IN/OUT (2024.1.28)

すっかり、目と鼻の不快感が増している今日この頃ですが、なぜかマスコミの報道では「今年のスギ花粉は2月上旬に九州から関東の一部で飛散開始」。いやいや、既に、しっかり飛んでいるはずだって…


in最近のIN

「クレモンティーヌ Special Live」@ビルボードライブ横浜24.1.23

ビルボードライブ横浜フランスの女性歌手、Clémentineの公演を観に、ビルボードライブ横浜に行ってきた。彼女のライヴを観るのは2013年のブルーノート東京以来、11年ぶりだ。

バックは、三浦拓也(DEPAPEPE)(guitar)、河内肇(piano)、notch(percussion)、藤谷一郎(bass)。

21時、パフォーマンス開始。ドラムスでは無くパーカッションがリズムを刻むので、なんとも軽やか。実にお洒落な、ボサノヴァ風フレンチ・ポップスだ。

「Moon River」や「Un homme et une femme(Francis Laiの「男と女」)」など、王道のお洒落ソングが続く。この人、声量が有る訳では無いし、特徴的な声質という訳でも無い。可愛い人だが、個性的な美女という訳でも無い。ただただ上品なセンスの良さで、1988年のデビュー以来、活躍を続けているのだから、大したものだ。

そして、ここからが、彼女のライヴのお楽しみ。フランス語で歌う「スーダラ節」、「風の谷のナウシカ」、「はじめてのチュウ(from「キテレツ大百科」 / これは、英語詞)」、「ラムのラブソング(from「うる星やつら」)」、「バカボン・メドレー(from「天才バカボン」)」のつるべ打ち。いずれも、ボサノヴァ風味のサウンドが心地よし。「バーカボンボン」をフランス語の発声で歌われると、なんとも可愛い。

ここで、一旦、Clémentineは舞台から捌け、バンドが繋いだ後、お着替えして登場。そして、スペシャル・ゲストとして、アニソン系の作品が多い作曲家 神前暁を呼び入れる。彼が音楽を担当したアニメ映画「傷物語」で主題歌を歌った縁ということだ。神前暁は、作曲家なので、あまり人前でのパフォーマンスは得意では無いと言いながら、味わいのある鍵盤ハーモニカで演奏に参加。「Étoile et toi(from「傷物語 -こよみヴァンプ-」)」。そして、神前暁の新曲。本編最後に「Les Champs-Élysées(オー・シャンゼリゼ)」。

アンコール、まずはピアノと二人で「Comme d’habitude」。あの「マイ・ウェイ」の原曲だ(オリジナルの歌唱はClaude François)。英語だとオヤジ臭漂う曲だが、フランス語で歌われると何ともお洒落。そして、バンドともう1曲披露して(これは、曲名が分からなかった)、全編終了。

流石に、前回観たときからは歳を重ねられたなぁという感じはあったが(お互い様である)、上品な可愛らしさは維持したままだ。軽やかな演奏をバックに自然体で歌う姿、そしてフランス語の雰囲気ある響きに、なんともリラックスできたライヴだった。


”PAT METHENY & RON CARTER with JOE DYSON”@ブルーノート東京24.1.24

ブルーノート東京ジャズ・ギタリスト、Pat Methenyの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。

彼は、2023年発売の最新アルバム"DREAM BOX"を携え、ソロ・ツアーで来日中だが、その合間に、レジェンド級のベーシスト Ron Carterと若手ドラマー Joe Dysonを加えたトリオでクラブ公演を開催という貴重な機会だ。彼のライヴは、2019年にブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラとの共演を観て以来だ。

ステージ上、向かって左にPat(椅子に腰掛けての演奏)、中央にRon、右にJoeの布陣。落ち着いた紳士然としたRon Carter(86歳)、爆発したようなパーマヘアの天才肌 Pat Metheny(69歳)。二人のカリスマ・ベテランに対し、Joe Dysonは1989年生まれの30代。3世代が並んでいるようにも見える。

演奏は「All Blues」からスタート。ブラシを駆使した静謐なドラムスと、控え目ながら素晴らしいタイミングと音色のベースがリズムを支え、透明感溢れるPat Methenyのギターがメロディーを奏でる。

Pat Methenyは、うつむいて、目を閉じ、全集中してギターを弾き続ける。観客へのサービス的な挙動は一切無し。RonやJoeとのアイ・コンタクトもしていないように見える。それなのに美しく調和する響きに、3人の実力と、互いへの信頼関係がうかがえる。そして、MCも無い。終始、無言。それでも、曲が終わる度に、なんとも無邪気な笑顔を見せるところが、永遠の天才ギター少年という風情だ。そんな彼に、たまに、ちょっかいを出すRon Carterが渋くて可愛い。

2曲目も、Miles Davisの「Seven Steps to Heaven Bye Bye」。そして、「Blackbird」、「81」、「Stella By Starlight」、「Someday My Prints Will Come」。Ron Carterのソロ(途中に「荒城の月」のフレーズを挟む茶目っ気有り)があって、「No Greater Love」。本編ラストは「So What」。曲のチョイスは、PatよりもRon Carter寄りという感じだ。有名曲も多く、知っているフレーズも出てくるのだが、ジャズの曲名は、正直、私には分からないものが多い。が、今回、ステージに極めて近い席だったので、演奏者の足下に置かれたセットリストをバッチリ視認することができた。

