IN/OUT (2024.8.25)

年中行事となってしまったスマートフォンの機種変更。別に、最新機種を追っかける必要性は無いと分かっていても、魅力的な下取り価格の提示とクーポン付与というGoogle社の戦略にホイホイ乗ってしまうのは、我ながらチョロい客だ……


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「『葬送のフリーレン』オーケストラコンサート」@ パシフィコ横浜 国立大ホール24.8.21

パシフィコ横浜 国立大ホール「葬送のフリーレン」のTVアニメ音楽をオーケストラの演奏で聴かせるというコンサートを観に、パシフィコ横浜 国立大ホールに行ってきた。

これは、私が久しぶりにハマったアニメだ。5月には、池袋で開催された企画展を観に行ったが、今回は音楽イベントである。人気の漫画&アニメだけに、5千席超のパシフィコ横浜 国立大ホールは満員だ。

演奏は、田尻真高の指揮による東京フィルハーモニー交響楽団。さらに、混声合唱団と、イリアン・パイプス系とギター系のアイリッシュ楽器の演奏者2名が加わり、かなり大人数の舞台だ。

アニメのメインテーマから演奏開始。この公演は、劇映画を上映しながらサントラの代わりに生演奏という「フィルム・コンサート」ではなく、あくまでもメインは劇伴(劇中伴奏音楽)。オーケストラが次々と劇伴を演奏し(その性格上、1曲あたりは短い)、スクリーンに、その音楽が使われていたシーンが映されるという趣向。これが成立するのは、Evan Callによる音楽のクオリティーが高いからだ。また、TVで使われていた音源には、多種多様な古楽器が効果的に使われていたが(その収録風景も、少し、スクリーンに投影された)、このライヴではアイリッシュ系楽器が2名のみ。そこを、オーケストラ・アレンジでどう聴かせるかが、Evan Callの腕の見せ所。やはり、ダイナミック・レンジの広いフル・オーケストラの生音で聴く劇伴は、胸熱である。

一通り演奏が続いた後、Evan Callご本人登場。米国出身だが、2012年以降、日本で活動を行っているので、堪能な日本語でご挨拶。

そして、ゲストのmilet嬢も登場。「bliss」(作詞:milet、作曲・編曲:Evan Call)と、「Anytime Anywhere」(作詞:milet、作曲:milet/野村陽一郎/中村泰輔、編曲:Evan Call)を歌唱。オーケストラをバックに堂々たる歌いっぷりだ。以前、TVで、彼女が発声法への拘りを語っているのを聞いたことがある。実は、素の声は無個性だが、丁寧に発声をコントロールして、あの独特の存在感を出しているとのこと。確かに、とても印象的。また、ライヴで聴く機会を見つけたいものだ。

milet嬢退場後、Evan Callと田尻真高のトークが少しあって、後半戦。

全体に、ケルト風味のしっとりした曲調が多いが、後半には「一級魔法使い選抜試験」での、アクション・シーンの劇伴が続き、熱くなる展開も。そこに、ティン・ホイッスルやイリアン・パイプスのケルト風音色が入ることで、カッコ良さ増し増しだ。

パシフィコ横浜 国立大ホールアンコールは、Evan Call指揮で、本編に収まりきらなかった劇伴のメドレー。そして、最後にもう1曲、田尻真高の指揮で締める(最近多い、最後の1曲だけ撮影可能パターン)。8月20日に逝去されたフランメ役の声優 田中敦子さんへの弔意がスクリーンに映され、全編終了。

個人的には、milet嬢の歌唱は、本編では1曲のみで、もう1曲はアンコールでも良かったのでは? などと思ったりもしたが、Evan Callが語ったアレンジへの拘りや、milet嬢が作詞に際し「愛という言葉は使わないで」と製作スタッフに依頼されたことなど、興味深い裏話も聞け、充実したイベントだった。


"Beetlejuice"  (24.8.23

1988年公開のTim Burtonの出世作が、その続編公開を前に復活上映されているのを観てきた。

36年前の作品だが、今、観ると、栴檀は双葉より芳しと言うか、三つ子の魂百までと言うか、Tim Burtonらしさが詰まりまくった傑作だ。「大作」とか「感動作」とは真逆の、チープな特撮と馬鹿馬鹿しいお笑いに撤した作品だが、それが、Tim Burtonの個性を際立たせていると思う。

超ハイ・テンションで突っ走るMichael Keaton、若くてスマートだったAlec Baldwinなど、大物俳優の若かりし日の姿も楽しい(Geena Davisは、今でも雰囲気が変わっていない気はする)。何よりも、Winona Ryderの可愛らしさよ!

