IN/OUT (2023.3.19)

桜も咲き始め、彼岸入りとなったところで、冷たい雨。春直前の足踏みのような土曜日でした。


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「シン・仮面ライダー」23.3.17

T・ジョイ PRINCE 品川庵野秀明が監督・脚本を手がけた「シン・仮面ライダー」の「全国最速公開記念舞台挨拶中継付き上映」を観てきた。

本編上映開始前、18時から、新宿バルト9で行われている舞台挨拶が全国399館に生中継される。登壇したのは、池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、西野七瀬、手塚とおる、塚本晋也の6名。当たり前だが、上映前にネタバレを話すわけにもいかないので、それほど盛り上がるトークという訳では無いが、まぁ、有り難みはある。庵野秀明が出ないのは残念だが。

25分ほどの舞台挨拶の後、いよいよ本編上映。かなり期待値は高かったが、それには十分に応えてくれる、隅々まで庵野色たっぷりの映画だ。と言うか、庵野濃度、極めて高めである。過去作品を、原典の設定やディテールを尊重しながら、「シン」解釈によって現代風にアップデートする手腕には、いつもながら唸るばかりだ。今回は、リアルを追求した「シン・ゴジラ」よりも、お子様向け設定の甘さを敢えて残した「シン・ウルトラマン」に近い感触。終盤の展開には「シン・エヴァンゲリオン劇場版」的要素も入っているようで、いささか辛気くさい感じもあるが、まあ、庵野秀明の作家性として許容するしか無い。

また、石ノ森章太郎作品(仮面ライダー以外の作品も含む)オマージュが、あちこちに仕込まれているのもお楽しみポイント。まさか、あのキャラが登場するとは!という驚きも多数。事前に公表されていなかった意外な俳優の出演もサプライズだ。

そんな中、私が最も刮目したのは、仮面ライダーがショッカー戦闘員を軽々となぎ倒すテレビでお馴染みのシーンが、実は無慈悲な暴力シーンであると看破した着眼点だ。流石だな。


「SPEEDSTAR RECORDS 30th Anniversary『LIVE the SPEEDSTAR』supported byビクターロック祭り」@幕張メッセ国際展示場 9~11ホール23.3.18

幕張メッセ国際展示場ビクターエンタテインメント内のレーベル、SPEEDSTAR RECORDSが、設立30周年を記念して開催するフェス、「LIVE the SPEEDSTAR」を観に、幕張メッセ国際展示場に行ってきた。

国際展示場の9~11ホールをぶち抜き、二つのステージを設置。9ホール部分に設置されたメインの「Bark Stage」の前方はスタンディング・エリア、後方に座席(指定席)エリア。11ホールにはサブの「Roar Stage」。こちらはスタンディング・エリアのみ。それぞれのステージで交互に演奏とセット・チェンジが行われるという訳だ。両ステージの真ん中、10ホールは飲食エリアとなっている。私は、指定席を確保。無理はしない戦術で望むことにする。

10時30分過ぎ、オープニング・アクトのMaverick MomがRoar Stageで演奏を始めているのを横目に、Bark Stageの座席エリアへ。このエリアの中では真ん中辺りだが、前方にスタンディング・エリアがあるので、ステージはかなり遠い。が、十分に許容範囲だ。

Bark Stageのトップは11時スタートのGRAPEVINE。最後につじあやのがゲスト出演し、「Shiny Day」。つじあやのの作品だが、レコーディングではGRAPEVINEがバックを務めたという曲。それが再現された訳だ。フェスの醍醐味である。

続いて、スガ シカオ。過激な歌詞で放送禁止になっている「バニラ」、KAT-TUNに提供した「Real Face」(作詞:スガシカオ、作曲:松本孝弘)のセルフ・カバー、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」のテーマ曲「Progress」など、話題曲、お馴染みの曲が聴けて、楽しい。

ここで、席を立ち、Roar Stageでつじあやの。デビューから23年経つが、変わらないなぁ。ウクレレ弾き語りの明朗サウンド。

Bark Stageのスタンディング・エリアに移動し、UA。圧倒的な存在感。シャーマン的な佇まいだと感じる。中毒性がある名曲「情熱」をライヴで聴けたのが嬉しい。

次は、KREVA。スタンディング・エリアの混み具合が激烈になりそうなので、座席に戻る(これ以降は、ここに定着)。私のような門外漢にも聞き心地の良いラップ。フェスでは何度か観たことがあるが、つくづく、頭の良い人だと思う。

くるり。彼らの曲は、ほとんどを矢野顕子がカヴァーしたヴァージョンで聴いているという感じだが、オリジナルで聴く「ばらの花」はつくづく良い曲。くるりが、クオリティの高い楽曲を作るだけでなく、演奏力も高いバンドであることを実感する。

そして、この日、会場が一番盛り上がったと思われる星野源。座席エリアの人達もほとんどが立ち上がる。しかし、そこは才人 星野源。敢えてのギター弾き語り。しかも、3曲目には「スーダラ節」。4曲目の鉄板曲「恋」も弾き語りのバラード・バージョンで恋ダンスを封じるという変化球。ここで、ギタリストの長岡亮介を呼び込んで、二人でアップテンポな「化物」と「地獄でなぜ悪い」を演奏するが、最後は再びしんみりと「くだらないの中に」で締める。巧みだなぁと思うし、コアなファンの人ほど喜んだんじゃないかな。そして、芸能人としてのオーラが、他の出演者とは段違いだと実感。

斉藤和義、メジャーな人だし、実力もある人だと思うが、私は「ずっと好きだった」と「歩いて帰ろう」をCMソングで知っている以外(両曲とも、演奏してくれた)、ほとんど知らないし、ライヴも初見だ。こういう、接点の無いミュージシャンの演奏を観ることが出来るのもフェスの醍醐味だ。

SPEEDSTAR RECORDSの発足時から所属しており、本来なら、今日の出演者に名を連ねていたはずのシーナ & ロケッツ。鮎川誠の追悼で、ここで映像が流れる。ただ、雑な編集で、いささか残念。

そして、トリは矢野顕子である。Roar StageからLOVE PSYCHEDELICOのライヴの音が漏れ聞こえてくる中、矢野顕子と岸田繁、本人が登場してサウンド・チェックをしているのを観られるのが楽しい。

改めて、本番。矢野顕子の弾き語り開始。まずは、「ラーメンたべたい」、「音楽はおくりもの」。さらに、作曲がギター奏者のPat Methenyなので、やたら音域が広いという話を交えて「PRAYER」。

「今日は、この曲をくるりも演奏したそうですが、矢野は気にしません」との発言の後、矢野版「ばらの花」。そして、作者登場ということで、岸田繁が呼び込まれる。アコースティック・ギターを抱えた岸田繁と「PRESTO」をデュエット。さらに、岸田繁がエレキ・ギターに持ち替えて「おいてくよ」。二人での演奏というのは、かなりレアな機会だ。二人、ハグして、岸田繁退場。

再び、矢野顕子のソロで「ドラゴンはのぼる」。素晴らしく気合いの入った、迫力の演奏。これは凄かった。そして、最後は「ひとつだけ」、これで、イベント全体が締めである。

丸一日、これまで観る機会が無かったミュージシャンのライヴも楽しむことができた。屋内の着席で体に優しいのもGood。そして、何より、あの充実のパフォーマンスで、これまで矢野顕子の事をよく知らなかった人達にも、きっと、その素晴らしさが伝わったに違いないと思えたのが嬉しいイベントだった。



冷たい雨でもスギ花粉は飛ぶ。ライヴ会場でも、演奏中のスガシカオが、鼻水に困ってましたね。