IN/OUT (2018.2.18)

村上春樹が翻訳したチャンドラーの「水底の女」を読了。これで、チャンドラーの全長編 7作品を村上訳で読み返すことが出来ました。チャンドラーの作品を清水俊二の翻訳で読んだのは、かなり昔のことなので、リファインされた翻訳で再読して、チャンドラーの魅力を再発見。なんと言っても、最近のページ・ターナー的量産ミステリとは根本的に違う滋味深い文章が光っています。


in最近のIN

「現代美術に魅せられて 原俊夫による原美術館コレクション展18.2.12

原美術館1979年の開館以来、約40年にわたって収集されてきた原美術館の収蔵品から、原俊夫館長自らがキュレーションを行った展覧会を観てきた。この展覧会は前・後期の二部になっており、今回は前期。館長自ら、1970年代後半から80年代前半にかけて収集した作品が中心となっている。この後、3月21日からは、企画展の開催などをきっかけに収蔵された作品を主とする後期の展示に入れ替わる。

40年近く前の収蔵ということで、今では現代美術の古典と言えそうな作品が並んでいる。ポロック、ウォーホール、リキテンシュタイン、ナムジュン・パイク、アイ・ウェイウェイ、杉本博司などなど、有名作家の作品が目白押しだ。当時から高名だった作家もいるだろうが、その時点では、まだ評価の定まっていない作家もいたと思う。原館長の眼力の確かさを実感する。

草間彌生のミクストメディア「自己消滅」は、1980年の作品。今や、現代美術を代表するアイコンとも言えそうな彼女も、この時は、まだ知る人ぞ知る存在だったと思う。既に彼女の個性が際立っている印象的な作品だ。

個人的に嬉しかったのは、自宅にも飾っているメイプルソープの「花」のシリーズ 3作品が展示されていたこと。もちろん、原美術館に展示されているのは、大量生産ポスター屋から購入した物とは違う、ゼラチンプリントの作品ではあるが。

コレクション展は、音楽に例えればオムニバス盤のようなもので、1アーティストのオリジナル・アルバムに相当する企画展のような深さはないが、確実に楽しめるのが有り難い。そして、やはり、原美術館は自分好みの美術館であることを再認識する展覧会だった。


"The 9th Life of Louis Drax"18.2.12

少年を主人公にしたミステリー映画を観てきた。邦題は「ルイの9番目の人生」。

主人公は、9歳の少年。生まれてから何度も事故や食中毒を経験し、ついに9歳の誕生日、崖から海に落ちて昏睡状態になってしまう。果たして、彼の身に何が起こったのか?という話し。ただし、ミステリーとしては、極めて凡庸な作品だ。かなり早い段階で真相は推察できてしまい、謎解きの面白さや意外性は無い。

しかし、物語を、現在進行形の話、少年視点の回想部分、昏睡状態の彼の意識下の描写という三つの角度から描くという特異な語り口で飽きさせない。そして、もう一つ特徴的なのは、その映像センスだ。監督のAlexandre Ajaは、ホラー系の映画で名を売った人なので、どの画面も(ごく普通のシーンでも)、ホラー映画の様式に沿った絵作りになっていると感じるところが面白い。

因みに、Alexandre Aja監督の次回作は、寺沢武一の「コブラ」の実写化作品らしい。大コケすることも多い漫画のハリウッド実写化だが、この映像センスなら、Aja監督には期待できるかもしれない。


"Bahubali: The Beginning" & "Baahubali 2: The Conclusion"18.2.17

インドの大ヒット映画を観てきた。邦題は「バーフバリ 伝説誕生」と「バーフバリ 王の凱旋」。二部作の後半に当たる"Baahubali 2: The Conclusion"は、既に2回観ているのだが、"Bahubali: The Beginning"は見逃していた。が、やはり、この大傑作、二本続けて観たいという要望が多かったのだろう。チネチッタ川崎では、両作品を上映中なのである。

ということで、第二部の冒頭に流れる「前作の粗筋」でしか知らなかった第一部を、しっかり鑑賞(リバイバル特別料金で 1,000円なのも有り難い)。そして、第二部も(これが3回目だが)続けて鑑賞。合わせて5時間越えになるわけだが、場内を見渡すと、同じようにイッキ見している人も結構多いようだ。

改めて、この映画の傑作ぶりに魂を持って行かれてしまった。波瀾万丈のストーリー。美しいヒロイン。荒唐無稽だがキレキレのアクション。甘々のロマンチック・シーン。そして、歌とダンス。インド映画の良さが過剰なまでに詰まっている(だからこそ、日本版でミュージカル・シーンの一部がカットされている事は、許しがたい…)。因みに、今回は、隣のライヴハウス「CLUB CITTA'」監修のもと、サブ・ウーハーを増設したという「LIVEサウンド上映」となっており、映画の上映中ずっと、迫力の重低音が腹に響くのも素晴らしい。チネチッタ川崎、良い映画館だ。

本国では、第一部の公開が2015年7月、そして第二部の公開が2017年4月。つまり、奴隷戦士 Kattappaの衝撃の告白で第一部が終わってから約2年間、インドの人達は、その告白が本当なのか思い悩んだことだろう。それを、続けて観ることが出来る日本人は幸せだ、とも思ったのである。



ということで、村上氏の翻訳作業には大いに感謝するところですが、個人的には、偏愛しているロス・マクドナルドの作品も翻訳していただきたいところです。村上氏が最初に英語の原書で読んだ小説が、ロス・マクドナルドのハードボイルド作品だったと、何かのエッセイで読んだことがあるのだけどなぁ。