IN/OUT (2024.7.28)

日中、猛烈な蒸し暑さ。そして、午後になると激しい雷雨。というのが、ほぼ毎日繰り返されています。たまに、にわか雨が降るなら風情もありますが、これは、もはや、熱帯の気候ですな……


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"Deadpool & Wolverine"24.7.26

Ryan ReynoldsとHugh Jackmanが共演するMarvel映画を観てきた。2016年の"Deadpool"、2018年の"Deadpool 2"の続編になる。

Ryan Reynoldsが演じる不死身のヒーロー Deadpoolを主役にしたこのシリーズは、X-menシリーズの外伝みたいな感じがあったが、ついに3作目にしてHugh Jackman演じるWolverineが登場である。2017年の"Logan"で重い終わり方をしたWolverineの物語だが、果たして、どのような形で再登場するのか…

映画の開始早々、度肝を抜かれた。いきなり、Deadpool = Ryan Reynoldsの、饒舌なメタ・フィクション的なモノローグと、R15+指定も当然のヴァイオレンス・シーンの乱れ打ち。一方で、”Logan”という作品に対するリスペクトを示しつつ、Wolverineの復帰に一応の必然性をもたらす設定の巧みさ(実際には、Hugh Jackman自身がノリノリという雰囲気だ)。そして、Wolverineの登場後も、メタ・フィクションとヴァイオレンスのてんこ盛りが続く。

ただし、ストリーも演出もワチャワチャし過ぎで、リズム感が悪いと思う。

だが、この映画の楽しいところは、アメコミとアメコミ映画に対する愛が徹底している事だ。MCUの中で乱用され気味の"Multiverse"についての指摘も鋭いし、Wolverineが原作アメコミ通りのスーツで登場するのも熱い(X-MENの映画シリーズでは、他のメンバーは、原作に近いコスチュームなのに、Wolverineだけは、漫画っぽく無い、男臭い扮装でカッコ付けていたのだ)。そして、なんと言っても、過去のアメコミ映画で使い捨てられたような扱いの登場人物達への愛が深い。中でも、"Logan"出演時は12歳だった Dafne Keenが、すっかり素敵になって、同じ役で出演しているのは胸熱(他にも、過去に演じたのと同じ役で登場する大物、多数!)。

結局、本作の裏テーマは、Deadpoolの前作までの製作会社 20世紀Foxが、ウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されたことだろう。”The Fantastic Four”、 ”X-MEN”、 ”Daredevil”などを抱えていた20世紀Foxだが、アメコミ映画では、ディズニー傘下のMarvel Studioに完敗。しかし、ディズニーに買収された今こそ、忘れられたキャラクターにも再び脚光を!というのを、この映画の脚本にも参加しているRyan Reynoldsが、冗談めかしているようで、結構熱く語っているのだ。

と言うことで、アメコミや、(MCU以外の)アメコミ映画に多く触れてきた人にとっては、爆笑シーンの連続だが、そうで無い人は置いてけぼり、という感じの、観る人を選ぶ映画だと思う。

あと、劇中に流れる音楽のセンスが、私にはドンピシャ。特に、Madonnaの”Like a Prayer”とGoo Goo Dollsの”Iris”が、実に良い使われ方をしているのだ。


「TRIO展」@ 東京国立近代美術館  (24.7.27

東京国立近代美術館パリのMusée d'Art Moderne de Paris(パリ市立近代美術館)、大阪中之島美術館、そして、東京国立近代美術館による共同企画展を観に、東京国立近代美術館に行ってきた。様々なテーマに合わせて、3つの美術館のコレクションからぴったりの作品をセレクトし、トリオを組んで展示するという企画である。

これは、中々、面白い着想だと思う。3つの都市を描いた風景画が並んでいたり、寝そべった女性モデルを描いた、Henri Matisse、萬鉄五郎、Amedeo Modiglianiの作品がトリオを組んだり。全32テーマ。

