金沢に行くことができました。
誤りのご指摘や追加情報等あれば、送っていただけると助かります。
12月16日(水) | 沖縄県那覇市 パレット市民劇場 |
12月17日(木) | 沖縄県南城市 シュガーホール |
12月19日(土) | 石川県金沢市 金沢21世紀美術館 シアター21 |
12月20日(日) | 新潟県長岡市 長岡市中之島文化センター |
当日は、大雪の悪天候。幸い、矢野さんを乗せた飛行機は、無事、着陸出来たそうで、この日のMCでは「けっこう、着陸出来るものなのよ。ただし、パイロットの気合いによるらしいけど」とのこと。会場は、金沢21世紀美術館の地下ホール。現代美術を集めた、白い円形の特徴的な建物で、その展示も充実していて、地方美術館としては異例の集客を誇っているという。
開演前。出前だからしょうがないとはいえ、スタッフの段取りが悪い。開場の一時間前に行ってみたのだが、並ばせ方や、客からの問い合わせに対する対応がちぐはぐ。とりあえず、整理券を配ってくれたのは良いのだが、この日、入場は、金沢21世紀美術館友の会会員が優先。ということは、長時間並んで、せっかく若い整理券番号をもらった人でも、開場ギリギリに駆けつけた友の会会員よりも後回しにされてしまう。私の前にいた人は、友の会に入っているのに、今回は矢野顕子ファンクラブの方を通じてチケットを取得したらしく、結果、彼らの整理券番号は一桁、しかも友の会会員なのに、50名以上の(友の会を通じて購入した)会員が入場した後に、入る羽目になっていた。美術館が主催するのだから友の会を優先するのは当然だとは思うが、釈然としない。
さて、開場。ホールのキャパは、182席。さすがに満席。客席の傾斜がきつく、果たして音響がどうなのか、やや心配な造りである。この日のコンサートは「ベーゼンドルファーを弾く Vol.12」と題されている通り、この会場のハウス・ピアノを弾く一連のシリーズの12回目。このピアノは、金沢市観光会館で使われていた後、倉庫にしまわれてしまっていた1960年代製のベーゼンドルファーを、オーバーホールしたものということだ。
10分遅れぐらいで、矢野さん登場。最初の音が響きだした瞬間、ホールの音響への心配は杞憂だったと分かった。とにかく、素晴らしい響きだ。ベーゼンドルファーの特徴だという柔らかな音色、透明感のある響きは、今まで聴いてきたピアノとは確かにひと味違う。その音色を活かすべく、矢野さんのプレイも、とても柔らかいタッチで丁寧に弾きこなしているという感じ。さらに、そのクオリティの高いピアノ演奏に引きずられるように歌唱の方も素晴らしく、ここ最近の弾き語りの中でも屈指のできだと、一曲目から確信。その確信は曲毎に強まるばかり。これまでのライヴでは、個人的には乗りきれなかった「いい子だね」が、今日はずしんと響いてくる。
ピアノの音色の話(矢野さんの最初のピアノはKAWAI)、さとがえるの話(リハーサルはニューヨークで英語で行ったため、本番で日本語で歌うとき、歌詞がごっちゃに)、飛行機の話、音楽堂の話(ジャケットは、岩合光昭氏によるギリシャの猫)、吉野金次さんの闘病の話など、MCの方は出前にありがちな、よく言えばリラックスした感じで続く。
本編ラストの「Rose Garden」、いつも以上に間奏が長い。響きの柔らかさと透明感を感じたベーゼンドルファーだが、このようなダイナミックな曲でも、ピアノの長所を見事に引き出していく矢野さんのプレイ。本当に素晴らしい。アンコールでは、「『変わるし』とどっちがいい?」と会場に問いかけて、結局「ごはんができたよ」になったのだが、私としては、今日のこのプレイの延長でどんな「変わるし」が聴けたのか、そちらの方に興味があっただけに残念。
矢野さん本人も「どんなピアノでも、その状況に応じてベストを尽くすのがプロ」というようなことを言われていたが、やはり、良いピアノを前にすれば、それだけプロ魂に火が付くのだろう。後半、やや疲れが見えた感もあったが、それでも今日の公演でのピアノの響きと歌声の調和は、申し訳ないが、米原でのリサイタルと別次元の高みに達していたと思う。
シュガーホールのセットリストは、チャコさんに教えていただきました。ありがとうございます。