公演日 | 開演 | 会場 |
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12月21日(木) | 19:00 | 日経ホール |
12月22日(金) | 19:00 |
ホワイエの物販コーナーでは自作グッズの販売活動にいそしみ、ステージ上には「鈴木茂の動く城」と呼ばれる機材群を持ち込まれてました。
物販コーナーには、11月7日にキネマ旬報社から発売された書籍「映画を聴きましょう」が並んでいました。矢野さんと知り合ったのは、細野さんが20代の時。その頃から、既に「重鎮感」を醸し出していたそうです。
矢野さんとは高校の先輩・後輩の間柄。矢野さんが入学したときは既に卒業されていたそうですが、「憧れの先輩」だったそうです。ストイックな先輩は、物販は無し。
* は、Tin Panが参加
2014年から2016年まで、3年連続でさとがえるコンサートをTin Panと行ってきた矢野さんだが、2017年のさとがえるは弾き語りツアー。この年は、Tin Panとの共演は無いかと思っていたら、意外な企画で、4年連続の共演となった。因みに、主催は日本経済新聞社。協賛が飯田電機工業株式会社と株式会社 明治。
日経ホールは、大手町・日経ビルの3~5階に位置し、キャパは 610席。客席に背面収納型の机と手元ライトが装備されていて、講演会やシンポジウムにも対応。一方で、クラシック系のコンサートにも対応できる音響を備えている(因みに、ピアノは、STEINWAY D-274とヤマハ CFIII-Sの2台を保有)という、変わり種というか、日本経済新聞社らしいホールである。
入り口で、割に上質の紙で作られたパンフレットが手渡されるのも、さすが「東京のビジネス街の中枢、大手町で舞台芸術の粋を届ける」というコンセプトの『大手町座シリーズ』だ。ただ、そこに掲載された日本経済新聞社の文化部編集委員による紹介文の中で、矢野さんの代表曲として記載されているのが「ひとつだけ」「ごはんができたよ」などと共に「電話帳」…。新聞社主催の公演で、編集委員の文章に、このような誤植があって良いのか?
客入れ時に流れているのは、さとがえると同じくFrank Sinatra。そして、開演。Tin Panは、あくまでも「特別ゲスト」という位置づけなので、まずは矢野さんのソロ。会場の音響は中々良いが、ヴォーカルのセッティングが、ややオンマイク過ぎるような気がする。「電話線」の中盤は、あまり聴いたことの無いアレンジが入っていて面白い。
4曲目と5曲目は「Soft Landing」収録曲だが、さとがえるでは取り上げられなかった曲。特に「Drivin', Cryin', Missin' You」をライヴで聴くのは初めてで、嬉しい。良い曲だ。
今日の矢野さんは、演奏の方は、意外性のあるアレンジを入れてくるなど、好調だと思うのだが、どうも、会場の雰囲気を掴みあぐねているようだ。確かに場内は、熱心な矢野ファン以外の、「日経枠」みたいなものでチケットを取得した人も多いように思う(その印象は、終演後の周囲の人の会話が聞こえてきて、確信になった)。そのためか、MCも、会場の反応を探りつつ、という感じになっている。
ちょっとした驚きだったのは、かなり渋めのアレンジで攻めてきた「ラーメンたべたい」で、歌詞の「読んでね」を、ちゃんと歌われたこと。ほとんどのライヴでは「大きな字の手紙」までしか歌われず、個人的には残念に思っていたのだ。
7曲終わったところで、Tin Pan登場。しかし、矢野さんがバンド用の楽譜を楽屋に忘れてきたことが判明。走るスタッフ。Tin Panとの共演では、ソロとは一変。バンドのピアノ弾きモードでの演奏になり、これも楽しい。
楽しいのだが、まさかの3曲で本編終了。日経ビル内のホールなので、あまり、遅くまで使うことが出来ないという制約があるそうなのだが、これは物足りない。バンドでのリハーサル時間も、それほど取れなかったのかなぁ…。
それでもアンコールで、細野さんと矢野さん、二人の声が重なるのを聴けたのは嬉しい。ピアノソロとTin Panとの共演の両方をコンパクトに楽しむことが出来たと、好意的に受け止めることにしようと考えつつ、客出しに流れるムーンライダーズの「スカンピン」(この選曲もさとがえると同じ)を聴きながら、会場を後にしたのだった。
* は、Tin Panが参加
日経ホールの二日目。意外なことに「ひとつだけ」からスタート。この後も、ある意味、聴きやすいタイプの曲が並ぶセットリストだ。昨日の、やや「通向き」の選曲が、会場に多くいた初めて矢野さんを聴く層に響いていなかったという感触からの路線変更だろうか。歌い方も、歌詞をしっかりと届けることに力点を置いた印象だ(その分、爆発力に欠けると感じてしまう)。MCも、矢野さん初心者の熟年サラリーマンを想定したと思われる丁寧な感じで、他の会場では味わえない、まさに「日経ホール仕様」と言うべき雰囲気でソロの部が進む。
昨日より、MCを絞った分、ソロの部は一曲増。しかも、金沢のさとがえるでは、候補に挙がりながら歌われなかった「ごはんができたよ」が聴けたのは嬉しい。
そして、Tin Pan登場。旧友たちの登場で、矢野さんもようやくリラックスという感じだが、そのリラックス度は、昨日よりも数段上。Tin Panのお三人とのMCの掛け合いが楽しい。林立夫氏の「(前面に出るのは)医者に止められている」発言と、細野さんの「(今年、ライヴが多かったのは)医者に勧められて」発言という中高年ギャグに爆笑する矢野さん。グッズ製作と物販に気合いを入れる鈴木茂氏いじりも楽しい。
Tin Panとの共演の部は、昨日と同じ曲だが、演奏はさらに良くなっていたと思う。昨日は、私にはもう一つ、ぴんと来なかった「砂山」も、今日は渋く&格好良く迫ってくる。
アンコール。自作のキーホルダーがギターのネックに引っかかってしまった鈴木茂氏を見て、「邪魔じゃん」と、ぼそっとつぶやいて、演奏前から良い味を出していた細野さん。矢野さんとのヴォーカルの息の合い具合が、とても心地良い。全体としては、演奏曲が少なく、初心者向けを意識した雰囲気で(観客席の矢野ファン度は、昨日より高かったと感じたが)、物足りなさを覚える公演ではあったが、この、細野さんと矢野さんのデュエットを聴けたことが何より嬉しかったなと、昨日同様、客出しに流れるムーンライダーズの「スカンピン」を聴きながら、会場を後にしたのだった。