後半 6公演に行くことができました。
その他、メールで教えていただいて判明したセットリストも掲載しておきます。
誤りのご指摘や追加情報等あれば、送っていただけると助かります。
地区 | 公演日 | 会場 | ゲスト |
---|---|---|---|
兵庫件 | 2010年4月16日(金) | 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール | 岡林信康 |
京都府 | 2010年4月18日(日) | 磔磔 | - |
愛知県 | 2010年4月20日(火) | 三井住友海上しらかわホール | - |
福島県 | 2010年4月22日(木) | 大和川酒蔵 北方風土館 | - |
山形県 | 2010年4月23日(金) | 山形郷土館・文翔館議場ホール | - |
宮城県 | 2010年4月25日(日) | 七ヶ浜国際村 | - |
東京都 | 2010年4月26日(月) | 東京国際フォーラム ホールC | 奥田民生 |
2010年4月27日(火) | 細美武士 | ||
香川県 | 2010年4月30日(金) | 高松テルサ | - |
広島県 | 2010年5月1日(土) | 広島クラブクアトロ | - |
福岡県 | 2010年5月3日(月) | イムズ・ホール | - |
神奈川県 | 2010年5月8日(土) | 神奈川県立音楽堂 | - |
* は、奥田民生氏と共演
ツアーも中盤。「音楽堂」と呼ぶには味気ない東京国際フォーラムだが、ゲストを招いての公演は、ほぼ満席のようだ。舞台の上には、立花ハジメ巨匠によるオブジェが吊されている。
演奏が始まって、矢野さんの声とピアノの調子、そしてPAの良さと舞台の響きに驚いた。二週間前のヤマハホールでの演奏とは、完成度が桁違い。ヤマハホールでは実験的と感じたアレンジや奏法を、見事に仕上げてきたという感じだ。どの曲も、極めてレベルの高い演奏が続くが、やはり前半の白眉は「きよしちゃん」だろう。本当に深い清志郎氏への愛が詰め込まれているようだ。
そして、「野ばら」の演奏に続いて「作者の奥田民生さんです」という紹介で、奥田民生氏がアコースティック・ギターを抱えて登場。この、カバー曲を演って、ご本人登場という流れは、かつてのジァンジァンを思い出させる。もっとも、ジァンジァンでは、ゲストがシークレットだったので、毎回、嬉しい驚きがあったのだが、今回はゲストが事前告知済み。チケット販売の都合もあったのだろうが、ちょっと残念ではある。
二人の、日頃の仲の良さが感じられるトークの後、息もぴったりの共演が三曲。どれも、民生氏のギターを活かしながら、バンドのピアニストのように絡む矢野さんのピアノとコーラスが絶妙。これこそ、ソロ公演では観られない、矢野さんの魅力的な側面だ。そして、2000年のジァンジァン最終公演で強烈なインパクトを残し、もう、その再演は観られないかと思っていた「大迷惑」。ツアー途中の一度だけのゲストとの共演のために、この難曲にチャレンジしてくださったお二人の心意気、さらに、その演奏の見事さに、感動。
奥田民生氏退場後も、そのテンションを維持したまま、怒濤のラスト三曲。二人揃って登場したアンコールでも、息のあった「股旅(ジョンと) 」を披露し、その勢いを引きずったかのような超ノリノリの「いい日旅立ち」で、すべて終了。
「リサイタル」や「出前」と銘打たれた弾き語り公演では、どちらかといえばリラックスした演奏が楽しめることが多いと思うが、今回は、弾き語りでありながら、エンターテインメントとしての完成度が非常に高かった。隙の無いピアノ演奏と歌唱。ゲストと互いに高め合ったようなテンション。いつもより、二倍・三倍と、満足度の高い好演だった。
* は、細美武士氏と共演
東京国際フォーラム二日目。ツアー中盤で、しかも前日の大熱演の後のせいか、冒頭、滑舌の調子が悪いように感じたが、演奏が進むにつれ、かなり挽回されたようだ。
ゲストは、花形満風の髪型(レコーディング中で髪型を気にしておらず、当日、美容室に行こうと思っていたら火曜の定休日だったとのこと)の、細美武士氏。矢野さんとは、昨年のサンケイホール以来の共演。まだ、矢野さんとの付き合いが短いからか、お人柄か、昨日の奥田民生氏のような爆笑トークとはならず、かなり噛み合わないトーク。共演一曲目の「When I Die」も、相当緊張していたようだ。しかし、二曲目、細美氏自身が大好きだというWeezerのカバーで、全開モードに。さらに、三曲目、自身のバンドの曲がカッコ良かった。矢野さんを完全にバックにまわし、彼らしい完全洋楽テイストの英語曲を歌い上げる。ステージ上の挙動にも初々しさが感じられ、旧友・奥田民生氏との共演とはまた違った印象のステージだった。また、ご本人退場後に 「この曲の作者も細美さんです」と、「右手」を演奏されたのも、昨日とは逆のパターンだ。
