矢野顕子 リサイタル2023〜ピアノ弾き語り〜


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button スケジュール

公演日会場
8月27日(日)狛江エコルマホール
9月7日(木)浜離宮朝日ホール
9月10日(日)神戸朝日ホール
11月13日(月)鎌倉芸術館小ホール
11月17日(火)日経ホール

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button 8月27日(日)/ 矢野顕子LIVE 〜ピアノ弾き語り〜@狛江エコルマホール

buttonセットリスト

  1. CHILDREN IN THE SUMMER
  2. わたしのバス(Version 2)
  3. 音楽はおくりもの
  4. 魚肉ソーセージと人
  5. 春咲小紅
  6. ひとりぼっちはやめた
  7. ニットキャップマン
  8. LOVE LIFE
  9. 雲を見降ろす
  10. 潮騒のメモリー(天野春子(小泉今日子) / 連続テレビ小説「あまちゃん」劇中歌
  11. 千のナイフ(坂本龍一 / 後にYellow Magic Orchestraもカヴァー
  12. ひとつだけ
アンコール
  1. 中央線
  2. ラーメンたべたい

buttonレポート

狛江エコルマホールでのライヴは、2011年、14年、19年に続いて4回目だと思う。このホールでの公演は、通常の製作パターンの「リサイタル」ではなく、このホール独自で企画しているようで、ホール・スタッフの熱意と手作り感のようなものが感じられるのが心地よい。

ピアノはSteinway。椅子はコクヨのingLIFEピアノ演奏用特注バージョン。客入れの音楽は、冨田勲の「イーハトーヴ交響曲」だと思う。

演奏は、つい先日まで行われていたブルーノート東京でも1曲目だった「夏休みの子供」。音が鳴った瞬間、ヴォーカルのPAの良さに驚いた。ピアノの響きもナチュラルで、とても聴きやすい音響バランス。ブルーノート東京でのトリオ演奏のようなギミックがない分、素直で伸び伸びとしたパフォーマンスだ。2曲目「わたしのバス(Version 2)」での気合いの入った歌唱からも、矢野さんの調子の良さがうかがえる。

最初のMCで、このホールが駅から近い事を誉めた後、前回の公演ではまだ発売されていなかった「音楽はおくりもの」から、さらに2曲。そこからは、懐かし目の選曲と、工夫されたセットリストだ。特に、(矢野さんは、明言こそしなかったが)今年の2月に逝去された岡田徹氏を偲んでの演奏と思われる「ニットキャップマン」は、やっぱり良い曲だなぁとしみじみ(矢野さんは、糸井重里の詞を「いつまで経っても、映像が目に浮かぶ」と評していたが、恐らく、今の若い観客は「常田富士男」と聞いても、あの風貌は思い浮かべられないのでは?

「君に会いたいんだ、とても」からは「雲を見降ろす」をチョイス。このアルバム、確かに良い曲揃いだなぁ。

ここで、コクヨの椅子について、如何に腰痛に優しく、ピアニスト向けかを熱弁した後、コールされた次の曲は、まさかの「潮騒のメモリー」。2013年度上半期の朝ドラの劇中歌だ。当時、視聴していなかった矢野さんは、その再放送を、今まさに、現在進行形で追っかけ中。いかにハマっているかを語った後、歌われたカバーは、まさに矢野マジックをかけられた「潮騒のメモリー」。今回が、人前では初披露との事だが、素晴らしい出来だったし、今後、さらに、定番曲に育っていくかも、という伸び代も予感させる。

サプライズの選曲は続く。「ブルーノート東京でのトリオ演奏の曲だけど、一杯練習したので、みんなにも聴いて貰いたい」と言って始まったのは「千のナイフ」!これが、弾き語りライヴで聴けるとは!! トリオ演奏よりも、スキャットで歌われる主旋律の存在感が増しているが、曲が進むにつれ、ドンドン熱量が高まるのは、弾き語りでも同じ。というか、1人で、これだけ表現できてしまうとは、恐るべきテクニック。そして、何より、この曲を演奏することへの矢野さんの熱意に感涙。そして、ブルーノート東京と同様、これで高まったテンションを、その後の「ひとつだけ」でクールダウンするところまでが、ワンセットだ。今日の「ひとつだけ」も素晴らしいパフォーマンスだった。

アンコール。矢野さんは、「中央線」と「ラーメンたべたい」の二択を観客に提示するが、反応は当然「両方!」。ということで、2曲をシームレスに続けて歌い、中央線に乗ってラーメンを食べに行ったということで、全編終了。楽しかった!

