IN/OUT (2004.12.26) |
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日本に行くと、日本人の集団性というのを強く意識します。コンサートで、アンコールの拍手が自然に一定の手拍子に収束するなんて、日本にいるときは当たり前だと思っていたけど、最近では、なんだか異様に感じます。もちろん、シンガポールでも、カントリー・ライン・ダンスが流行ったりして、「みんなと一緒」ということに快感を覚えるというメンタリティはあるのですが、それでも個人の快感を優先する気持ちが大きいように思います。私も、当地のコンサートでの、勝手放題の拍手、叫び声、口笛、足踏みが飛び交うアンコールの方が、今では爽快だと思う。スポーツの応援なんかにも言えますね。 逆に、エスカレーターの片側を急ぐ人のために空ける、ということが自然にできたり、待ち行列が自発的に形成されたり、という点は、近年、当地の状況も大分改善されてきたとはいえ、日本並みになることはあり得ないだろうなぁ、という気がします。 最近のINAna Caram Quartet "Hollywood Rio Asia Tour 2004 Live in Singapore" (04.12.21)ブラジルの、ボサノヴァ / ジャズ系シンガー、Ana Caramの公演を観に、Esplanade Concert Hallへ行ってきた。なお、この日の観客席には、ブラジル大使も来ていたようだ。 ほぼ定刻、ステージ上に、ピアノ、ウッド・ベース、ドラムスの三人が出てきて演奏を始める。Ana嬢の歌声も聞こえるが姿が見えない。ほんにあなたは… と思いきや、前方左手の客席でワイヤレス・マイクを持って歌う彼女にスポットライトが当たった。おもむろに立ち上がると、観客にしばし愛想をふりまいてから、ステージに上がる。ステージ上でも余裕溢れる所作で、さすが1958年生まれのベテランである。一瞬、ライヴハウスでアルコール片手に聴いた方が似合う演奏かと思ったが、なかなかどうして、じっくりと聴き応えのあるステージだ。 最新作「Hollywood Rio」で取り上げたBurt BacharachやLennon-McCartneyの作品、ボサノヴァのスタンダード曲など、耳に馴染みのある曲も多い。予想以上に歌が上手いし、一曲披露したフルートも大したものだった。後半はギターを弾きながらの歌唱だったが、ギター演奏もなかなかのもの。そして、ピアノ、ベース、ドラムス、皆、上手い。相当のテクニシャンが勢揃いしたステージだが、ソロの掛け合いでも過熱することなく、クールに盛り上がるのが、ボサノヴァ風ジャズ。日が落ちた熱帯の、涼やかな夜風のようなサウンドが非常に心地よい。まさに、この時期、この時間のシンガポールで聴くのにぴったりだ。当地のポップス系コンサートでは滅多にない、二回のアンコール&スタンディング・オペーションが起きたのも当然の出来だった。 この好演を支えている大きな要素が、Esplanade Concert Hallの音響の良さだろう。私の席がほぼ中央の好位置だったこともあるが、本当にアコースティック系の楽器と歌声が美しく響くホールだと思う。ピアノ弾き語り系には最高なんだよなぁ。 まず、ハイライトはNambia旅行だ。来年の旧正月は、日程が悪く長期の休みを取りにくいので、遠出は断念してしまった。シンガポールにいる間にあと何回アフリカに行けるだろう? その他、香港への定例出張の他に、マカオ、北京、ソウル、インド、バンコク、台湾と、仕事絡みで初めての土地や久しぶりの国に行くことができた。日本でも初金沢。シンガポールでも集中的な観光案内と、かなり旅関連で充実した一年だった。 コンサートでは、"David Bowie Reality Tour 2004"の格好良さにノックアウトだ。あと、"Yo-Yo Ma and the Silk Road Ensemble"も印象に残っている。 映画だと、"Big Fish"。これは、号泣映画として長く記憶に残る物になりそうだ。 読書関連では、長く積ん読だったのをようやく読了したガルシア・マルケスの「百年の孤独」と、J. D. サリンジャーの「フラニーとゾーイー」が、物語の力強さというものを実感し、印象深い。さらに、これまで「結晶世界」しか読んでいなかった J. G. バラードの「ハイ・ライズ」を手に取ってみて、一読、大衝撃を受け、急遽、「沈んだ世界」、「残虐行為博覧会」、「スーパー・カンヌ」、「殺す」、「コンクリート・アイランド」を一気読み。一応、SFに分類される作家だが、どの作品でも、SF的設定は単なる背景に過ぎず、じわじわと人の内面をえぐるストーリーが展開する。「残虐行為博覧会」になると、SFどころか通常の物語の枠まで越えていて、ストーリーを追うことは私には不可能だったが、鮮烈なイメージの羅列を追うことが止められず、読了。残念ながら絶版になっている著作もあり全作品読破は当分難しそうだが、これは大きな出会いだった。 勤務先の人事ローテーションの常識から考えて、シンガポール駐在の残りも、あまり長くないかもしれない。さて、来年はどうなるかしらん。 |