三公演中、米原と鎌倉に行くことができました。
誤りのご指摘や追加情報等あれば、送っていただけると助かります。
公演日 | 会場 |
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12月4日(金) | 春日井市民会館 |
12月6日(日) | ルッチプラザ ベルホール310 |
12月24日(木) | 鎌倉芸術館小ホール |
会場は、近江長岡駅から徒歩10分ほど。周囲に何もない所にある市民交流のための複合施設だ。上空から見ると、ホタルの形をしているらしい。開場までの時間を隣の図書館で潰せるのが、意外に快適。ホールは縦長の小規模な物だが、状態の良いスタインウェイのピアノがあり、音響も素直で好感が持てる。会場はほぼ満席。日曜日の16時開演という、ちょっと遠くからの人でも来やすい時間設定のおかげもあるのだろう。
一曲目「横顔」で、いきなり舌を噛む矢野さん。今日は、舌の回りが悪く歌詞が怪しくなるところが多く、声も少しかすれ気味のようだった。また、マイクとの相性があまり良くなかったような気がする。
最初のMC、第一声が「こんにちは、矢野顕子です」。「こんばんは」じゃ無いところが、新鮮だ。周囲がホタルで有名という話から、ニューヨークにもホタルがいるなど、リラックスした多めのMCが楽しい。その合間に、加藤和彦氏の「ニューヨーク・コンフィデンシャル」や「きよしちゃん(ラストに「雨上がりの夜空に」の一節も)」を丁寧に歌う姿が印象的だ(曲に関するコメントは無し。そこがまた、絶対音楽家、矢野さんらしいと思う)。
喉の調子がいまいちかと感じた分、盛り上げる部分ではいつも以上に声量を上げて押し切っているような雰囲気があり、「変わるし」、「股旅(ジョンと)」、「Rose Garden」などアップテンポの曲では、すごい迫力が感じられたのが、逆に良い効果になっていたと思う。それにしても「Rose Garden」には、毎回、驚かされるなぁ。
そして、久しぶりに聴いたアンコールの「また会おね」が、泣ける名演。全体としては、来るさとがえるへの試運転、という感じもあったが、良い公演だった。終了は17時半頃。
日曜昼間のNHKホールでのさとがえるコンサートが無くなって久しいが、たまにはこういう時間帯の公演も良いものだと、つくづく思った。遠くからも行けるし、終演後にも余裕があるし。是非、このような機会も増やしてもらえれば、と思う。
ピアノの音色とホールの響きが美しく、名演となることが多い鎌倉芸術館。1曲目の「BAKABON」から、その期待通りの安定感のある演奏だ。さらに3曲目「しまった」の白熱した演奏は圧倒的。金沢のベーゼンドルファーに対する丁寧なタッチとは違い、旧知の仲のピアノとの信頼感が感じられるようなプレイで、今日が仕事納めの矢野さんの気合いがみなぎっている。
しかし、4曲目「自転車でおいで」では、喉の調子がいまいち。どうも、この会場内の空気が乾燥しすぎているようだ。私も、喉の痛みとドライ・アイの悪化を感じていた。そのせいか、後半になると、演奏の方も、やや調子を落としてしまったような印象がある。
しかし、MCの方は好調。前日のファンクラブ・イベントの話から、のど飴の話題(まさか、大地真央の物真似が出るとは!)、音楽堂の話に、清水ミチコさんの新作の話題。「彼女(清水ミチコ)は矢野顕子になれるけど、私は清水ミチコにはなれない」との名言も。
丁寧な調律を施された素晴らしいピアノということで、インストゥルメンタルが披露されるのも鎌倉芸術館ならではのお楽しみ。今回はシューマンの「子供のためのアルバム」の有名曲。そして、ラストの「ラーメンたべたい」が凄かった。アヴァンギャルドに再構築されたアレンジが切れまくっていた。
アンコールで登場した矢野さん。「ラーメンたべたい」の演奏で全精力を使い果たしのか、「『GREENFIELDS』を演ろうと思ったけど、気力が無くなっちゃった。頑張らなくて良い曲ってなんだろう」と、客席にまさかの問いかけ。リクエストに応え「中央線」に決めたものの、歌詞カードが見つからず、そのまま見切り発車。結果、二番の冒頭の歌詞が出てこないというアクシデント。まぁ、楽しかったので、結果オーライではある。
そして、最後は「ひとつだけ」を会場みんなで歌うことに。前日、ファンクラブ・イベントの最後に全員で歌って盛り上がったのを踏まえての趣向だと思うが、あの場は、百数十名のコアなファンばかりだったので、おそらく、8割以上の人が歌詞を完璧に覚えていたんじゃないかと思う。それに比べると、やはり一般コンサートだと、歌詞を覚えている人の密度はぐっと低くなる訳で、一番と二番をごっちゃにしている歌声も多い。これまでも何度かあった企画だが、個人的には、いつも、ちょっと無理を感じてしまう。
いずれにしても、このホール、やはり素晴らしい音響だった。それだけでも、鑑賞の楽しさ、倍増である。