都心からやや離れた狛江市というロケーションで、ある種、手練れのお客様が多く集まる、キャパ 728席という手頃なサイズ感のホール。そこでの4度目の公演ということで、矢野さんのリラックス加減も丁度良い感じだったと思う。エコルマホールが、鎌倉芸術館とはまた違う雰囲気の「特別な弾き語り会場」になって行きそうな気がした。是非、定例化をお願いしたいところだ。

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button 9月7日(木)/ 矢野顕子 リサイタル2023〜ピアノ弾き語り〜@浜離宮朝日ホール

buttonセットリスト

  1. CHILDREN IN THE SUMMER
  2. 夏なんです
  3. そりゃムリだ
  4. David
  5. SOMEDAY
  6. 音楽はおくりもの
  7. ドラゴンはのぼる
  8. 雲を見降ろす
  9. 春咲小紅
  10. 潮騒のメモリー(天野春子(小泉今日子) / 連続テレビ小説「あまちゃん」劇中歌
  11. 千のナイフ(坂本龍一 / 後にYellow Magic Orchestraもカヴァー
  12. ひとつだけ
アンコール
  1. GREENFIELDS
  2. ラーメンたべたい

buttonレポート

会場は、朝日新聞東京本社の新館2階にある客席数552席のホール。備え付けのSteinwayの響きと会場自体の音響の良さに定評があり、この場でのリサイタルも恒例になってきた。Steinwayの前には、例によってコクヨのingLIFEピアノ演奏用特注バージョン。

演奏は、先日の八ヶ岳高原音楽堂の初日と同じ選曲でスタート。このホールのSteinwayは、特に高音の透明感が綺麗だと思う。そして、ヴォーカルは、スッピンのような素直なPA。やはり良い音響のホールだ。

しみじみとした「David」の後、久しぶりに演るということで入念にストレッチをして「SOMEDAY」。佐野元春氏の原曲も、矢野さん版も、大好きな曲だ。それにしても、秀逸なアレンジである。唯一、個人的に気になったのは、この曲の時の照明が赤だったこと。矢野さんのライヴでは、通常、曲に合わせて控え目ながら巧みな照明が良い感じを増幅してくれるのだが、私のイメージでは矢野さん版「SOMEDAY」は、赤じゃ無いんだよなぁ…

この夏の公演では、「君に会いたいんだ、とても」の収録曲を披露するのが定番になっている。本日は「ドラゴンはのぼる」と「雲を見降ろす」。カッコ良し。

「春咲小紅」の後、10年遅れのマーメイドである矢野さんが再放送にハマっている「あまちゃん」のことを熱く語り「潮騒のメモリー」。狛江での初演から、まだ4回目の演奏なので、アレンジが流動的とのこと。試行錯誤を繰り返しながらも、熟成度は高まってきているように思う。

そして、そのままピアノをポロポロと弾きながら、MC無しに「千のナイフ」の演奏になだれ込む。この夏の公演でずっと採り上げてきた「千のナイフ」。そのソロ・バージョンが、ついに完成形に!と思わせるパフォーマンスだ。特に、スキャットへの感情の乗せ方が素晴らしかった。そして、「ひとつだけ」で本編終了。アンコールに「GREENFIELDS」と「ラーメンたべたい」という鉄板構成で全編終了。もう、後半の流れ、完璧である。