アンコール一曲目も細美氏との共演。関東初演となる共作を披露。レコーディングもあるかも、という矢野さんの話に、本当に嬉しそうに反応する細美氏が、やはり初々しい。
ということで、ゲストとの絡みが昨日とは対照的だったが、それ以外でも、矢野さんの歌い方やピアノ・アレンジが、かなり違っていたように思う。昨日は、完成度の高さが際立っていたが、今日は、歌唱もピアノ演奏も、意識的に崩した変化球的なものが多かったように感じた。これはこれで、面白いライヴだった。
会場の高松テルサは、市の中心部から少し離れたところにあり、高松駅前からは一時間に一本のバスしか公共交通機関が無い。県外者には、いささか難しい場所だった。「高松勤労者総合福祉センターホール」というお堅いところだが、こぢんまりしたホールは、クラシック仕様の中々立派な物である。会場の入りは、残念ながら半分強といったところだろうか。
掴みのMCは、やはり「うどん」の話題から。今日は、歌詞の間違いが多いと感じたが、ピアノ演奏の方は好調。特に「In her Family」の演奏が印象的。また、これまでは力強さが前面に出ていた「嘆きの淵にある時も」が、優しさを強調したアレンジになっていたような気がする。毎回、何かしらアレンジを変えてくるところが、さすがだ。「右手」も、今日はいつも以上に印象的な演奏だった。
アンコールの冒頭では、「やもり」による日清製粉のCMソング「ただいまの歌」を、軽く演奏。CMではオンエアされていない部分も歌ってくれた。また、この夏は、「やもり」だけでなく「yanokami」も再始動するとのこと。ブルーノート東京でのAkiko Yano Trioも加えると、本当に様々なタイプのミュージシャンとの共演を、平行して行うことになる訳で、改めて、その音楽性の深さとチャレンジ精神には感服する。「股旅(ジョンと)」の切れ味も鋭く、良い演奏が続いただけに、最後まで歌詞の間違いが多かったところだけが、残念ではあった。
今日は、ライヴハウスでの公演。フロアにパイプ椅子が並べられ、後方は立ち見というレイアウト。基本的にはスタンディングを想定しているライヴハウスなので、ステージが高い。最前列からだと、演奏者を見上げるような感じになる。巨匠・立花ハジメのオブジェは、二個はステージ上に収まりきらず、「椅子(座面がレコード。一番上は「羅生門」)」、「ブナの木にガラスの帽子」、それとアンコールで輝きを放つ「A」の三個が設置。このオブジェとピアノがあれば、ライヴハウスだって「音楽堂」なのである。
二曲目「へびの泣く夜」で手拍子を打つ人が出現。ちょっと気になったのだが、「変わるし」でも手拍子が。と、ここで矢野さんが曲を中断し、「無理してやらなくていいですから。最後までやるには、リズムが難しいから」。さらに「自分の能力に応じて…」と追い打ちをかけるような発言(これは、後で「自分の能力というのは、自分自身に向けた言葉でした」とフォロー)。矢野さんの弾き語りに手拍子は合わないと確信している私は、我が意を得たりという思いだ。
これで、自身へのハードルを上げたのか、その後の「変わるし」の演奏は、いつも以上に変幻自在のアレンジになっていて、観客としては嬉しいハプニングになった。さらに驚いたのが、「久しぶりに演るので不安です」と言って始められた「電話線」。基本はオーソドックスなアレンジなのに、今日までのツアーの積み重ねが現れているような新鮮さがあり、素晴らしい出来だった。
MCも、今日は好調。先日の「大迷惑」が大変な演奏だったという話(やっぱり!)や、「きよしちゃん」で歌われる「ブーツ」のところでは、いつも笑い出しそうになるという話。これは、2005年のさとがえるで、ゲスト出演された清志郎さんが履いていたアップルグリーンのブーツのことらしく、その側面に「ブーツ」と書かれていたのを思い出すとのこと。さらに、アンコールで登場した時には、今日の移動で乗ったマリンライナーでのニワトリ事件(指定席からの眺めが悪い上に、トイレの前にニワトリが入った謎の段ボールが!)が面白おかしく語られる。こういう長めのMCが、グダグダにならずに最後まで語られるというのは、矢野さんのコンサートでは希有のことだと思う。
ということで、今日のパフォーマンスは、これまで私が観てきたツアーの中でも、突出して素晴らしかったと思う。国際フォーラムの一日目の完成度の高さも凄かったが、今日は、小さな会場ならではの親密感とテンションの高さの両立が、本当に素晴らしかった。演奏は、ピアノに挑みかかるような攻撃的な印象があり、歌唱の緩急の付け方も絶妙。久々の「電話線」は嬉しいサプライズだったし、「いい日旅立ち」の切れ具合も最高。また、ツアーを通して言えることだが、PAがとても良い。ピアノも歌声も、とてもクリアに響く。これを、様々な大きさの会場毎に、見事に調整しているところが、プロの技だ。ツアーも残りわずかとなってきたが、様々なものが蓄積され、かつ、熟成されて来ているようだ。本当に、今日はすごかった。
