ドラマー、Simon Phillipsの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。
Simon Phillips以外のメンバーは、
・Otmaro Ruiz(key)
・Ernest Tibbs(bass)
・Jacob Scesney(sax)
・Alex Sill(guitar)
昨年観た "Protocol V"、2019年に観たProtocol" -30th Anniversary Tour-"と同じメンバーである。
ステージ向かって左に、ドラム・セット。例によって、ツイン・バスドラに大量のタム、シンバル等々、巨大な山塊の如し。真ん中奥がベース、右がキーボード。ステージ手前の左にサックス、右にギターという布陣。私の席は、幸いにもドラム・セットの真ん前。Simonの手捌き・足捌きをしっかり視認出来るポジションだ。
開演。キーボードの重厚な前奏から、一転、音の洪水である。ソプラノ、アルト、テナーの三本を使い分けながらメロディー・ラインをキメるサックスを軸に、ギターとキーボードが厚みを加え、ベースがしっかり全体を支える。これだけでも、一流のフュージョン・サウンドだが、そのバッグで轟き続ける圧倒的手数の爆音ドラムス。Simon Phillipsの凄さは、これだけの音数を繰り出しながら、1音1音、全てに必然性が込められている事だと思う。当たり前だが、単なる馬鹿テクではなく、深い音楽性に裏付けられたテクニックだ。
冒頭、メモ書きした日本語を含めた挨拶とメンバー紹介をした以外はひたすら演奏が続いたが、ステージの床に置かれたプレイヤー用のメモが見えたので、演奏曲目が判明。
・Jagannath(Protocol V)
・When The Cat’s Away(Protocol V)
・Pentangle(Protocol IV)
・Nyanga(Protocol V)
・Narmada(Protocol III)
・Alex acoustic solo
・The Long Road Home(Protocol V)
・Drum solo
・Manganese(Modern Drummer Presents Drum Nation Volume One)
ということで、迫力のパフォーマンスを堪能。正直、昨年のライヴと似た感じで、新鮮さは無かったのだが、この怒濤の音圧&的確なテクニックを毎年のように浴びられるというのは、なんとも贅沢で、ありがたいのである。
ブルーノート東京が主催するライヴ・イベントを観に、TOKYO DOME CITY HALLに行ってきた。
このイベントは2回目の開催なのだが、昨年はチケット争奪戦に敗退し、私は今年が初参戦である。参加ミュージシャンが、今の日本のフュージョンを代表する大物揃いなのだ。
なお、開演前から、場内の写真撮影に対してかなり厳しい対応が取られている。複数のミュージシャンが集まるので権利関係が複雑なのか? その代わり、お高いVIP席チケット購入者には、来場記念撮影の特典が付いているようだが…。
本日のメンバー
・BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO
・T-SQUARE
・かつしかトリオ
・coba × JIN OKI
・THE JAZZ AVENGERS
ステージ上には、初めからビッグ・バンド用の座席が用意され、各プレーヤー用に、ドラム・セットは4組、キーボードも多数並んでいる。セット・チェンジの時間を短縮する工夫だろう。
16時30分、開演。まずは、THE JAZZ AVENGERS。
川口千里(ds)/ 瀬川千鶴(g)/ 竹田麻里絵(key)/ 芹田珠奈(b)/ 米澤美玖(ts)/ 寺地美穂(as)/ WaKaNa(ts)/ 中園亜美(ss)
私が大好きなドラマー、川口千里率いる、女性だけの8人組。内、4人がサックスというのが特徴。私が大いに注目しているバンドだが、その派生ユニット「O型新人」のライヴに先に参戦し、本体を観るのはこれが初めてだ。
