2000年4月をもって閉鎖される渋谷ジァンジァンでの最終公演。最終日に行くことができました。そのレポートとセットリストです。
* は、槇原敬之さんと共演した曲。
アンコール* は、奥田民生さんと共演した曲。
あまたの名演奏が繰り広げられてきたジァンジァンにおける矢野顕子公演。そのラストを飾るにふさわしい、素晴らしいライブだった。
一曲目、「Tong Poo」から、いきなり飛ばす飛ばす。鋭い切れ味のピアノと、力強いボーカル。リズムを取る左足の音がダイレクトに聞こえてくるのも小スペースならではの迫力だ。本人も
「最後まで持たないかも」
と言うほどの力の入りよう。
もちろん、そこはジァンジァン。「BAKABON」を歌った後には、天才バカボンの名場面集が頭の中を走馬燈の如く駆けめぐったらしく、しばらく思い出し笑いが止まらず、ついには「バカ田大学校歌」まで口ずさみ、さらに笑いが止まらなくなるという、リラックスした雰囲気もあり。場内はすっかり「矢野家の居間」状態。
ゲストは、最初で最後の登場となった奥田民生氏。MCでは、矢野さんの毒舌(?)に民生氏が飄々と応える良いコンビネーションを見せていたが、演奏でのコンビネーションはさらにそれ以上。おなじみ「すばらしい日々」では、ワンコーラス目を矢野さんがリードする矢野アレンジで、後半は、矢野さんが伴奏に回ってユニコーン調で、と一曲で二倍おいしい構成。そして白眉は、ご本人達も
「なんでこんなに大変な曲を…」
と苦笑していた難曲、「大迷惑」。お二人とも、まさにノリノリ。民生氏のボーカルとギターに絡む、矢野さんのピアノとコーラスが絶妙。格好良く、力強く、楽しく、もちろん二人のテクニックにしっかり裏打ちされた、まさに名演。演奏後、場内に鳴り響いた拍手の音は、とてもキャパ200人の小屋とは思えない盛大なものだった。
その後も、最後までテンションが落ちることなく演奏は続いた。ご本人は
「実感がまだ無い」
とおっしゃっていたが、これで最後のステージとなるジァンジァンに対する矢野さんの思い入れが伝わってくる。
アンコール終了後も鳴りやまぬ拍手に再度登場した矢野さんは、ご挨拶のあと、ステージ上から場内の様子を写真撮影。
「ジァンジァンは、私の家の居間の延長」
「そこに親しいお友達を招いて、食事をしたりしているうちに興が乗って一緒に歌おうか、ということになる。そんな感じでゲストもお呼びしたい」
ジァンジァン公演の雰囲気は、まさにこの矢野さんの言葉通りのものだ。そして、矢野家の居間に招待されているのは、ゲストミュージシャンだけでなく、観客もまた、ご一緒させていただいている。この、濃厚で親密な場が失われてしまうのは本当に惜しい。しかし、最後に、これだけ凄い演奏を聴かせていただけて、今はただ感謝である。
深澤さん、馬場さん、綾塚さん、竹内さん、ありがとうございました。