この日は、どんたく当日。IMSの目の前が「お祭り本舞台」で、ものすごい人手だ。外が、喧噪の祝祭空間と化していても、ホールの中は「音楽堂」。ここは多目的ホールのようで、平らなフロアに、常設では無い椅子が461席、並べられている。また、後方に、少しだけ立ち見スペースも設けられていた。
天井が他のホールより低いためか、ハジメ巨匠のオブジェがいつもよりよく見える。ここで判明したのが、「穴の開いた金属板」にリモコンがくっついていること。さらに、「焦げた板」は、なんと、1993年の、やはり立花ハジメ氏が美術を手がけた「LOVE IS HERE」のツアーで使われた舞台美術を再利用したものだそうだ。
矢野さんが、このホールで演るのは2006年のさとがえる以来だそうだが、その時の演奏が、ご自分でも印象的な好演だったそうで、今日も期待、との、ご本人の弁。
果たして、その言葉通りの演奏だ。出だし、滑舌がやや心配という感じがあったのだが、ピアノ演奏の方は、全く隙無し。どの曲も、特に間奏のダイナミックさが聞かせる。「変わるし」のさらに変幻自在となったアレンジ。広島よりもさらに凄いことになっている「電話線」。たっぷりと聞かせる「Say It Ain't So」。好演奏の連打である。
MCでは、ホテルの窓の下で、どんたくの練習をしていると思しきブラスバンドが、「Smoke on the Water」を演奏していたのが気になったと言うことで、ピアノで軽く、あのフレーズを弾いたのが、楽しかった。ただ、今日は、MCの方はかなり少なめだったと思う。
ラストの「いい日旅立ち」まで、ピアノ演奏は、私が聞いてきた中でも、最高の完成度だったと思う。ツアーの積み重ねの中で、声の方は、どうしても体調などに左右されるところがあるみたいだが、こと、ピアノに関しては、新しい試みも消化しながら、どんどん研ぎ澄まされていくようだ。もはや、天井知らずという感じすら覚えた今日の演奏だった。
ツアー・ファイナル。「音楽堂」のレコーディング現場である神奈川県立音楽堂での公演。期待を抱き、紅葉坂を上り会場へ。座席の窮屈さが、いかにも昔の建物という風情のホール。開館は1954年11月。矢野さんと、ほぼ同級生である。開演前の場内には、いつも通り、War(1970年代に活躍したファンク・グループ)の曲がかかっている。
一曲目で、その音響の良さに納得。ここを録音場所に選んだ吉野金次氏、さすがである。その響きの良さは、5曲目の演奏前に、矢野さん自ら、ピアノを手慰み風に弾きつつ「あーっ、良い音!」と浸りきるほどだ。演奏も、それに負けず、素晴らしい。これまでのツアーで培ってきたものを出し切りながらも、気負ったところもなく、軽やかで有ると同時に奥深いピアノと歌唱が続く。
9曲目の前に「今回のツアーでは毎回ゲストに来てもらっています」との発言に、一瞬「?」となったが、ここでいうゲストとは忌野清志郎氏のことだった。「では、歌ってもらいましょう」と言って始まった「恩赦」、そして「きよしちゃん」。胸に迫る演奏だ。
MCも絶好調。広島で食べたオコゼの外観を「ウルトラQに出たきたガラモン」と例えるところ、以前の「ショッカー」や「花形満」発言を思い出し、矢野さんの意外な嗜好を知る。また、スタッフから事前に手渡される進行表を見せてくださるというサービスもあったのだが、そこには「MCを挟みながら自由に進行します(曲目は一切未定)」と書かれてあるだけ、という件に場内大笑い。その大らかな進行のなか、瞬時の判断で的確な効果を演出する照明の久保さんに、場内から拍手という一幕も。
完成度の高い演奏が続き、最後まで、テンションもクオリティも下がることは無い。「さあ冒険だ」では、「犬に道をきけば」の後のアドリブが見事に膨らまされていて、本当に楽しくなってくる。そして、アンコール。「詰まるところ、私も音楽堂です」との矢野さんの語りに拍手。最後の「いい日旅立ち」は、これまでよりさらにアグレッシブに崩したアレンジで、その自由奔放さは、圧倒的な破壊力と切れ味だ。
かくして、ツアー終了。ツアー後半の演奏を続けて聴くことができたが、回を追う毎に高まっていくクオリティには、驚嘆させられた。そして、最後に、この素晴らしい会場で、今回のツアーの良いところが凝縮されたような、充実の演奏を堪能でき、大満足である。個人的に心配していたTV収録が入ることによる悪影響も感じられず、また、ツアーの疲労も伺えず、本当に見事なツアー・ファイナルの演奏&歌唱だった。
横溝さん、りりさん、ありがとうございました。