやや抑え気味(昼間、時差を利用してNew Yorkに向けたカウント・ダウン演奏のライヴ配信を行っていた影響もあるのかもしれない)という気がする。その分、弦楽四重奏組の演奏に楽しさが増しているようだ。それにしても、この組曲「Silver Lining」(「Isolation」「The Unknown」「Drifter」「Fortitude」の4楽章で構成)は、ピアノだけで無くストリングスの魅力も見事に引き出した名曲だと思うし、(彼女の作品に良くある)プログレッシヴ・ロック・ファンにもアピールする作品だと思う。プレイヤーとしてだけでなく、作曲家としての才能も凄い人だ。

アンコールの演奏前には、お正月ということで「鏡開き」(ただし、時節柄、会場からの掛け声は無し)、そして「お年玉抽選会」(1名にワイン・ボトルをプレゼント)というお楽しみもあり。

結果的に、昨年のライヴ締めと今年のライヴ初めが、どちらも「上原ひろみ ~ピアノ・クインテット~」となり、幸先の良い2021年のスタートである。


「清水ミチコ BEST LIVE 2021 ~GoTo武道館 with シミズ~」@日本武道館21.1.2

日本武道館清水ミチコのライヴを観に、日本武道館に行ってきた。

恒例となっている新年の武道館公演。昨年は、東京オリンピックの準備のため非開催だったのは皮肉だが、おかげでトイレなどすっかり綺麗に改装されている。

入場時は、顔検知式の体温測定と手のひらでの体温測定の二段階検温が実施されているが、直射日光が当たる屋外のせいか、測定トラブルが続出。列のさばきなども、正直、段取りが悪い。この日の午前中、東京都が政府に緊急事態宣言の発令を求めるという状況で、ギリギリの運営で大変だったのだろう。観客席は、1席飛ばし。換気に気をつけているせいか、結構、寒い。私は、2階席前方、やや右寄りのポジション。

15分押しの16時15分開演。先週のメルパルクホールでの「追加公演」で予習済みのネタばかりだが、オープニング映像を会場毎に作り込む丁寧さが流石である。武道館の大きな舞台を意識した大きめのアクションとゆったりした進行。特に、U-zhaanのソロがたっぷりなのが嬉しい(インドのタブラの達人の物真似など、誰にも分からないような人を喰ったネタ付き)。5拍子/7拍子ネタでは、会場の手拍子を参加させるなど、過去の「追加公演」でのフィードバックを取り入れたような工夫が巧く働いている。「歌詞付き Spain」の演奏の出来が非常に良かったのも印象的だ。それにしても、清水ミチコとU-zhaanのプロ組はともかく、素人ダンサーのアキコさん(光浦靖子の実妹)とイチロー氏(清水ミチコの実弟)の素人お二人も、武道館の大舞台に全く動じていないのが凄い。まあ、イチロー氏は姉・ミチコのライヴの常連なので、セミ・プロと言えるかもしれないが、退場時に細野さんのステップを真似るという小ネタも挟む堂々たるステージだ。

他にも、「松任谷ユーミソの新曲(PVには松尾スズキ登場)」、「勝手に作った中島みゆきの新曲」、「瀬戸内寂聴 × 瑛人『香水』」ネタ、「作曲法」、「JR東日本協力:高輪ゲートウェイ」など、何度観ても爆笑だ。清水ミチコ、つくづく才人である。

最後に、偽・小池百合子が、この公演の模様が2月6日にWowowで放送されるという告知を行って全編終了。例によって、規制退場。確かに、いつもの武道館ライヴの終演後だと激混みになる田安門あたりも歩きやすい(収容人員が半分というのもあるが)。今年の笑い初めも、無事、終了である。



三が日が明けて、4日が月曜日というのは、会社員には効率的なカレンダー配列だと前向きに考えて明日に臨むとしましょう。