IN/OUT (2018.10.28)

色々とイベントが多く、時間の都合上、普段は行かない平日の夜にも、一本、映画鑑賞。気分転換にはなるものの、やはり濃厚インド映画を平日にぶち込むのは、ペースが乱れてしまうと感じてしまいました。


in最近のIN

「Baahubali 2: The Conclusion / バーフバリ 王の凱旋 完全版」@IMAX18.10.23

魂の名作「Baahubali 2: The Conclusion / バーフバリ 王の凱旋 完全版」のIMAX上映を観てきた。

10/19から期間限定でIMAX版の上映が行われているのだが、先週、「2001年」のIMAX上映を観て、大画面の良さを再認識した良いタイミングにハマった。訪れたのは、T-ジョイPRINCE品川。現在、ここのIMAXシアターは、""Baahubali 2: The Conclusion"と"2001: A Space Odyssey"を公開中という、もう、私としては夢のような編成なのだ。もっとも、この2本を続けて観るのは、色々と消耗してしまいそうだが…

映画が始まってすぐに、度肝を抜かれた。「2001年」では、50年前のフィルム作品をIMAX上映することによるチグハグ感を覚えたのだが、最新の特撮技術をつぎこんだ"Baahubali"は、IMAXとの相性はバッチリだ。しかも、そのバッチリ具合が、想像を遙かに超えているのだ。大画面の迫力だけで無く、映像のクリア度合いも、音響の迫力も、通常のフォーマット版とは全く違う。それだけでなく、このIMAX版は、編集にも少し手を加えているように思う。7回目でも新鮮な驚きを覚えつつの鑑賞となった。

そして、改めて、この映画の圧倒的な迫力に驚愕する。物理法則も人類の生物学的限界も超越したアクション・シーンと、それをひたすらカッコ良く見せる画面構成に、痺れまくりだ。今となっては、見所を無惨な編集でバッサリカットした短縮版(インターナショナル版)を観る気は皆無だし、ノーカットの完全版にしても、IMAX版でしか観たくないと思ってしまう。この映画館では、夜の部の上映は、終映が23時40分なので、難しい人も多いとは思うが、このIMAX版こそ、一人でも多くの人に観てもらいたいと切望するのである。


「Baahubali: The Beginning / バーフバリ 伝説誕生 完全版」18.10.27

魂の傑作 "Baahubali"。前・後編とも、当初、日本で公開されたのはInternational版という短縮編集されたものだった。後編に当たるThe Conclusionの方は、ノーカットの完全版が公開され、さらに、そのIMAX版も上映されて、その凄さに改めて圧倒されたのだが、このたび、前編に当たる「Baahubali: The Beginning / バーフバリ 伝説誕生」も「完全版」の公開となり、さっそく観てきた。

"The Conclusion"に比べると、やや地味な印象の"The Beginning"だが、滝登りシーンのダイナミズムと、Avanthikaの美しさ、そして、主人公の強引過ぎるナンパテクなど見所は多いのだ。そして、今回の完全版。やはり、短縮版とは全く違う。短縮版で無理な場面転換だと違和感を覚えていた箇所が、ことごとく、無惨な編集の結果だったことが良くわかった。さらに、最大のクライマックス(この作品の場合、全編、クライマックスのようなものだが)の戦闘シーンも、かなり切り刻まれていたことに驚愕した。あれだけカットされたら、Bhallaladevaの暴虐さも、Baahubaliの心意気も、伝わり切らない。

と言うわけで、短縮版ではイマイチ腑に落ちなかった所もすっきり解消。前・後編とも完全版で観た結果、この大作が細部まで拘って製作されていることが良く分かったし、伏線の回収まで楽しむなら、最低でも二回ずつは観るべきだと実感。

それにしても、何故、最初から完全版を上映しなかったのか、配給会社に対する憤りも覚えるが、そもそも、International版と銘打って、短縮版が製作されていたということに腹が立つ。これで、前・後編とも、完全版が揃ったわけで(できれば、前編のIMAX版も観たいところだが)、改めて、6時間耐久マサラ上映の企画を、どこかの映画館でやってもらえないものか。