さすが、若手女性のバンド、ステージに華がある。そして、皆、上手い。「As You Like」での観客の煽りっぷりも見事なものだ。そして、華やかなサックス4人の裏で、爆音ドラムを叩きまくる川口千里、やはり良い!小柄すぎて、観客席からは視認できず(ありがたいことに、アリーナの比較的前方だった)、スクリーンでしかプレイの様子が見えないのが残念ではある。今後も、彼女らの動向はチェックしておきたいところだが、ヴィジュアルの良さを前面に出して、ジャズ好きおじさん向けアイドル、みたいな売り出し方をしているのは、実力派だけに、逆に勿体ないと思う。
メンバーが捌け、川口千里だけが残り、ドラム・ソロ。これは嬉しいと思っていたら、いつの間にか隣には、T-SQUAREのドラマー坂東慧がスタンバイし、ソロを引き継ぐ。さらに、その隣には、かつしかトリオの神保彰。3人の豪華共演に興奮していたら、まさかの4人目、仙波清彦師匠も参加。神保彰がパッドに仕込んでいた「Spain」の旋律を流しながらの、4人の共演! こと、テクニックに関しては、やはり神保彰が凄すぎる。一方で、仙波師匠の、ギャグも交えた余裕の(それでいて、見事にツボを押さえた)パーカションが光る。
そして、神保彰だけが残り、続いてのバンド
かつしかトリオ。
櫻井哲夫(b)/ 神保彰(ds)/ 向谷実(key)
カシオペアの初期メンバーが結成したバンドだ。
向谷実のキーボードの音色は、1970年代~80年代の、まさにフュージョン、という懐かしさを感じる。そして、当たり前だが、3人とも上手い! さらに、向谷実は、喋りも見事(次回は、総合司会もやりたい、とのこと)。
かつしかトリオの演奏後、向谷実が残り、T-SQUAREのサックス奏者、伊東たけしと2人でしっとりと、「Forgotten Saga」。2021年に亡くなったT-SQUAREのキーボーディスト 和泉宏隆の作品だ。
泣ける演出の後は、
T-SQUARE。
現在の正式メンバー、伊東たけし(sax, EWI)/ 坂東慧(ds)に加え、松本圭司(key) / 田中晋吾(b) / 杉村謙心(g)
彼ららしい、明朗快活なノリ。そして、途中からは、以前、メンバーだった本田雅人も参加。さらに、初期メンバーだった仙波師匠も加わって、楽しい演奏が続く。最後、伊東たけし(古稀!)と本田雅人(還暦超え!)のアドリブ合戦が熱い。
ここで、20分間の休憩が入り、
coba × JIN OKI。
まずは、アコーディオン奏者のcobaが一人で演奏。卓越した技術で会場を沸かせた後、フラメンコ・ギタリスト 沖仁のソロ。こちらも超絶技巧だ。そして、二人の共演。さらに、仙波清彦師匠のパーカッションと櫻井哲夫のベースも加わった演奏になだれ込む。ピアソラの「リベルタンゴ」など、このイベントの中ではタイプの違った曲なのだが、圧倒的な技巧と熱量で、大いに盛り上がる。テクニックだけで言えば、沖仁が今日の優勝だと思うほどの、素晴らしいフラメンコ・ギターを堪能。ただ、元々coba氏は、このイベントには渡辺香津美も一緒に出演するつもりだったとのこと。確かに、この場に香津美がいないのは寂しい……。厳しい病状だとは聞くが、なんとか快復してもらいたいものだ。
最後は、BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO。
本日のメンバーは、
エリック・ミヤシロ(tp, conductor)/ 本田雅人(sax)/ 小池修(sax)/ 鈴木圭(sax)/ 米澤美玖(sax)/ 青柳伶(sax)/ 小澤篤士(tp)/ 山崎千裕(tp)/ 村上基(tp)/ 宮城力(tp)/ 中川英二郎(tb)/ 木崎澪(tb)/ 藤村尚輝(tb)/ 玉置優里(tb)/ 宮本貴奈(p)/ 川村竜(b)/ 川口千里(ds)
ジャズアベと、川口千里・米澤美玖がダブっているのが、嬉しい。
「20th Century Fox Fanfare」から、Cory Wongの「Assassin」、Chick Coreaの「Got a Match」、Cory Wongの「St. Paul」と最近の定番の流れ。さらに、Pat Metheyの「The First Circle」、David Sanbornへの追悼の「The Dream」と続く。やはり、このビッグ・バンドの音、心地よい。