が、曲名とかは、この際、どうでも良い。3人とも、その曲の基本となるフレーズは活かしながらも、どんどん展開していく。全体としては、落ち着いた雰囲気だが、若干の緊張感もはらんだハーモーニーが美しく、そして、要所要所でギターとドラムスの馬鹿テクが炸裂(さりげなく、Ron Carterも色々仕掛けている)。なんとも贅沢な音空間だ。

アンコールは、Pat Methey寄りの選曲「Cantaloupe Island」(作曲はHerbie Hancockだが)。超満席になったブルーノート東京、観客全員、スタンディング・オヴェイションで全編終了。

やはり、Pat Metheyの天才ぶりは見事だった。そして、Ron Carterの渋い佇まいと、若手ながら素晴らしいテクニックを見せつけたJoe Dyson。実に見応え・聴き応えのあるライヴ、というよりも、何か、とんでもないものを観てしまったとすら思える体験だった。


”Poor Things”24.1.27

Yorgos Lanthimos監督の新作を観てきた。彼の作品は、”The Lobster”、”The Killing of a Sacred Deer聖なる鹿殺し)”、"The Favourite女王陛下のお気に入り)"を観ているが、いずれも、捻くれていて、不快感が心地よくなるような変テコな作風で、癖になるのだ。今回は、"The Favourite"で強烈な印象を残したEmma Stoneを主演とプロデューサーに迎え、Mark Ruffalo、Willem Dafoeら有名俳優も出演する、期待の新作だ。邦題は「哀れなるものたち」。

舞台は19世紀末のロンドン。Willem Dafoeが演じる天才外科医は、自殺した若い女性の死体から、大人の肉体と赤ん坊の精神を持った新たな女性=Emma Stoneを創り出す。彼女は、当初は、肉体と精神のアンバランスから奇行が目立つが、徐々に、知性と大人の女性としての悦楽に目覚めていく… というお話。Mary Shelleyの「フランケンシュタイン」とH. G. Wellsの「モロー博士の島」を混ぜこぜにしたところに、フェミニズム的視点をトッピングしたような、奇想の物語だ。

死体から蘇り、無垢の魂を持つ主人公だからこそ固定概念に縛られず、進歩を希求し、それが女性の自立という現代のフェミニズム的な思想を体現する。それに対して、彼女を縛り付けようとする男たちの哀れなこと。唯一まともなのが、マッド・サイエンティストとその弟子だけという皮肉。これだけ取り上げると、説教臭い物語のようだが、そこには留まらない。

時には魚眼レンズのような歪みを伴う凝った画角。モノクロとカラーの使い分け。近未来的ですらある19世紀の街並みの造型。そうした視覚的刺激に加え、不協和音を含む、独特の音楽。Yorgos Lanthimos監督らしさが炸裂する世界を、さらに押し広げるEmma Stoneの振り切った演技。この不穏な熱量の相乗効果に、すっかりやられてしまう141分間。ここまで度肝を抜かれる映画体験は久しぶりだ。大傑作である。


「江口寿史展 ノット・コンプリーテッド」@世田谷文学館24.1.27

世田谷文学館江口寿史の展覧会を観に、世田谷文学館に行ってきた。2022年に訪れた千葉県立美術館での回顧展が「女の子のイラスト」がメインだったのに対し、この企画は、江口作品の〈漫画〉にスポットを当てた世田谷文学館ならではの展覧会ということだ。

世田谷文学館京王線 芦花公園駅から徒歩5分ほど、閑静な住宅地にある世田谷文学館。入り口から気合いが入っている。

世田谷文学館〈漫画〉にスポットを当てた展覧会と言っても、やはり、会場に足を踏み入れると、美少女イラストが出迎えてくれる。

世田谷文学館が、そこから先は、「ストップ!! ひばりくん!」、「すすめ!!パイレーツ」、「寿五郎ショウ」、「江口寿史のなんとかなるでショ!」、「江口寿史の爆発ディナーショー」などなど、彼のギャグ漫画の数々の原画が大量に展示されている。しかも、ほぼ全て撮影可能という大盤振る舞いだ。

私は、いわゆる少年漫画誌を買ったことは無く、熱心な漫画読者では無かったはずなのだが、トーマス兄弟の「そッれッだッけッなッらッばッまッだッイイがッ」とか、大傑作漫画「圧縮」(ゴジラ映画が復活している今こそ、再評価されて欲しい!)に再会できて、一気にタイム・スリップした感覚だ。嬉し懐かし、という奴である。なんやかんや言って、結構、読んでいたのである。それにしても、彼のギャグ・センス、好きだなぁ。

世田谷文学館センスと言えば、1980年1月~8月に聴いたレコード、ベスト8という雑誌記事の原稿が展示されていたが、そこに記載されているアルバム、特に、洋楽の部が、John Foxx、Madness、Ultravox、Andy Partridge、The Flying Lizards、The Specials、The Human Leagueという、私も全面的に支持する涙もののラインナップだ。邦楽の部も、ムーンライダーズ、一風堂、高橋ユキヒロ、イエローマジック・オーケストラ、サンディー、プラスティックス、etc. やはり彼のセンス、大好きなのである。



マスコミの公式発表よりも前から花粉症の症状が出るのは、毎年恒例という気がします。私が特別に敏感という訳では無いと思うのですが…。こういうのも、陰謀論者にかかると、闇の勢力による花粉飛散開始時期の隠蔽工作ってことになるのかしらん?