"The Best of Italian Rock Vol.8 Claudio Simonetti's Goblin" @ CLUB CITTA'18.10.27

イタリアのプログレッシブ・ロック・バンド Goblinのライヴを観に、川崎のクラブ・チッタに行ってきた。

彼らが、他のプログレバンドと違うのは、映画音楽、それも、Dario Argento監督のホラー映画のサントラが活動の中心という事だ。映画とは関係ないオリジナル・アルバムも少しは製作しているのだが、私が知っているのはサントラだけだ。

ということで、今回のライヴは二部構成。第一部は、彼らが音楽を担当したGeorge A. Romeroの1978年の傑作"Dawn of the Dead(邦題「ゾンビ」)"の、Dario Argento監修によるイタリア語吹き替え版を全編上映しながら、彼らがライヴ演奏でサントラを再現し、第二部は彼らの非サントラの傑作と名高いアルバム"Roller"の完全再現を含めたベスト・ヒッツ・ショーという趣向。

舞台に登場したメンバーは4人。バンドの中心メンバーであるキーボードのClaudio Simonetti、ギターのBruno Previtali、ドラムスのTitta Tani、そして、ベースのCecilia Nappo。インストゥルメンタル・バンドなので、ヴォーカルはいない。そして、スクリーンで"Dawn of the Dead"の上映開始。アメリカが舞台なのに、登場人物達がイタリア語を話すのは、さすがに違和感があるのだが、バンドのライヴサウンドの方が大きく、それほど気にならない。ストーリーを追うには、日本語字幕がありがたい。以前、同様の形式で、Argentoの"Suspiria(「サスペリア」)"の上映&ライヴ演奏をしたことがあったそうだが、謎めいたホラー映画なので、ストーリーに集中しないと意味が分からず、音楽と同時に鑑賞するのは大変だったと思う。その点、ゾンビ映画はシンプルなので、ライヴ演奏との相性は良い。久しぶりに観た"Dawn of the Dead"は、さすがに40年前の作品。ゾンビの動きの鈍重さとメイクのチープさに苦笑もしてしまうが、数あるゾンビ映画の元祖、George A. Romero御大の社会批判を含んだ乾いた作風には、改めて目を見張るものがある。かなりグロいシーンもあるが、そういうときは、演奏しているバンドの方に視線を移せば良い。そのライヴだが、あくまでもサントラの再現なので、演奏自体が超盛り上がるということは無いが、さすがにツボを押さえたサウンドだ。

全編上映なので、119分間、バンドも出ずっぱりで演奏しっぱなし。映画が終わって30分の休憩の後、第二部開始。ちょっとアナログ・シンセっぽいキーボードを中心に、イタリアのプログレらしい抒情的なメロディーが心地よく、ヴォーカル無しでも飽きることは全く無い。"Roller"の完全再現や新アルバムからの曲も披露されたが、やはり、演奏曲の多くはホラー映画に提供した曲で、後ろのスクリーンに、その映画の映像(多くが残虐な殺人シーン)が投影される。中々、他にはないライヴだ。それにしても、「サスペリア」の主題曲を会場と合唱するとは…

キーボード、ドラムス、ギター、ベテラン揃いのメンバーは、テクニックも高い。その中で、最近加入したという紅一点のベーシスト、Cecilia Nappoが、露出度高めの衣装で。髪を(意識的に)振り乱しながら、一人、派手目のパフォーマンスで気を吐く。彼女が煽っても、淡々と演奏を続けるベテラン・メンバーとの絡みも、中々、味わい深い。

ということで、後半も、たっぷり2時間。17時開演で、終了は21時40分。イタリアン・プログレらしいサウンドと、恐怖映像でお腹一杯。ハロウィン直前の週末らしいとも言えるライヴ・イベントだった。


「インド☆シネマ歌謡祭!」@ミューザ川崎シンフォニーホール18.10.28

ミューザ川崎シンフォニーホール インドを代表するシネマ・オーケストラが5人のプレイバックシンガーと共に初来日、というイベントを観に、ミューザ川崎シンフォニーホールへ行ってきた。

