IN/OUT (2024.2.4) |
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関西出身の人間としては、恵方巻きが全国区になったことに、ちょっと違和感を覚える今日この頃です。 最近のIN”PAT METHENY Dream Box Solo Tour”@ブルーノート東京 (24.1.31 & 2.4)先週に続いて、水曜日、ジャズ・ギタリスト、Pat Methenyの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。今回は、彼のソロである。 開演前。ステージ上には、黒い布で覆われた巨大な物体がいくつか置かれている。中身は謎だ。そして、本人登場前に、あらかじめ録音されていたメッセージが流れる。生真面目な人柄がうかがえる話し方だ。ソロで行うツアーは、彼の長いキャリアの中でも、今回が初めてだそうだ。 Pat Methey登場。まずは、アコースティック・ギターによる内省的なプレイからスタート。例によって、終始うつむいたまま全集中でギターを奏でる。ただし、今回は、演奏後に少し喋る。先週は、偉大な先輩、Ron Carterに敬意を表しての無言だったのかもしれない。もっとも、喋ると言っても、使用したギターを紹介する程度だが(バンド演奏で、ソロ・プレイを披露したメンバーを紹介するみたいな感じ)。彼の中で、ギターは擬人化されているのだろう。根っからのギターおたく・音楽おたくっぷりが伝わってくる。 その後も、ギターを取っ替え引っ替え(非対称ツイン・ネックの変わったギターや、バリトン・ギターなども含む)、様々な奏法と音色で演奏を続ける。繊細な響きを奏でるときもあれば、時には激しくかき鳴らし、さらには、ノイジーで超攻撃的な音を轟かせる時もある。 後半は、エレキ・ギターで、冒頭に弾いたリフをループさせ、そこにメロディーを重ねるという演奏も多用。ソロ公演ではあるが、バンド・サウンド的な盛り上がりも聴かせてくれる。 アンコールでは、ついに、謎の物体群に掛けられた黒い布が外される。そこには、様々なパーカッションを自動演奏するマシーン「オーケストリオン」が!(2010年の公演で披露されたものから、クラブのステージに合わせて一部抜粋した小型版のようだ)。中身はハイテクで制御しているはずだが、カラクリっぽい雰囲気で、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさだ。その賑やかなリズムをバックに、ギターを弾きまくるPat。次々とギターを持ち替え、音を重ねていく。彼のおたくっぷりが全開。複数の楽器の音が必要なら、普通は打ち込みで済ませるところ、わざわざ本物の楽器を圧縮空気を使って自動演奏するとは、なんだか、自作の怪しい機械に囲まれたマッド・サイエンティストの趣もある。が、楽しさMaxである。今週も、凄いものを見せていただいた。 せっかくなので、今回の日本ツアーの最終公演、日曜日の2nd Showにも行ってきた。というか、まずは最終公演を押さえてから、水曜日に、もう1公演を予約していたのだ。 ブルーノート東京のスタッフと話したところ、彼は、随分と早くクラブ入りし、ずーっとギターを弾いているとのこと。「賄いを食べている時にも、彼のギターが極上のBGMになっているという贅沢」を堪能されていたそうだ。 セット・リストは同じだと思う。今回も、様々なギターを様々な奏法で弾きまくる。縦横に弦が張られた異形のギターなんかも、通常のギターと変わらず弾きこなしている。そして、今回も感心したのが、ループの使い方だ。ライヴで複数のループを重ねる技量には驚くばかりだ。 そして、アンコールでは、オーケストリオン君が活躍する中、Patも4台のギターを駆使して音を重ねる熱演。大興奮である。最終日なので、もしかしたらという期待から、観客席が明るくなった後も、アンコールの拍手が長時間続いたが、再登場は無し。もちろん、あれだけの熱演を披露してくれたのだから、文句は無い。つくづく、凄い人だ。 ”Stop Making Sense” (24.2.3)Talking Headsのライヴを、名匠 Jonathan Demme監督がフィルムに収めた1984年の傑作映画「Stop Making Sense」が、4Kレストアされ、公開されている(それも、IMAXで!)。オリジナルの公開当時、サブカル・キッズの必修科目のような映画だったが、いまや、私の記憶は曖昧に…。しかし、2021年に観た、David ByrneのショーをSpike Lee監督が映画化した”American Utopia”が素晴らしかった印象が強く、この機会に再見してきた。 冒頭、ラジカセを持ったDavid Byrneが1人で登場し、「Psycho Killer」を演奏。その後、徐々にメンバーが増えていき、途中、Tom Tom Clubの「Genius of Love」も挟んで、「Crosseyed and Painless」で大団円を迎えるまで、怒濤の名曲つるべ打ち。このライヴ・ツアーが行われた1983年は、「Burning Down the House」がシングル・ヒットを記録したバンドの黄金期だけに、超充実のセット・リストである。 そして、構成・照明・振り付けと、ステージの演出全てが素晴らしい。David Byrneの才気が炸裂。クリエイターとしてだけでなく、パフォーマーとしての彼の能力の高さにも驚かされる。 Jonathan Demme監督は、この超充実のパフォーマンスを、荒々しいカメラ・ワークで記録し、舞台の熱量と観客の熱狂を見事に捉えている。ライヴ映画の傑作としていまだに語り継がれているだけの事はある。4Kレストア版を製作・公開してくれた製作会社 A24に大感謝だ。そして、これだけ凄い映画なのに、記憶が曖昧になっていたとは。自分の不明を恥じるばかりである。 「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」@国立科学博物館 (24.2.3)ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」をテーマにした展覧会を観に、国立科学博物館に行ってきた。もともとは、2020年の春に開催予定だったのが、直前になって新型コロナウィルスの影響で中止となり、3年越しの開催になったという展覧会だ。 展示は、予想を超える充実ぶりだ。まずは、日本各地の水の硬度についての解説(各地で販売されているペットボトルの展示付き)から始まり、キノコ、山菜、野菜、米と大豆、魚類、海藻、発酵、だしと、大量の標本を駆使しつつ、テーマ毎に深掘り。 そして、後半は、縄文から弥生時代、さらに時代をたどり、江戸の食文化、そして、信長が家康をもてなした饗宴での料理や、江戸幕府がペリーに振る舞った料理。近代の洋食や中華を取り込んだ食事まで、日本ならではの食品サンプルを駆使して再現されている。 さらに展示解説には、スーパーマーケットで売られている鮭とサーモンの違い=サーモンは養殖されたアトランティック・サーモンで、鮭とは分類学的にはイエネコとチーターほど違う、といったトリビアが満載。サザエさんの漫画(アニメでは無く、漫画)からの引用で昭和の食生活の変遷を説明するなど、解説の工夫も素晴らしい。そして最後には、ニホンウナギの人工孵化レプトセファルス幼生の生きた展示も! ということで、じっくり見ていたら、丸一日かかりそうな質と量。もう、国立科学博物館が全力を出し切ったという感じだ。 しかし、問題は、展示があまりにも充実していて評判が良いのか、入場者が多数。入場まで20分待ち。入場しても、展示の前には二重三重の人垣が…。全国の博物館が資金不足に悩んでいる現状を考えれば仕方ないのかもしれないが、観る側としたら、コロナ禍での厳しい入場者数制限が懐かしいとも思ってしまった。 節分の夜、スーパーに行くと、5割引になった恵方巻きが大量に陳列。1本ではなく、ハーフというのも増えていますが、それでも、太巻きはでかい。ちょっと無理がある流行のような気もします。 |