東京国立近代美術館意外に、具象画のトリオは、あまり響き合う感じのものがなく、抽象画のトリオ(写真は、「色彩の生命」というテーマで集められた、Serge Poliakoff、辰野登恵子、Mark Rothko)の方が、3つ一組で鑑賞する面白さが感じられる。

東京国立近代美術館絵画と立体造形でトリオを組む物もある(写真は、「有機的なフォルム」というテーマで集められた、Jean Arpの立体2つと、岡本太郎の絵画)。

全体的に、面白くはあるが、もう一つ、インパクトに欠けるというか、圧倒的な目玉作品が無いという印象ではある。恐らく、この企画、鑑賞者よりも、作品をセレクトした各美術館の学芸員の方々が、めっちゃ盛り上がったのではないだろうか?

音声ガイドは有村架純嬢。解説内容は、割と平凡だが、極めて聞き取りやすく、かつ、癒やし成分に満ちた声質が素敵過ぎる。このガイドを聴くだけでも、十分に価値がある(本末転倒?)美術展だと感じた。


「『オドル ココロ』 資生堂のクリエイティブワーク」@ 資生堂ギャラリー  (24.7.27

資生堂ギャラリー明治初期から2010年代までの資生堂のパッケージデザインと広告デザインの展覧会を観に、資生堂ギャラリーに行ってきた。昨年の「あいだ に あるもの ー1970年代の資生堂雑誌広告からー」から、さらに時代を拡げた企画展だ。

会場には、ずらっと、資生堂商品のパッケージが並ぶ。個人的には、MG5やTacticsが懐かしい!(今でも、ほぼ同じデザインのロングセラー商品だが、最近は購入していないので

資生堂ギャラリー流石だと思ったのは、冒頭に展示されてある1897年発売の「オイデルミン」。資生堂が最初に発売した化粧品とのことだが、実にお洒落。

資生堂ギャラリーそして、100年後の1997年に、同じ商品名で、ボトルの意匠もアップデートした商品を発売している。長寿企業の面目躍如である。

資生堂ギャラリー今となっては、迷走/暴走と思える商品があるのも、長寿企業ならでは。1989年~90年のサンケア商品「タコイル、イカスクリーン、マンボウシャンプー」は、今となっては色モノ感が強い…

まぁ、そういった時代を感じさせる物も含めて、資生堂という企業が一貫してデザインに拘ってきたことが良く伝わってくる。入場は無料。灼熱の銀座ショッピングの合間に訪れるのにお勧めのギャラリーである。


"My Neighbor Adolf"  (24.7.28

Adolf Hitlerの南米逃亡説を元にした映画を観てきた。邦題は「お隣さんはヒトラー?」。最近注目を集めているホロコースト関連の映画だが、新鮮かつ見事な切り口で異様な迫力を持った”The Zone of Interest(関心領域”とは違い、本作はコメディー調のタイトル。果たして…

1960年の南米・コロンビア。主人公は、ホロコーストで家族を全て失い、1人で暮らす老人。ある日、空き家だった隣の家に、ドイツ人男性が引っ越してくる。日頃はサングラスに隠れている彼の瞳を、たまたま見てしまった主人公は、彼がAdolf Hitlerだと確信する。

何とか、彼がヒトラーだという証拠を掴もうとする主人公だが、共通の趣味であるチェスを通じて交流も芽生える。しかし、その一方で、ドイツ人の家には、何やら怪しげな人達も出入りしている。果たして、ドイツ人は本当にヒトラーなのか? そして、2人の間に育まれ始めたように見える友情の行方は?

着想は悪くないし、最後に判明するドイツ人の正体が予想外。ラストの締め方も上手くまとまっている。全体としては、悪くない映画だろう。

ただ、演出全体が昭和っぽく、なんとも垢抜けない気がする。イスラエル・ポーランド合作映画の限界なのか?



勤務先は、これから1週間が夏期休暇(毎年、多くの企業が休みを取るお盆期間よりも早めなのが恒例)。しかし、この暑さでは、楽しみよりも、気が重くなる今日この頃です。