IN/OUT (2004.10.31)

先週は、インド出張でした。


in最近のIN

インドで考えたりなんかしたこと (04.10.24-28)

出張でインドに行くのは初めてだが、ちょうど10年前、日本からケニアに旅行した時、当時のボンベイ(今のムンバイ)にトランジットで往復一泊ずつしたことがある。その時の印象があまりに強烈だった。

あちこちで金をせびられたり、腕時計を交換しようと持ちかけられたり。まぁ、町中でそういう目に遭うのは覚悟していた。しかし、国際空港のパスポート・コントロールを過ぎた後、搭乗口への通路で隣を歩いていた男から、やおら「ここまで案内してやったんだからチップを寄こせ」と声をかけられたのには絶句した。もちろん、それまで彼とはまったく言葉を交わしていない。単に、私の横を歩いていただけだ。せこいというか、ずる賢いというか、言ってみたもん勝ちというか…。こういったことを鷹揚に受け止められる人もいるのだろうが、私には駄目だ。二度と近づきたくない、と思っていた。

もちろん、インド人が全てこういう人では無いだろう。むしろ、正直で親切な人が大多数のはずだ。しかし、そういう「普通の人々」は、一目でガイコクジンと分かる私に、用もないのにずかずかと近寄ってきたりはしない。結局、周囲に集まってくるのは、こちらに不快な思いを抱かせる人ばかり、という状況になってしまったのだろう。

しかし、この10年でインドの都市部は経済発展が進み、以前のようなひどいことは無いという話も聞く。さらに今回は、アテンドしてくれる人のいない慣れない土地での社用単独行。安全と確実性を重んじて動くことになる。果たして印象は好転するのか?


Delhi(2004.10.24-25)

シンガポールからデリーまで直行便で5時間。定刻から30分ほど遅れ、夜10時の到着だったが、大国の首都の空港とは思えない効率の悪さで、イミグレーションを通過するまでに一時間以上かかる。さらに混沌とした出口で依頼しておいたホテルのピックアップを探しだし、市内のホテルにチェックインしたのは12時近くになってしまった。

実は、今回の出張の準備をするまで、「デリー」と「ニューデリー」は別の都市だと思っていた。実際には、Delhiという町の中が、旧市街地=Old Delhiと、新市街地=New Delhiに分かれるだけなのだった。

ホテルの窓からの面白みのない景色翌朝、ホテルでタクシーを依頼し、最初の訪問先へ向かう。比較的分かりやすい英語を喋ってくれる運転手で応対も丁寧だったので、一日契約にした。8時間で1,000ルピー。相場として高いのかリーズナブルなのか分からないが、ここは安全性重視である。10年前には、大きなカルチャーショックを受けたインドの道路事情だが、アジアでの経験を積んだおかげで、車線無視、信号無視、強引な割り込み、あり得ないほど近い車間距離、命知らずの横断者達、野良牛!、にもあまり驚かない私なのである(と言っても、かなり強烈な状況だが)。

バターチキン一件目の用事を済ませると、昼食時。運転手に「適当なインド料理屋を」とリクエストした。バターチキンとご飯で340ルピー。なかなか美味しい。一応、外人受けする=むやみに辛くない料理を出す店を選んでくれたとのこと。食後、ちょっと土産物屋を冷やかして、次のアポイントメント先へ向かう。

夕方、ホテルに戻り一仕事。夕食は、そのままホテル最上階のメイン・ダイニングで、インド産赤ワインと、羊肉のカレー料理。さらに、同じフロアにあるバー。窓から見える夜景は、一千万人近い人口を抱える大都市圏とは思えない暗さだ。ネオンはおろか、人家の明かりもほとんど見えない。周囲が官公庁街だからだろうか?それとも、ナイト・ライフというのが存在しない町なのか?


Mumbaiへ移動(2004.10.26)

Indira Gandhi International Airportの国内線ターミナルからJet Airwaysの国内便にて、ムンバイへ向かう。国土が広い割には国内航空路網があまり発達していないのだろうか? かなりお粗末なターミナルだ。

二時間ほどのフライト。機内で出る昼食は、ベジタリアンかノン・ベジタリアンの選択となる。ノン・ベジタリアンの方は、チキンのクリーム煮込み風、ご飯とチャパティ、ヨーグルトなど。不味くはないのだが美味しくもない、形容しがたい味である。

Chhatrapati Shivaji International Airportからムンバイ市内までは、車で一時間ほど。巨大な政府関連の建物ばかりが目立つデリーとは対照的に、猥雑で人間くさい町並みが続く。ホテルのあるNariman Point周辺は、世界一事務所家賃が高いオフィス街とも言われているのだが、本当だろうか?デリーよりも高いビルが多く、活気ある雰囲気だが、ビルはどれも古びて見えるし、道路の整備状況も良好とは言えない。決して、先端的ビジネス街には見えない…

