夏の四公演中、パルテノン多摩、そして、冬の鎌倉に行くことができました。
誤りのご指摘や追加情報等あれば、送っていただけると助かります。
2013年 春のツアーも弾き語りだったが、あれは、新アルバムに合わせた構成のしっかりしたコンサートだった。そのため、私にとって、自由な弾き語りのライヴは、これが、今年初めてだ。会場は、1997年のさとがえるで訪れて以来かな。あの時のさとがえるトリオの演奏が物凄かった印象があり、今日も期待大である。
出だしの「Dreaming Girl」は、割にしっとりした入り方かな、と思う。5曲終わったところで、「Dreaming Girl」は、9.11のテロ事件の翌日がレコーディングで、こういう前向きな詞になったという話や、「ME AND MY SEA OTTER」製作の背景(高野寛さんが作曲ということは、すっかり忘れていたそうだが)など、丁寧に曲の解説が入るところが、リサイタルらしくて楽しい。
「プレゼント」は、こういう場では初演。キーを探りながらの歌い出し。低めに始まってしまったようだが、見事に軌道修正。続く「いい子だね」では、ヒールで床を打ち付けるのも楽器の一部のような演奏。上原ひろみさんと出会ってから、こういう奏法が増えたような気がするが、すっかり矢野さん自身の個性の一部になったと思う。
フジファブリックの曲は、初披露だと思うが、矢野さんによく似合った曲だった。今後の定番化と、さらなる深化に期待だ。
「リラックマのわたし」は、『だららだららら』のところを、会場とご一緒に、のパターン。うまくまとまってました。
元々の構想では、ラスト前にあと一曲ということだったようで、矢野さんから会場に「次は、『電話線』と『中央線』のどっちが良いですか?」の問いかけ(『線』つながりだったのは偶然だったみたい)。どちらも人気曲なので、当然、真っ二つに割れる会場。『中央電話線!』『電中線!』などの声も飛び交い、頭を抱えた矢野さんだが、これは、訊くのが悪いと思います。結局、二曲とも演ってくださって、皆、満足。
本編ラストは「Rose Garden」。ホント、この曲は、演奏のたびに変化があって、いつもいつも、楽しく、興奮するな。
アンコールはお馴染みの二曲で、全編終了。矢野さん曰く、「演奏者を乗せてくれるピアノ」の音色が後半から加速度的に良くなった感じ。会場の音響も良く(このホールから、車で三分ぐらいのところにお住まいと紹介されていた、ベテランPAオペレーターN氏のおかげかな)、楽しいコンサートだった。
年末恒例、冬の鎌芸。今年も、一曲目のピアノとヴォーカルの響きを聴くと、つくづく音の良い=矢野さんの弾き語りと相性の良いホールだと感じる。
一曲目から、好演が続いたのだが、驚いたのは四曲目「Sleep on my baby」。これをピアノ弾き語りで聴けるとは!カッコ良い演奏でした。続いては、鈴木茂氏の「デビル・ゲーム」という珍しい曲。彼が1976年に発表したソロでのセカンド・アルバム「LAGOON」収録曲だ。作詞は、松本隆氏。
今年のブルーノート公演で演奏した「With You in Mind」や、夏のリサイタルで演奏した「Bye Bye」など、今年初めて聴いて、今後も定番に育っていって欲しいと思っていたカバー曲を演奏してくれたり、以前は良くライヴで取り上げていた「OVER」を久しぶりに演ってくれたり。定番曲がほとんど無く、矢野さんが今、本当に演奏したい曲をストレートにぶつけてきたという印象の選曲が続く。そして、どれも、このホールのピアノの響きと、それに引っ張られるかのような矢野さんの演奏で、素晴らしい出来。
ラストは、まさかまさかの「悩む人」。複雑かつダイナミックなピアノが熱い。ライヴで聴いたのは、1998年のさとがえる以来だと思うが、隠れた名曲だと実感。マニアックな選曲の本編の後、アンコールが鉄板の二曲という構成も良かった。
矢野さん自ら「毎年、ここで名演が生まれるというのが定説」と語っていたが、まさにその通り。他会場とは一味も二味も違う演奏が繰り広げられ、大満足である。一年の締めの鎌芸。今後も、是非、続けて欲しいと熱望。