2011年4月27日、東京・丸の内にあるライヴ・レストラン「COTTON CLUB」で、一日だけの弾き語り公演が開催されました。
これは、3月に起こった東日本大震災の影響で、多くのミュージシャンが来日を取りやめ、ブルーノート東京や、その系列店 COTTON CLUBで公演キャンセルが相次いだ状況になっていたところに、やはり出演予定のイベントが次々中止されていた矢野さんが、長年お世話になっているブルーノート東京のためにと、ソロ公演を急遽セッティングしたというものです。
チケットを取っていた日本フィルとの共演が中止となったところに飛び込んできたソロ公演。速攻で予約して参加することができた。系列店のブルーノート東京に行ったことがあっても、COTTON CLUBは初めてというお客さんは、私だけで無く、他にも多かったのだろう。開場前に、店の方が前説を行ってくれる。お高い雰囲気とは裏腹に、随分と場馴れした感じの、軽妙かつ的確な話し方で、ブルーノートを引き合いに出したシステムの説明がとても分かりやすかった。
2nd Showは、8時50分の開場。矢野さんの登場は9時45分頃。まずは、思いっきり崩した歌い方での「花」。そして「電話線」。歌詞がかなり怪しくなる箇所が目立ったが、それを押し切る力業の演奏。全体に、今日のピアノ演奏は、とても力強い印象だ。矢野さんの腕周りが、以前よりも引き締まっているように見えたのだが、そのあたりも影響しているのだろうか。最も好きな曲の一つ「GO GIRL」を、この力強い演奏で堪能できたのが、とても嬉しい。
MCは、ニューヨークでも花粉症があるという話、Will Leeが企画してくれた東日本大震災復興支援コンサートの話、そして、同じ日、ブルーノート東京で公演している上原ひろみの物真似(!)など。「相合傘」では、演奏の途中に「今のとこ、上原ひろみなら楽々、倍の速さで弾けるのに」と語るなど、力強い演奏の中、適度なリラックス感もあり良い感じだ。Gershwin兄弟の作品は、先日、Marc Ribotとともに出演したニューヨークのチャリティ公演でも演奏した曲だそうだ(歌詞に込められた深い思いを、開演10分前に教えてもらったとのこと)。
ラストは「股旅」からそのままピアノを弾き続け、ご挨拶、そして途切れること無く「ROSE GARDEN」という怒濤の流れ。そのため、一旦退場し、アンコールで戻ってきた矢野さんは、まだ息切れ状態。最後は、圧倒的なまでにパワフルな「いい日旅立ち」。
最初のMCでは、自粛ムードの現状に「ぷんぷん」と、軽く異議申し立てのような感じの発言もあったが、それ以外、特に直接的な言葉でメッセージを語ったりせず、選曲・演奏・歌唱ですべてを表現するのが、実に矢野さんらしいと強く感じた。選曲も私好みで、充実した公演だった。