軽くホテルの周囲を歩いた後、結局、夕食はホテル内のレストラン"India Jones"にて。アジア多国籍料理の店である。店名はふざけているが、値段は高い。ベトナム風生春巻き、中華風肉団子スープ、韓国風ブルゴギに、インド産ビール。私はカースト制にはとらわれない外国人。開き直って牛肉を食べてしまった。


Mumbai(2004.10.27-28)

油断しまくっている野良犬今日の訪問先は、すべてホテルから徒歩圏内。しかし、歩道にはぎっしりと屋台が並び、足下の凸凹が激しく、道端のバケツで屋台の食器や鍋を洗う水しぶきにも注意が必要。そして、素人には難しい道路の横断(歩行者用の信号は、あって無いようなもの。慣れるまではタイミングがつかみにくく、地元民と一緒、というか地元民を盾にしながら渡るしかない)。結構、疲れる。あと、野良犬が多いのは、殺生を禁ずるお国柄だからか。インドは狂犬病の汚染地域なので最初は神経質になったが、挙動不審の犬じゃなければ大丈夫だろう。誰からもいじめられないせいか、のんびりした風情の犬ばかりだ。

Gateway of India途中、時間が空いたので、Gateway of Indiaまで足を伸ばす。Mumbai一の観光地だ。写真屋や絵葉書売りが次々と声をかけてくるが、思ったほどしつこくない。ちょっと、拍子抜け。Gateway of India自体も、特段、どうと言うこともない建造物だ。Taj Mahal Hotel向かいの、やたらと立派な外観のTaj Mahal Hotelを冷やかし(ホテル内には、Mumbaiただ一つの本格日本料理店が入っている。しかし、あまりにも高額なため、現地の日本人駐在員は足を運ばないそうだ)、地図を見ずに適当に歩いていたら、少々迷ってしまったが、なんとか無事に次のアポイントメント先へ辿り着く。

それにしても、初心者には歩きにくい町だ。何が困ると言って、ガイドブックなどが無ければ、食事する場所が見つからない。柔な私の胃腸では耐えられるとは思えない屋台以外に飲食店というのが見あたらないのだ。色々歩き回った夕方、スターバックス風のコーヒーチェーン店を一軒見つけただけだ。町歩きに慣れれば、もっと鼻がきいて、私らでも気楽に入れるような店を探し出させるようになるのだろうか?初心者は、結局、ホテルの高いレストランということになってしまう。

しかし、タクシーを使わず歩き回ったためか、町の雰囲気という点ではムンバイの方が好感が持てる。地元の人にもデリーへの対抗意識があるようで、「デリーの人間は尊大だが、我々はフレンドリーだ」と語ってくれた人がいた。私も賛成である。

翌朝のフライトでシンガポールに戻る。どうやら、毎週、Sony Entertainment Televisonで、"American Idol"のフランチャイズ番組 "Indian Idol"が放送されているらしい。大いに興味をそそられる。あと一泊すれば見ることができたのだが、残念。


結局、この出張中、覚悟していたような不快な目にはほとんど遭わなかった。この10年で、インドが大きく変わったというのは本当のようだ。道路事情は相変わらずだが、走っている車はHyundaiなどの外国車が増えているし、携帯電話を手にした若い人も多い。ただ、そうは言っても、中国の大都市なんかと比べても、まだまだ敷居が高い所ではある。秩序というものが無いように思えるのは中国と同じだが、それでも中国の無秩序さは、どこか(納得できなくても)理解できるように思う。しかし、インドの人達は全く違う価値観で動いているように感じる場面が多い。次のチャンスがあれば、もっと色々と試してみたいところである。


"Dodgeball: A True Underdog Story" (04.10.28)

ロードショー公開時に見逃していたコメディ映画を、帰りの機内で観た。

下品でベタなギャグが連続する、予想以上の馬鹿映画だったが、個人的には憎めない作品だ。「ドッジボール」のルールが、我々が慣れ親しんでいるものとは違うのが気になるが、これが世界標準なのだろうか?(なお、この映画で描かれるドッジボール世界大会には、日本チームも出場していたが…

欠点を挙げだしたらきりがないようないい加減な作品だが、二人のカメオ出演者が、そんな欠点を吹き飛ばすような人選で、驚いた。スポーツ界からあの超スーパースター。そして、B級映画界から"地獄のヒーロー"。素晴らしすぎる。ヒロインが本当にレズビアンなのか?という、どうでもいいような脱力オチも含め、憎めないなぁ。



で、引き続きの出張で、今は香港のホテルに滞在中。デリー、ムンバイ、香港、どのホテルもLAN接続完備がありがたい。

インドと比べると、さすが香港は圧倒的に清潔で効率的で快適(物価は高いが)。ハロウィーンがずいぶんと浸透しているようで、仮装した若者が町中に目立ちます。クリスマスは、まあ分かるけど、ハロウィーンについて文化的背景を共有していないアジア人がイベントだけ物真似というか猿真似するのは、かっこわるいと思うんだけどなぁ…。仮装したいなら、「なまはげ」でも良いじゃん。