IN/OUT (2023.3.12)

3月初旬でこんなに暖かかったっけ? と思うような陽気です。それはありがたいのですが、花粉も大量飛散中。本当は、こういう時期に外を歩くのは嫌なのですが、イベントがあればやむを得ない…


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「吉松隆の<英雄>」@東京芸術劇場23.3.11

東京芸術劇場作曲家 吉松隆の公演を観に、東京芸術劇場コンサートホールに行ってきた。

これまで、私は存じ上げなかったのだが、吉松隆は1953年生まれ。Wikipediaによれば、高校時代から交響曲作家を目指しながら、これからの音楽にはコンピューターが必要だろうと考え、慶應義塾大学工学部に進学したという異色の経歴の持ち主ということだ。交響曲などの管弦楽曲の他に、邦楽やNHK大河ドラマ「平清盛」の劇伴、さらには柴田恭兵の「RUNNING SHOT(「あぶない刑事」挿入歌!)」の作曲なども手掛けている。

今回は、彼の1998年の作品「交響曲第3番 op.753番」をメインに、「鳥は静かに…op.72」、「鳥たちのシンフォニア "若き鳥たちに" op.107」、そして、Keith Emerson & Greg Lake作曲・吉松隆編曲の「Tarkus」の演奏が予定されている。当然、私は、「Tarkus」目当てである。奇しくも、この日、3月11日はKeith Emersonの命日でもある。

さて、演奏開始。いわゆる小難しい現代音楽とは真逆の、聴きやすい印象だ。特に、仙台ジュニアオーケストラ設立20周年記念として書かれたという「鳥たちのシンフォニア "若き鳥たちに" op.107」は、冒頭の、様々な楽器が自由に鳥の鳴き声のようなサウンドを奏でるところから興味深く引き込まれる。

そして、お目当ての「Tarkus」。EL&Pの曲がオーケストラと相性が良いのは当然だと思うが、さすが、プログレ好きで知られる吉松隆がアレンジしただけに、オーケストラのパワーを出し惜しみ無く発揮する迫力だ。このアレンジは、2013年に東京オペラシティで行われたコンサートでKeith Emerson自身も聴いたということだが、まさに、本家も認めるオーケストラ版なのである。まぁ、3人で演奏しているオリジナルの迫力を考えると、いかにEL&Pが凄いバンドだったか分かるという気もするし、弦楽四重奏という制約の中で圧巻の演奏を見せたモルゴーア・クァルテットのバージョンも見事だったなぁとも思う。

休憩後、メインの「交響曲第3番 op.753番」。これまた、プログレ味のあるカッコ良い曲だ。交響曲と大袈裟に構えるよりも、迫力有る劇伴という印象。演奏後、吉松先生が登場し、ご挨拶。気難しい現代音楽家ではなく、人柄良さげなおじさんという感じだ。

これまで不勉強だったが、「Tarkus」以外も、しっかり楽しめる吉松隆の世界だった。


"STING MY SONGS JAPAN TOUR 2023@有明アリーナ23.3.11

有明アリーナStingの来日公演を観に、有明アリーナに行ってきた。

2019年の彼のアルバム「My Songs」は、The PoliceとStingのソロの代表曲から20曲を選び、セルフ・カヴァーした作品だ。アルバム発売後、同名のワールド・ツアーを行ってきたが、The Policeの1stアルバム「Outlandos d'Amour」発売45周年のタイミングでの来日公演となった。因みに、Special Guestとして、息子のJoe Sumnerも帯同している。

会場の有明アリーナを訪れるのは初めてだが、オリンピックに向けて2019年に竣工した新しく綺麗な施設だ。開演前の客入れの音楽が、David Bowie、Blondie、The Cure、Echo & the Bunnymen、Tears for Fears、New Order、Bow Wow Wow、Peter Gabrielなどなど、客層を意識したような選曲なのが嬉しい。

さて、私の席は、アリーナの最前列!ファンクラブに入っている友人に感謝である。演奏は、前座のJoe Sumnerのパフォーマンスから。ギターをかき鳴らしながら歌う曲は、悪くはないし、歌唱力もある。MCの日本語も妙に上手い。ただ、圧倒的な個性がある訳でも無く、親の七光り以上のものは感じないかなぁ…。それでも、しっかり盛り上げているお客さん達、偉いなぁと思ってしまった。

30分ほどで前座が終わり、15分ほどのインターバルの後、いよいよSting登場。ドラムス、ギター、キーボード、ハーモニカ、コーラス二人のバックを従え、ワイヤレス・マイクを装着し、舞台を縦横に移動しながら歌い、ベースを弾く。まずは、The Policeの代表曲の一つ ”Message in a Bottle"、そして、ソロ転向後の"Englishman in New York"、さらにThe Policeの"Every Little Thing She Does is Magic"。ガッツリ観客のハートを掴む選曲だと思う。私の席は左寄りだったが、かなりの頻度でStingが近くまで来てくれて、嬉しい。歌声もベース・プレイも、71歳にして全く衰えていない。

そこからも、"If it’s Love"、"Loving You"、"Rushing Water"、"If I Ever Lose My Faith in You"、"Field of Gold"、"Brand New Day"、"Shape of My Heart"、"Heavy Cloud No Rain"、"Seven Days"、”Mad about You”、"What Could Have Been"、"Wrapped Around Your Finger"、"Walking on the Moon"、"So Lonely"、"Desert Rose"、"King of Pain"と、怒濤の名曲ラッシュ。そして、本編ラストは、The Policeの大ヒット曲 "Every Breath You Take"。もう、最強である。

アンコールの、"Roxanne"でも、疲れを見せず、ベースをがっつり弾き倒しながら、観客とのコール&レスポンスもたっぷり。そして、締めはしっとり"Fragile”。

私としては、やはりThe Police時代の曲に思い入れがあるので、マイ偏愛アルバム"Synchronicity"からの曲(特にB面)を多く取り上げてくれたのも嬉しい。極めて満足度の高いパフォーマンスだった。

コンサート全体、無駄を廃し、とにかく名曲をきちんと届けることに集中したようなスムースな進行だったのにも感心した。”King of Pain”でJoe Sumnerを再び登場させる Stingの親馬鹿ぶりは、まぁ、ご愛敬かな。



建物は好印象だった有明アリーナですが、帰りは地獄でした。

まず、アリーナ席から会場外に出るのに大苦労。何を考えたのか、規制退場で最初に出口に向かうように指示されたのが、出口から一番遠いアリーナ最前ブロック。普通は出口に近い所から出すだろう?しかもこれだけキャパの大きな会場(15,000人)なのに、出口は1箇所。結果、通路は規制退場の意味が無くなる大渋滞。

会場からようやく出ても、最寄りと言える駅が無い。ゆりかもめの新豊洲駅から徒歩8分、有明テニスの森駅から徒歩8分、りんかい線の国際展示場駅から徒歩17分、東雲駅から徒歩17分。それに追い打ちを掛けるように、会場周辺でのコンサート・スタッフの交通整理が、混雑で辟易しているお客さんの神経を逆なでするような要領の悪さ。

結局、想定していた時間の倍を浪費して自宅へ生還。ハードはともかく、ソフト面では問題大ありの施設だと痛感した次第。