プレイバックシンガーとは、映画で使われる歌を事前にレコーディングする歌手のこと。インド映画のお楽しみのミュージカルシーンは、ほぼ100%、口パクだ。主演の美男・美女俳優は、プレイバックシンガーによってあらかじめ録音されたサントラに合わせて演じているのである。パンフレットによれば、今回は、一流のプレイバックシンガー5人が集結。演奏は、Lakshman Sruthi 100% Manual Orchestra。打ち込みなどを使わないことを売りにした音楽集団だそうだ。そして、披露される曲が「ムトゥ 踊るマハラジャ」、「パダヤッパ いつでも俺はマジだぜ」、「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」、「きっと、うまくいく」、「バーフバリ」など。これは行かねばなるまい。

ミューザ川崎シンフォニーホール開場時刻は18時。集まっているのは、やはりインド系の人が圧倒的だが、日本人も2割ぐらいは居る感じ。実は、チケットを取得した際、「この公演は、日本のプロモーターが企画した物では無く、インドの人が主催しているので、日本の常識が通じない運営になっているかも」と注意を受けたのだが、確かに、ミューザ川崎シンフォニーホールという一流のクラシック用ホールでありながら、座席は、チケットのランクによってエリアが指定されているのみで、エリア内は自由というもの。不安を覚えながら入場してみると、まだ舞台上はセッティングの真っ最中。開演予定時刻の18時30分を過ぎた時点の様子が右の写真…

それでも、18時40分には、なんだか、なし崩し的に演奏が始まる。このコンサート、何故か客席は明るいままで、その後も、進行はかなりグダグダ。音響も酷い。音質無視の爆音で(こういうこともあろうかと、野外フェスのために用意していた耳栓を持っていって良かった)、演奏中にハウリングが起きることもしょっちゅうだし、ミュージシャンは「モニターの音が聞こえない」とPAに文句をずっとつけている。そのミュージシャン達も、自分の出番が無いときは、舞台上で隣の人とおしゃべりしたり、ちょっと席を外してミネラルウォーターのボトルを持って帰ってきたり、かなり自由と言うか、カオスと言うか…

MCは、完全にインド人向け(タミル語メインだったような)。日本語はおろか、英語もたまに出てくる程度。それでも、雰囲気は伝わるし、"Super Star"という言葉が聞こえると、次にやるのがRajinikanth主演映画の曲だったりして、まあ、分からなくは無い…。ただ、このコンサート、バックに来年1月に開校するInternational School(インド系の資本みたいだ)が付いているらしく、途中で、その学校のPRが入ったりして、ますますカオスっぽい。

ただ、歌手の皆さんは流石に凄い。映画で聴いていると、特殊効果を掛けているように思えてしまう超高音・超早口の女性ヴォーカルを、ライヴで観られたのは嬉しい。Rajinikanth主演映画からは「ムトゥ 踊るマハラジャ」(これは、会場も盛り上がった)と、"Kabali"(Rajinに扮装した人の小芝居付き…)。パンフレットにあった「バーフバリ」からの曲は演らなかったと思う。

メリハリの無いグダグダ進行、ただし、歌手の皆さんの歌唱力とバンド演奏(特に、ドラムスとトランペットは頑張っていたと思う)はしっかりしているという状況のまま、公演は3時間越え。恐らく、最後は会場サイドから巻きが入ったのだろう。MCが無理矢理な感じで割って入って、エンディングの挨拶(これまた、ガン撲滅基金の人が長々と喋ったり、学校関係者を表彰したり、なんだか訳が分からない)。全て終わったのは21時50分。

はっきり言って、いくらミュージシャンが一流でも、進行と音響がここまで低レベルの公演を、クラシック用ホールのミューザ川崎シンフォニーホールで開催したのは無理があったと思う。が、そこも含め、貴重な体験が出来たと思ってしまうのは、インド映画好きの甘さか。



「バーフバリ」を観て、それについて書くと、どうしても熱くなってしまいますが、今回「伝説誕生 完全版」を観た映画館では。近日公開されるという「ムトゥ 踊るマハラジャ」の4Kリマスター版の予告編が上映され、さらに熱くなってしまいました。やはり、私にとっては、"SUPER ☆ STAR" Rajinikanthこそが、ザ・インド映画だな。