いよいよ、2023年の矢野顕子納涼夏祭りも残すところ僅か。東京での公演を締めくくるのにふさわしい好演だった。

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button 9月10日(日)/ 矢野顕子 リサイタル2023〜ピアノ弾き語り〜 @神戸朝日ホール

buttonセットリスト

  1. CHILDREN IN THE SUMMER
  2. 夏なんです
  3. そりゃムリだ
  4. David
  5. 音楽はおくりもの
  6. 魚肉ソーセージと人
  7. 野ばら奥田民生
  8. ニットキャップマン
  9. ドラゴンはのぼる
  10. 雲を見降ろす
  11. 春咲小紅
  12. 潮騒のメモリー(天野春子(小泉今日子) / 連続テレビ小説「あまちゃん」劇中歌
  13. 千のナイフ(坂本龍一 / 後にYellow Magic Orchestraもカヴァー
  14. ひとつだけ
アンコール
  1. GREENFIELDS
  2. ラーメンたべたい

buttonレポート

2023年夏の最後の公演。会場は、神戸・三宮の旧居留地、神戸朝日ビルの4階にある神戸朝日ホール。2023年8月にリニューアル・オープンしたばかりのホールで、キャパ 505席。最後列がM列=13列ということで分かるとおり、客席が横長なのが特徴的。ピアノはSteinway。その前には、コクヨのingLIFEピアノ演奏用特注バージョン。客入れの音楽は冨田勲。

この夏の弾き語りシリーズ定番の選曲でスタート。ピアノの音色がとてもクリアで綺麗だ。矢野さんの歌唱も丁寧な感じ。出だしから絶好調だと感じる。矢野さんのMCによると、この横長の客席が心地良い。新しいホールは、どこも「多目的」を意識した縦長だが、この幅の広さが、丁度、両手を拡げた感じで気分が良いとのこと。さらに、この会場のピアノは、矢野さんが日本で最高のホールの一つだと思っている(改装前の)大阪フェスティバルホールにあったピアノだそうだ。改装時に、朝日新聞社つながりで、こちらのホールに移設されたのだろう。なるほど、素晴らしい音の訳だ。ちなみに、このホールの横幅は、改装前のフェスティバルホールと同じだという。

ということで、どの曲も、矢野さんがとても気持ち良くプレイしていることが伝わってくる。矢野さんが込めた感情を、レスポンス良くピアノが受け止め、高め合っている感じだ。

「魚肉ソーセージと人」では、ソーセージ・メーカーから何のコンタクトも無かったなど、リラックスした感じのMCも良い感じ。一方、「ドラゴンはのぼる」の前のMCは、例によって宇宙熱が溢れる饒舌ぶり。改めて考えると、この曲、矢野さんがここまでシャウトする歌唱は珍しいと思う。それも、宇宙熱があればこそ、かな。

今週、「あまちゃん」再放送は、ちょうど震災を描いた回。10年遅れでハマっている矢野さんは、「クドカン、流石!」とのご感想。そして、5回目の披露となる「潮騒のメモリー」。「そろそろ、未完成と言い続けるわけには行かない」と自らハードルを上げての演奏だったが、表現力の高い、見事な完成度だった思う。後で、この日の演奏をのんさんに送るそうだ。

そして、この夏の弾き語りシリーズ、最大の山場。今回も、説明抜きで演奏になだれ込んだ「千のナイフ」。先日の浜離宮朝日ホールでの演奏が完成形だと思っていたのだが、それを遥かに凌駕するとてつもないパフォーマンスだ。終盤のスキャットとピアノは、鬼気迫ると言えるほどの入り込み方。こちらの涙腺も決壊である。いやはや、本当に凄かった。そして、それをクールダウンするような「ひとつだけ」への流れ、完璧である。

アンコール。まずは、コクヨの椅子について語る。この、ingLIFEピアノ演奏用特注バージョンは、この後、コクヨに送られ、さらにバージョンアップする予定らしい。そして始まった「GREENFIELDS」も凄かった。ピアノと歌唱の一体感がすさまじい。その勢いのまま「ラーメンたべたい」で全編終了。

これが、2023年の矢野顕子納涼夏祭りの最終公演だった訳だが、最後に極めて高い完成度のパフォーマンスを見せていただいた。とにかく、ピアノが良く鳴るし、それと一体化した矢野さんの歌唱も見事。ブルーノート東京の平日公演に参戦できなかった無念さは十二分に晴らせたのである。

そして、早くも冬の来日シリーズが楽しみだ。果たして、さとがえるバンドでの「潮騒のメモリー」や「千のナイフ」はあるのだろうか?

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