本編最後は、小池修と米澤美玖のテナー・サックス・バトルをフィーチャーして、Snarky Puppyの「Lingus」。
そして、アンコール。BNT All-Star Jazz Orchestraが、これまでの出演バンド全てと、それぞれの代表曲を共演するという、25分間超えの、とんでもないアンコール! まずは、ビッグ・バンドでおすまししていた米澤美玖が、再びキャピキャピモードに戻っての、THE JAZZ AVENGERS。ビッグ・バンドで厚みが増した「Unite」。そして、かつしかトリオ「Red Express」、T-SQUARE「Omens of Love」、coba × JIN OKI「Sara」と、たっぷり共演していく。そして、最後、BNT All-Star Jazz Orchestraとしてのアンコール曲は「Birdland」。
因みに、本田雅人がT-SQUARE側で演奏した時には、空席になったビッグ・バンドの彼の席にジャズアベの寺地美穂が何気に座って演奏に加わっている。そして、エリック・ミヤシロの指揮で、バンド全員でお約束の「OMENジャンプ」を決める。こういう、ミュージシャン同士が、バンドの枠を超えて楽しんでいる姿は、観ている方も楽しいのだ!
ということで、終演は、21時超え。川口千里のドラムスはもちろん、超絶テクニシャンばかりの、捨て曲無しのパフォーマンスに、もう、お腹一杯、大満足である。
Scarlett JohanssonとChanning Tatum主演の映画を観てきた。
Scarlett Johanssonが演じるのは、広告業界のやり手女性。その手腕を買われ、NASAのPR担当に抜擢される。当時は、度重なる打ち上げ失敗や、泥沼化するベトナム戦争などで、アポロ計画に対して世論の逆風が吹いていたのだ。彼女は辣腕ぶりを発揮し、協賛企業とタイアップし、アポロ計画への予算承認に反対する議員を説得し、米国民のアポロ計画への関心をかき立てる事に成功していく。
一方、Channing Tatumが演じるのは、NASAの発射責任者。国家への忠誠を尽くす堅物で、Scarlett Johanssonの女性としての魅力には惹かれながらも、その型破りな行動には否定的。
そんな中、Scarlett Johanssonは、政府の上層部から、月面着陸に失敗したときのバックアップ・プランとして、フェイク映像の製作を指示される。米ソ冷戦の中、宇宙開発競争に後れを取ってきた米国にとって、アポロ11号の失敗は許されないのだ。果たして、フェイク映像は本当に作られ、放映されるのか? そして、Scarlett JohanssonとChanning Tatumの恋の行方は? というお話。
ツッコミどころは多いが、機転の利いた軽妙な作品だ。ラストの落とし所は、実に上手い。劇中、アポロ計画従事者へのリスペクトが貫かれている点も好印象。
果たして、Scarlett Johanssonのような舌先三寸PRパーソンに政府の極秘ミッションを任せるのか? という根本的な疑問は、彼女の存在感がねじ伏せてしまう。と言うか、彼女がいなければ成立しない映画だと思う。まさに、唯一無二の俳優だ。
なお、この作品は、中々に痛快な猫映画でもある。多くの人にお勧めできる。
JAZZ-FUSION SUMMITの終演後、ホール内は退場する人で大渋滞。元々、導線があまり良くない会場だとは思っていたのですがが、今日は特に進まない。ようやく、出口に近づいてみると、外は豪雨。私のように傘を持っていない人はもちろん、 傘を持ってきた人でも、外に出るのを躊躇するような土砂降りで、皆、会場から出られないという状況でした。結局、多少、降りが弱くなったのを見計らって会場を出たのは、終演から30分ほど経ってから……。梅雨明け直後って、安定した晴天が続くものだと油断していました。過去の気象の常識は通じなくなったと実感する、今日この頃です。