2014年3月26日発売
VICL-64141 / アナログ盤(LP) JSLP038 / VICTOR STUDIO HD-Music.、e-onkyo music、moraにてハイレゾ配信有り
Produced by 矢野顕子
デビューアルバム「JAPANESE GIRL」収録曲のセルフ・カバー。1976年の電話線は黒電話につながっていましたが、2014年の電話線はインターネットを通じてサイバー空間へ拡がっていると感じさせるトラックは、自ら志願してこの曲に取り組んだというsasakure.UK氏によるもの。原曲を聴きこんでいたのが分かるアレンジです。
アルバム・タイトル曲は、疾走感溢れるサウンドと、まさに「飛ばした」歌詞。カッコ良すぎ。AZUMA HITOMIさんの才気爆発。そして、そのトラックを見事に消化する矢野さん。素晴らしいコンビネーションです。
オフコースのカバー。このアレンジは、yanokamiで演ろうとしてハラカミさんに却下されたものだそうです。AZUMA HITOMIさんのトラック曲の後に、自らアレンジしたトラックを持ってくるところに、矢野さんの自信が溢れているようです。それにしても、このGiorgio Moroderばりのサウンド、中毒性が高い。
テンションが高い音が続いた後に、ほっとするMATOKKUサウンド。絶妙の配置。シングルで聴いたときよりも、アルバムの中で、この曲順で聴いてこそ、光る曲だと感じます。
矢野さんとテクノと言えば、昔からのファンなら思い出すのはYMOとの共演(っていうか、初めは、矢野さんのバックで演奏してましたからね)。彼らのワールド・ツアーで話題になった曲を21世紀に蘇らせるのは、YMOチルドレン代表、砂原"マリン"良徳。まさに、期待に応えてくれるサウンドです。「Home Girl Journey」での弾き語り版も良かったけど、やっぱり、このアレンジは燃えますね。
当初のタイトルは「ごはんができたよ 2」だったそうです。矢野さんが作ったほかほかご飯に、sasakure.UKさんの優しい味付けのおかずが寄り添っているような雰囲気です。
「ISETAN-TAN」は、伊勢丹を私のデパートと呼ぶ矢野さんによる「勝手応援ソング」でしたが、今回は、正式に伊勢丹から依頼されたオフィシャル・ソング。本物の伊勢丹社員が踊るPVも製作されました。
このアルバムの中で、一番の異色作にして、尖った曲だと思います。単なるテクノじゃなくて、もっと泥臭さ・汗臭さを感じさせるサウンドは、Marc Ribot's Ceramic Dog。Marcさん、「akiko」や、ブルーノートでの共演の時以上に、自分の色を出してきたようです。
ちょっと昔のハリウッド映画音楽のような趣がある美しい旋律。sasakure.UKさんのアレンジは、それをストレートに押し出しています。実は、UAさんに提供しようとして没になった曲が元だそうですが、我々からすれば、矢野さんの作品にこの曲が加わることになって、幸運。
吉田美奈子さんに提供した曲のセルフ・カバー。みずみずしさ溢れる曲だと感じます。この曲を提供した時、矢野さんは21歳。そして、アレンジしたAZUMA HITOMIさんは現在26歳。このみずみずしさは、38年の時間を超えてシンクロした若い女性の感性なのでしょうか。
アルバムのラストを飾るのは、BOOM BOOM SATELITTESによる、壮大なスケール感を覚える、力強いサウンド。最後にこの曲を聴くと、このアルバムが、様々なトラック・メーカーを起用しながらも、矢野さんのプロデュースで見事に一体感のある構成になっていることを実感します。