会場は、上杉神社に隣接する「伝国の杜」。山形県立の「置賜文化ホール」と、米沢市立の「米沢市上杉博物館」の2つが合築された立派な施設である。置賜文化ホールは、キャパ500人程度と小規模だが、スタインウェイのピアノを備えた音響の良いホールだ。最大の特徴は、本格的な能楽堂としても使用可能ということ。ウェブサイトの説明を引用すると
能や狂言を上演する際は、エントランスの能舞台がホールへ移動します。史上初の空気浮上式能舞台は、滑走路へ向かう飛行機のような音をたてて床からわずかに浮き上がり、方向を変えてステージへと移動します。
これを読んだ時には、ピアノと矢野さんを乗せた能舞台が飛行機のような音をたてて滑空してくる様を妄想してしまったが、もちろんそんなことはなく、通常のホール仕様での公演である。
「PRESTO」で始まった演奏は、ピアノよりもヴォーカルを前面に出したアレンジ。今回は、全体的にこういう傾向のアレンジが目立つと感じた。意外に熱かったのが「FLY ME」。アニメのエンディングで見た時は、それほど印象に残らなかったが、この日の演奏ですっかり見直してしまった。
鉄道オタクらしいエピソードや、お母様が会津の血を引いているなど、トークも好調。「なし」の演奏前には、「なし」と「さようなら」どっちを演奏しようか? と客席に問いかけるも、結局は両方演るという強欲な客&演奏者。ヴォーカルがしっかりと前に出た軽快な演奏が続くが、そんな中、「Rose Garden」は、Blue Noteでのトリオ演奏でも新しい驚きがあるのでは、と期待させるものだった。
本編ラストからアンコールにかけては、最近の定番パターン。満足度の高い公演だった。
なお、場内では、yanokamiグッズに、"Yeah / No(ヤー・ノー)" Tシャツと、物販も充実してました。
ユーミンの故郷、八王子。矢野さんは22年ぐらい前の出前で訪れて以来とのこと。会場のいちょうホールはキャパ802席。9割方は埋まっていただろうか。
夏のソロ公演での定番曲でスタート。やや、喉の調子が悪そうに思えたが、3曲目「GIRLFRIENDS FOREVER」の、かつてないほど奔放な演奏で不安は払拭。
その後、本人が「マイナー」と言う曲が続くが、「エリクシール」の美しい響き、久しぶりに聴いた「犬の帰宅」や「雨が空から降れば」など、印象的な好演奏ばかりだ。そして、比較的静かな曲調のものが続いた後の「ROSE GARDEN」。軽快かつダイナミックな、切れ味鋭い演奏で、本日の白眉。
アンコールで登場した矢野さん。「再登場まで時間がかかったのは、これを持ってきたから」と取り出したのは、八王子ラーメン・マップ。スタッフが楽屋に用意してくれていたそうで、本番前に早速一軒(「弘富」だったかな)、行ってきたと語る。熱のこもったラーメン談義に、場内の誰もがあの曲を期待する中、「今日はもう食べちゃったから」ということで、ラーメン仲間の上原ひろみさんの曲を演奏。そして、ラストは「ごはんができたよ」。これもまた力の入った素晴らしい演奏だった。
割に渋めの選曲と言えると思うが、どれも個人的には嬉しい曲ばかりだった。米沢の時以上に、緩急の付け方に格好良さを覚える演奏だったと思う。