春〜夏の三公演中、相模大野に、そして12月の鎌倉に行くことができました。
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2012年夏のライヴ、一本目(矢野さん自身も、そのことを意識していたそうだ)。グリーンホール相模大野はほぼ一杯の客の入り。場内のPAが中々良い感じで、色艶には乏しいが、とてもクリアな音響で、ピアノとヴォーカルのバランスも良かった。
久しぶりのライブということもあってか、演奏の後、ピアノの上に置かれた楽譜をめくりながら次に演る曲を考える時間が、いつもより長い。ご本人曰く、3,500曲のレパートリーから選んでいるとのこと。前半の白眉は「SOMEDAY」。かなり崩した演奏と歌唱だが、歌詞に込められた想いがダイレクトに響いてくる感じだった。
公衆の面前で演るのは初めてという「コニャラの歌」、久しぶりの鈴木祥子さんの曲などバラエティーに富んだ選曲で良い演奏が続くが、さらに一段、スイッチが入ったと感じたのが「いい日旅立ち」の後半から。ピアノとヴォーカルが一体となって、一気にテンションが上がった気がする。その流れのままラストの「GREENFIELDS」。元々好きな曲だが、今日の演奏はキレが良く、本当に素晴らしかった。
アンコールは定番二曲。「ひとつだけ」の後半は「会場の皆さんもご一緒に」パターン。良い時間を会場全体で共有できたライヴだった。
冬の鎌倉の風物詩、矢野顕子リサイタル@鎌倉芸術館である。毎回、他会場とは一味違う演奏が楽しめるホールだが、今年は特に素晴らしかった。さとがえるが、清水ミチコさんとの共演という変化球で、それはそれで楽しかったのだが、個人的にはどこか不完全燃焼感が残っていたのだが、それも完全に払拭なのである。矢野さんご自身も、打ち合わせされた構成があったさとがえるから一転、自由な演奏を楽しまれたのではないだろうか。
出だしから、かなり崩し気味の演奏が続く。三曲目の久々の「ラッコ」の中盤、自由奔放な間奏を聴いて、今日は凄いことになりそうだと期待が高まる。「この一年、どれだけちゃんと練習してきたか、このピアノに測られているようだ」と語っていたが、やはり、このホール、そしてこのピアノの響きは、矢野さんにとっても特別なのだろう。
夏のBlue Noteで聴いた「Full Moon Tomorrow」。「多摩蘭坂」から戻る瞬間が、涙腺を刺激するポイントで、本当に良い曲だと思う。早く、レコーディングされないかなぁ。
これまで聴いたことが無いアレンジで披露された「ニットキャップマン」。曲の途中で、「失敗した!」と中断が入った「SOMEDAY」。楽しい演奏が続く。因みに「SOMEDAY」は、一旦演奏を止めて、どこが駄目だったのか検証。「文字数が多い」と、こぼしながら演奏再開。結果的には転んでも只では起きないということに落ち着いた。やっぱり、鎌倉芸術館のライヴは楽しいなぁ。
ラスト近く、清志郎さんの二曲辺りになると、ピアノの迫力が桁違いにスケールアップしていく。そして、アンコール一曲目は、来年公開の映画「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」にも採り上げられた「PRAYER」。これも良い演奏・良い歌唱で胸に染みる。
この日最大のサプライズにして、今年の最後を飾る最高の演奏が、アンコール二曲目だった。耳に馴染みのイントロで「青い山脈」の演奏がスタート。切れの良いピアノが響く。と、途中から「いい日旅立ち」と渾然一体となった演奏になり、最後はアヴァンギャルドでアグレッシブなピアノと歌唱で、もう大興奮なのである。この二曲を組み合わせるのは、コンサート直前に思いついたということだが、これだけ攻撃的な演奏を仕掛ける矢野さんを見るのは久しぶりだ。カッコ良すぎ。圧倒的破壊力のある音に打ちのめされる感覚を、最後に味わえて、もう、大満足なのである。