「デューン 砂の惑星」が、Denis Villeneuve版の”Dune”, ”Dune: Part Two”、そして、David Lynch版の”Dune”と、立て続けに公開されたので、Sandwormが登場するシーンの馬鹿馬鹿しさ(誉め言葉)が際立っているのも、良き。

これで、間もなく公開される続編”Beetlejuice Beetlejuice”への期待が大いに高まる。このタイミングで復活上映(それも、DlobyCinemaで!)してくれたWarner Bros. Japan、Good Job!である。ただ、当時の日本語字幕、悪ふざけが過ぎて、かなり寒いな……


"Polite Society"  (24.8.24

パキスタン系イギリス人の女の子を主人公にした英国映画を観てきた。

主人公は、ロンドンの女子校に通いながら、スタント・ウーマンを目指し、カンフーの修行にも励んでいる。そんな彼女の夢を理解し応援してくれている姉が、お金持ちの御曹司と結婚することになるのだが、その裏に納得行かないものを感じた彼女は、姉の結婚を阻止しようと立ち上がる。

香港映画とインド映画へのリスペクトとオマージュが詰まった雰囲気が楽しいのだが、正直、映画の途中から、主人公の暴走ぶりが厨二病的なイタさで、感情移入しづらくなってしまった。が、終盤、結婚式場での民族衣装を纏ってのアクション・シーンが見応え十分で、印象は再び好転。終わってみれば、爽やかな青春映画の快作である。

特徴的なのは、男性がほとんど出てこないこと。主人公が通うのは女子校で、家庭では父親の存在感は薄い。男性の主要人物は姉の婚約者だけだ。結果、主人公に協力する級友達とのシスターフッド展開と姉妹の絆が、純度高く、熱いのだ。カンフー × 南アジア × シスターフッド × 青春 = 爽快度Max!

音楽も、ボリウッド風味からUKパンクまで、私好みの選曲。特に、冒頭のThe Bombay Royaleの”You Me Bullets Love”と、エンディングのX-Ray spexの"Identity"が素晴らしい。さらに、劇中に浅川マキの「ちっちゃな時から」が効果的に使われていることにも驚いた。日本語の歌が流れる必然性は皆無のシーンなのに、見事に雰囲気に合っている。それにしても、1970年の日本の「アングラの女王」の名曲を、製作陣はどこで見つけてきたのか?(個人的にはちょっとした思い入れもあった人なので、嬉しい)。



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"Monkey Man"  (24.8.25

Dev Patelの初監督作品を観てきた。

"Slumdog Millionaire", "The Best Exotic Marigold Hotel", "Chappie", "The Second Best Exotic Marigold Hotel", "Lion", "Hotel Mumbai"と、その出演作にハズレ無しのインド系俳優 Dev Patel。彼が、構想8年の末、自ら監督・脚本・主演を務めた大作である。

Dev Patel演じる主人公は、幼い頃に母を殺され、現在は、闇のファイト・クラブで猿のマスクを被ったヒールとして生きている。母の敵に接近するため、高級秘密クラブに職を得るが、復讐には失敗。重傷を負った彼は、ヒジュラー(男性でも女性でもない第三の性を持つ人)のコミュニティーに匿われ、再び、復讐のチャンスをうかがう… というお話。

残念ながら、私には合わなかった。この映画にかけたDev Patelの情熱は伝わってくるが、それが逆に災いして、肩に力が入りすぎた生硬な演出になってしまっていると感じる。人気俳優が気合いを入れて製作した映画が、ハードなヴァイオレンスもの、ということ自体、良く有るパターンだし、出来上がった作品が空回り気味、というのも有りがちだ……。残念。

私にとって、唯一の見所は、ヒジュラーのコミュニティーで、タブラ演奏を通じて彼のトレーニングを助けるのがザキール・フセイン=U-zhaanの師匠というところかな。師匠、中々の熱演である。



機種変更の作業は、より簡便な手順に確実に進化しつつあるのは、ありがたい。これが、自力で出来なくなる(あるいは、やる気力が無くなる)かどうかが、老いのバロメーターとなるような気がします。なので、年1回の機種変更は、老いのセルフチェックであると、自己正当化する今日この頃です。