前年に発売された、テクノ色の強かったアルバム「飛ばしていくよ」のピアノ弾き語りバージョンのレコーディングライヴが、渋谷区文化総合センター 大和田 さくらホールで開催されました。
前年に発売された傑作アルバム、「飛ばしていくよ」。テクノ色が強いアルバムを、今回はピアノ弾き語りで、ということだが、正直、企画を聞いたときは、「飛ばしていくよツアー 2014」の中で一度行われたピアノ弾き語りバージョン@モーション・ブルー・ヨコハマと、どう違うの? という気がした。疑問を抱えつつ、渋谷、セルリアンタワー東急ホテルの裏の坂を登って、会場へ。
一曲目から、確かに、昨年の横浜でのライヴとは、アレンジを変えてきている。時には、「実験的」という言葉が浮かぶほどの変え方。MCでご本人もおっしゃっていたが、二度と同じ演奏・アレンジはしない矢野さんの面目躍如という感じ。レコーディングということで、歌詞、滑舌、ピアノタッチなどに、かなり、気を配った演奏という気もする。「電話線」で、一人でエコー風の歌唱にトライしたところなど、後からレコーディング技術で補正するのではなく、あくまでも生歌・生録りに拘る姿勢が伺え、これまた、面目躍如と感心。
「リラックマのわたし」の、今日のホットケーキは「6枚重ね」。オリジナル歌詞の「3枚重ね」だと、日本サイズのホットケーキでは当たり前に一人で食べられちゃうという理由…
この日は、忌野清志郎さんの命日。直接、そのことには触れず、翌日、NHKで放映されるドラマの話につなげての「きよしちゃん」。ここから、「飛ばしていくよ」収録曲以外の演奏も披露しはじめ、エンジンが本格始動。レコーディング・モードから、いつものライヴ・モードに切り替わったという感じ。「青い山脈」と「愛の耐久テスト」はシームレスに続けて演奏されたが(深い意味は無く、キーが同じだからということらしい)、アルバム中、もっともヘンタイ的サウンド(私的には褒め言葉です)だと思っている後者の個性が、さらに引き出された演奏だったと思う。さらに「ISETAN-TAN-TAN」で、もう一段、演奏の自由度が高まったと感じたが、逆に、MCと被り気味に曲がスタートしたり、歌詞が怪しくなったりして、レコーディングとしては大丈夫かな?でも、これぐらいの勢いをそのまま記録して商品化していただくのも良いような気もするな。
「飛ばしていくよ」の熱演で本編終了。アンコールで再登場すると、まずは、放映中のトヨタのCM収録秘話を披露。三日間の弾丸スケジュールで来日して撮影するも、キムタクとの共演は無く別録り。共演(?)予定だった子鹿も、当日、体調が悪いと言うことで別録りになったなど。その流れで「丘を越えて」。さすが、40年歌い続けられていても、今回も新しいアレンジだ。そして、不協和音的な響きを多用した、かなり捻ったアレンジで「YES-YES-YES」。それでも、終盤は、アルバム収録版に近いノリの良い演奏に持ち込んでフィニッシュ。
予想以上に、アレンジを変えて攻めてきたという印象のライヴで、満足感は高いのだが、私が大好きな「かたおもい」の演奏が忘れられているよぉ!
同じお題で二日目のライヴ。以前の上原ひろみさんとの「~Get Together~」は、一日でギュッと濃縮した録音だったが、今回は二日間。結果、一日目で1テイク担保したということがあったからだろうか、今日は、より奔放に、実験的かつ自由な演奏が繰り広げられたと思う。
昨日、飛ばしてしまった「かたおもい」は、今日は忘れないように二曲目で演奏。この曲は、昨日のテイク1が無いためか、比較的、崩さない演奏だったと思う。個人的には、もっと、はじけても良い曲だと思っているだけに、ちょっと残念。
一方、「電話線」は、昨日以上に崩した演奏で。そして、後半になるにつれ、ピアノ演奏がキレキレになって、大興奮。続く、「リラックマのわたし」は、「だらら」から始まるバージョンで、ホットケーキはさらに増量「8枚重ね」!そこから、シームレスに「在広東少年」。これがまた、オリジナルとも「Home Girl Journey」版とも違う、新しいアレンジ。最後には「リラックマ」のワンフレーズも出てきて、「在広東リラックマ」とでも言うべき一体化。やっぱり、矢野さんのライヴは、毎回、サプライズがある。
昨日、NHKで放送された「SONGS」(清志郎さんの特集)の話から、「きよしちゃん」。さらに、そこに出演していたのを見て、ということで「さすらい」。奥田民生さんの曲は、しばしばライヴで取り上げているが、この曲は久しぶりで、嬉しい。
そして、終盤。本編ラスト、怒濤の三曲は、まさに自由奔放に、キレの良い演奏。さらに、アンコール一曲目の、久々かつ、比較的オリジナルに近いアレンジの「また会おね」で泣かした後で、「YES-YES-YES」。昨日の実験的なアレンジから若干軌道修正したような感じで、アルバム収録版のディスコ調とは一線を画した重量級のサウンドながら、ノリも重視した素晴らしい演奏だった。
確実に、昨日からバージョン・アップしたような演奏が続き、でも、一日目の方が捨てがたいところも、もちろん有って、レコーディング・ライヴを二日間行うという試み、大成功だったと思う。ただ、次にこういう機会があると、やっぱり、二回とも行きたくなってしまうよなぁ。