IN/OUT (2004.6.20)

人込みの中を歩いていて、日本語が聞こえたと思って振り返ったら、そこにいたのは中国語で会話している人だった、ということがしばしばあります。英語やマレー語でこんな聞き間違いをすることは、まず、あり得ません。中国語と日本語は、ずいぶんと発音が違うけれど、なにか共通した節回しのようなものがあるようです。香港在住日本人と話していて、その人も同じ事を感じていたことが分かったので、私の耳だけの問題ではないでしょう。

もっとも、私の耳というのは、広東語と普通語の違いがあまり聞き取れない程度ではあるのですが。その代わり、香港人が喋る広東語訛りの英語と、シンガポール人が喋る(普通語&福建語&マレー語のミックス訛り?)英語の違いは、聞き分けやすいと思っています。


in最近のIN

"An Evening With Sarah Brightman Harem World Tour 2004" (04.6.18)

Sarah Brightmanの公演を観に、Singapore Indoor Stadiumに行ってきた。

これまでに見たソロ・ミュージシャンの公演として、これほど豪華なステージは初めてかもしれない。バンドとオーケストラ、バックコーラスにダンサー。サポートの出演者数も多いし、セットの巨大さも半端じゃ無い。会場脇に巨大トレーラーが数台置かれていたが、それもうなずけるセッティングだ。

ゴージャスな衣装。情感たっぷりの仕草。さらに、舞台のあんな所でそんなポーズを取りながら歌うかっ!と驚くような凝った演出が一曲ごとに施されている。定評通りの圧倒的歌唱力はもちろんのこと、宙を舞いながらだろうが、巨大ブランコに揺られながらだろうが、妖艶に横たわりながらだろうが、全く歌が乱れないのは驚異的だ。

もっとも、歌はとても上手だが、必ずしも、私の心を揺さぶるようなタイプではない。華麗な演出にしても、そういうのを見慣れていない私には、むしろ気恥ずかしくすら感じられる。凡百の歌手がこういう演出で歌ったなら、単にナルシストっぽく見えてしまうだけだろう。

しかし、これがSarah Brightman様だと、舞台上の美を構築するための要素として、自分自身の歌声・容姿・仕草を、完全にコントロールしているのだと納得させられる。厳しいまでにプロに徹しているという迫力に、私が感じる気恥ずかしさなど、あっさりと制圧されてしまったという感じだ。

音楽自体よりも、開演前の客入れの段階から既に場内の雰囲気を盛り上げる工夫が凝らされ、、本番中の舞台上の本人はもちろん、ダンサーやバンドの一挙手一投足、裏方の働き、アンコール後の挨拶に至るまで、一分の隙もなく組み立てられているという、演出の完璧さに驚嘆した(感動、とは言い切れないが)公演だった。


"Yo-Yo Ma and the Silk Road Ensemble" (04.6.19)

Singapore Arts Festivalの一環として開催された演奏会を聴きに、Esplanade Concert Hallへ行ってきた。Yo-Yo Ma氏が主催する"The Silk Road Project"による公演である。

"The Silk Road Ensemble"という名前は付いているが、メンバーが固定しているバンドでは無い。今回の公演でも、一曲ごとに演奏者が入れ替わる。演奏されたのは、中国やインドのトラディショナル、イランやウズベキスタンの現代作曲家の作品、さらに、Debussy(フランス)のソナタ。まさに、シルクロードに沿った選曲であり、パリに住む中国人の両親の元に生まれたYo-Yo Ma氏らしいプロジェクトだと感じる。

使用されるのは、Yo-Yo Ma氏のチェロはもちろん、ヴァイオリンやヴィオラなどの西洋の楽器と、中国やインドの伝統楽器だ。それらが見事に溶け合った、予想以上に深みに満ちた演奏が繰り広げられる。演奏された8曲中、5曲に参加したYo-Yo Ma氏のチェロの素晴らしさは言うまでもないが、この日一番目立っていたのは、Tabla(インドの打楽器)奏者のSandeep Das氏だ。最後に演奏された彼自身の作品での、弦楽四重奏をバックにしたTablaと西洋パーカッションの掛け合いの高揚感は、本当にエキサイティングで素晴らしかった。

カーテンコールに応えて、演奏者が全員ステージに並ぶ。黒のスーツに身を包んだ男性陣と、色鮮やかなチャイナドレスとインドの民族衣装の女性陣を見ると、国境を越え、西洋と東洋が融合した見事なアンサンブルだったと改めて感じ入った。こういうのを見てしまうと、先週の女子十二楽坊など「外貨獲得」というキーワードしか浮かんでこず、志の違いが歴然だと思う(商業的成功は別の話だが。The Silk Road Projectは営利を目的とする団体では無いそうだ)。

これで、私にとっての今年のArts Festivalは終了。最後に、また素晴らしいものを体験でき、なかなか充実したFestivalだった。


タブレットPCを試す (04.6.20)

以前書いた持ち運び用PC購入計画だが、結局、HPのTablet PC TC1100を購入した。市場的には全く盛り上がっていない、タブレットPCである。愛用しているPocket PCもそうだが、我ながらマイナー好きというか、負け組志向というか…

価格対性能比も重量対性能比も、通常のノートPCに比べて劣るし、私の使い方にペン入力の必要は無い。しかし、わざわざ液晶画面を開かなくても使うことができる機動性など、個人的には持ち運び用としてほぼ理想的な形状だと思っている。試しに、カフェに持って行って無線LAN接続でWeb閲覧してみたが、極めて快適だ。PCを使っている仰々しさがないのも良い。重さと予想以上の発熱から、立ったままで長時間使うのは難しそうだが、キーボードを使える状態に変形させての使い勝手も良好だ。

出張の前々日にようやく到着したため、十分な試用時間が取れなかった。しかも、時間が無いのに、ハードディスクの初期化 → パーティションの分割 → OSのクリーン・インストール → 専用ドライバの設定、を行ってしまった。まぁ、こういう段取りを踏まないと「自分のマシン」として愛用する気になれない性分なので、しょうがない。それから取り急ぎ、マイクロソフト・オフィスとメールソフト(Becky!)、エディタ(秀丸)等、最低限必要なソフトのインストールを行う。無線LANを自宅に導入しておいて大正解だった。各種ダウンロードや最新の状態への更新など、非常に楽だ。その後、オフィスに持って行って、プロジェクタを使ったプレゼンテーションが問題なくできることを確認した。タブレットを上手く使えば、なかなか効果的なプレゼンテーションもできそうで、良い感じである。



Indoor StadiumはMRTの駅から遠く、コンサートの終演後はタクシーを待つ人でごった返します。周辺の地下鉄工事と、Nicoll Highwayの崩落事故による渋滞もそれに拍車をかけているようです。

Sarah Brightmanのコンサート後、電話で呼び出したタクシーの運転手から
「すごい人混みだから、この車を探し出してくれ。XXXに駐めている」
という意味らしい電話がかかってきました。何せ、コテコテに訛ったシングリッシュなので、ここまで聞き取るだけで一苦労。肝心の「XXX」の部分が分からない…

何度か聞き直すうちに「カッパデ」と言っているような気が…。それでようやく、「Car Park D」の事だと理解できました。語尾の子音が飛んでしまい、日本人だと「カーパーク」と発音するところが「カッパ」になってしまうのが、シングリッシュの代表的特徴なのは分かっていたのですが、今回の運転手の発音はかなり強烈。まだまだ、シンガポール人の英語を完全に聞き取れるようになるのは難しいと思う今日この頃です。