IN/OUT (2018.10.21)

上着がいるかいらないかぐらいの、ちょうど心地よい気候になりました。が、逆に、何を着るのがベストなのか迷う季節とも言えますね。


in最近のIN

"Bossa Nova 60th anniversary GETZ / GILBERTO +50 Special Live"@ブルーノート東京18.10.13

日本のボサノヴァの第一人者、ギタリストの伊藤ゴローを中心にしたライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。

ボサノヴァが誕生して60周年。そして、名盤「Getz / Gilberto」(Stan GetzとJoão Gilbertoが連名で1963年に録音し、1964年に発表したアルバム)録音55周年を記念して開催されたというこのライヴに集まったのは、2013年に伊藤ゴローがプロデュースしたトリビュート・アルバム「ゲッツ/ジルベルト+50」のレコーディング・メンバーを中心に、坪口昌恭(ピアノ)、鈴木正人(ベース)、栗原務(ドラムス)、菊地成孔(サックス)、ヴォーカルに布施尚美、坂本美雨、カヒミ・カリィ、土岐麻子。そして、もちろん、伊藤ゴロー(ギター)。

まずは、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスの4人でスムースにスタート。続いて、菊地成孔と布施尚美が登場。菊地成孔は尖ったサックス・プレイヤーという印象なのだが、さすがにボサノヴァとなると、角の取れた穏やかな演奏だ。

このライヴは、2曲ずつ、ヴォーカリストが代わる趣向。次のゲスト・ヴォーカリストは坂本美雨。「ブルーノート東京はご飯が美味しいのよねぇ。休憩中に食べたので、1st Showよりテンションが高いの」と、食いしん坊ぶりは母親譲りだ。

続いて、カヒミ・カリィ。久しぶりに観たが、相変わらず、独特のオーラ。喋っているときもウィスパー。歌っているときもウィスパー。

最後のヴォーカリストは土岐麻子。ここまで、おとなしくお洒落サウンドを奏でていた菊地成孔がついに我慢が出来なくなったのか、土岐麻子の服装を「レイア姫」みたいだと弄って笑いを取る。彼女の二曲目、一番をポルトガル語で、二番を英語で歌う「イパネマの娘」で本編終了。

アンコールでは、4人の女性ヴォーカリストが勢揃い。ザ・ボサノヴァという感じの布施尚美。ニューエイジっぽい坂本美雨。ウィスパー・ヴォイスのカヒミ・カリィ。ジャズ風ポップスの土岐麻子。それぞれの個性を活かしながらも、伊藤ゴローを中心にした、どこまでも穏やかなボサノヴァの響きと、彩りを添える菊地成孔のサックス。なんとも良い感じだ。

一歩間違えば、ショッピング・モールや勘違いカフェに流れるBGMに堕してしまいそうなボサノヴァだが、流石に手練れのミュージシャン達。実に上質なライヴだった。たまには、こういう、ひたすら穏やかなライヴもよいものだ。


"2001: A Space Odyssey"@IMAX18.10.20

先日、国立映画アーカイブの70mm上映で観た「2001年宇宙の旅」が、期間限定でIMAX上映されているということで、TOHOシネマズ日比谷に行ってきた。

驚いたことに、一般向けIMAX上映でも、フォーマット通りに、照明はほの暗い状態で前奏曲2分53秒を流してから上映開始。途中、"Intermission"の字幕が出た後に休憩が入り、休憩後は、幕間音楽2分18秒を流してから上映再開。ただし、シネコンのスクリーンにカーテンや緞帳が無いのは、気分が盛り上がりきらずに残念。

IMAXは、当たり前だがスクリーンはデカく、クリアな映像だ。70mmのunrestored版は、ネガにあった傷や裂け目も本来の姿としてそのまま残されていたのだが、IMAX版は見事にノイズ無し。ただ、元が50年前のフィルム映画なので、最新デジタルリマスターだと、チグハグな感じも受けてしまう。CG一切無しで工夫を凝らしまくって撮影された映像は、IMAXのデジタル上映では、下手をすれば、特撮がチープに見えるリスクがあると思う(「2001」の場合は、それでも説得力のある映像になっているのが凄い)。先日フィルムで観たばかりということもあって、「2001」は、あの濃密なアナログ映像で観るべき作品だなと、改めて感じてしまった。あと、音響も、デジタル上映の音は、薄くて耳障りな気がした。やはり、IMAXは、最新のデジタル技術を駆使した作品を観るべきフォーマットなのだろう。

と、アナログ至上主義者のようなことを書いてしまったが、大画面は、その大きさだけで正義なのも事実だ。いくら大好きな映画でも、私は、この作品を自宅のTVで観る気はしない。大画面に没入して体感すべき作品なのだ。やはり、何年かに一度、映画館でリバイバル上映(それも、極力、大画面かつ高音質で)してもらいたいと思うし、そのためにも、多くの若い観客が今回のIMAX上映に足を運んでくれれば良いな、と思う。今では、小説版(Arthur C. Clarkeによる、極めて分かりやすい解答編)も容易に入手できるのだから、難解な作品といって敬遠しないでもらいたいのである。


"I Kill Giants"18.10.20

米国でベストセラーとなったグラフィック・ノベルを映画化した作品を観てきた。邦題は、「バーバラと心の巨人」。

主人公は、自分の事を「選ばれし巨人殺し」と信じる女子学生。彼女は、災厄をもたらす巨人から町を守るため、雷神トールのハンマーをポシェットに忍ばせながら、森の中に罠を仕掛け、大切な人の周囲に結界を巡らせる。当然、周囲からは変人扱いされ虐められるのだが、彼女の意思は強い。果たして、巨人は実在するのか? そして、彼女は巨人を倒すことができるのか?

映画が始まってしばらくは、主人公の事が、現実から逃避しファンタジーの世界に入り浸る中二病少女にしか見えず、なんとも面倒くさい。ある程度の理解は出来ても感情移入は無理。これは、ハズレの映画だと思っていたのだが、終盤、彼女が巨人と戦う理由が明らかになると、グッと来てしまうという仕掛け。きちんと伏線が張られた謎解きの面白さもあるし、巨人とのバトル・シーンもあるし、物語の着地点も巧みで、中々どうして、見応えのある作品だった。

映画の構造としては、"A Monster Calls"と似ていると思う。素っ気ないタイトルも似ている。ただ、"A Monster Calls"を原題に忠実な「怪物はささやく」とした邦題は見事だが、"I Kill Giants"を「バーバラと心の巨人」というゆるふわ邦題にした配給会社は、この映画のキモを分かってないような気がする…



昔は、季節が変われば、気の利いた服を新調、などと考えていたのですが、ここ数年、新たに購入した服は数えるほど。それもファスト・ファッションが主体。自分が歳を取ったからというのもありますが、服飾にかけるお金が減っているというのは、世の中全体の流れのようでもありますね。ちょっとつまらないかな。