IN/OUT (2023.5.7) |
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大型連休、終了。一週間は長いような、短いような。 最近のIN"The Super Mario Bros. Movie" (23.5.1)任天堂が、米国のアニメーション製作会社”Illumination”と組んで、ロングセラーのTVゲーム・シリーズを映画化した作品を観てきた。 全世界で大ヒットということで観に行ったのだが、正直な所、ゲームは苦手で、家庭用TVゲーム機を所有したことが無いし、マリオ関連でプレイしたことがあるのは、大昔の喫茶店で、数回、ドンキーコングをやった程度である。そんな私でも楽しめるのか? 結論から言うと、結構楽しめた。マリオ・ブラザーズについては、プレイ経験の有無に関わらず、日本で普通の生活を送っていれば、ある程度の情報(水平スクロールで動くとか、キノコが関係しているとか、カートも有るとか)は、頭に入っているのだ。製作者もその前提で、ゲーム世界のルールを説明するような無粋な手間は掛けない。それでも、なんとなく理解出来てしまうのが、このゲームの凄さだろう。 ストーリーは、極めてシンプルと言うか、工夫が無いと言うか…。ただ、映画化だからといって、過剰な大風呂敷を広げないのは好印象。一方で、ゲームを知っていれば知っているだけ、楽しみが増すような小ネタが画面のあちこちに仕組まれているのだろうと、私でさえ想像がつくのは、製作陣のマリオ愛がストレートに画面に反映されているからだと思う。任天堂のゲーム・デザイナー 宮本茂とIlluminationの創設者兼CEO Chris Meledandriが組んだプロデューサー・チームが、実に的確にこの映画プロジェクトを運営したのだと思う。 声優陣(字幕版で鑑賞)では、Princess Peach役のAnya Taylor-Joyのハマり具合と、Bowser(クッパ)役のJack Blackのノリノリの芸達者ぶりが楽しい。 音楽の使い方もポイント高し。ゲーム音楽(私でも知っているメロディー多し)のアレンジも巧みだし、布袋寅泰、Bonnie Tyler、 a-ha、AC/DCらの曲の使われ方も楽しい。1980年代から続くシリーズだけに、音楽も懐かし目のものを採用したのだろう。 ということで、恐らく、任天堂とIlluminationは、二匹目・三匹目のドジョウも狙うだろうなという気がするが、あまりマニアックな方向に走ると、私にはついて行けなくなるかも。 "Guardians of the Galaxy Volume 3" (23.5.3)MCUの最新作を観てきた。奇しくも主演は"The Super Mario Bros. Movie"でMarioの声優を務めているChris Pratt。このシリーズの前作"Guardians of the Galaxy Vol. 2"は、邦題が”Vol.2”ではなく「リミックス」という意味不明な物になっていたが、今回は、真っ当に原題のままでの日本公開だ。 ストーリーの中心は、主要登場人物の一人、Rocket。アライグマの彼が、何故、高い知能を持ち、Avengersの一員となるほどの活躍が出来るようになったのかが語られる。もちろん、他のレギュラー・メンバー達の見せ場もたっぷり。3作目にして、すっかりお馴染みになったGuardiansのチームワークが心地よく、独特のテンポの笑いが楽しく、それでいて、ここ一番ではカッコ良さが全開となるメリハリの付け方が巧み。どこを切り取っても、嫌な気分になるシーンがなく、ラストの着地も見事。娯楽作として満点だと思う。本作で三部作の完結となるようだが、それが勿体無く思える快作だ。 このシリーズのお楽しみ、挿入される楽曲も、相変わらず私好みのものが多い。Radiohead、Heart、Rainbow、Beastie Boys、Florence + The Machine、Bruce Springsteen等々、いずれも、素晴らしい使われ方。前作までは、いわゆる懐メロ洋楽がメインだったが、今回は、1970年代から2000年代まで、幅広い年代の曲が使われている。それは、再生に使われるデバイスが、カセットテープではなく、Zuneになったから!同感してくれる人(というか、そもそも理解してくれる人)が少なそうだだが、へそ曲がりのガジェット好きには、堪らない設定だ。 さらに、極私的ツボに刺さったのは、終盤に、Adrian BelewとKing Crimsonへの言及があったこと。やはり、James Gunn監督は信頼できると確信。あと数回は鑑賞したい。 "Eo" (23.5.5)ポーランドのベテラン映画監督 Jerzy Skolimowski(御年 84歳)の新作を観てきた。 主人公は、Eoという名前のロバ。サーカスでコンビを組む女性芸人に可愛がられていたのだが、動物愛護団体の抗議とサーカスの経営不振の結果、牧場に引き取られてしまう。だが、彼女を追って牧場を逃げ出したEoは、夜の森を彷徨い、たまたま居合わせたサッカーの試合で勝利の女神に奉られ、理不尽な暴力に遭い、訳ありそうなイタリア人司祭のお屋敷に連れられ…と、流浪の旅を繰り広げる。 しかし、動物と人間のふれあいを描くほのぼのストーリーとは対極にある作品だ。無条件に愛情を注いでくれたサーカスの娘以外、出会う人間は、皆、身勝手にEoに接する。それに対し、Eoはひたすら受け身。淡々と歩みを進める。劇中、何度もクローズアップされるEoの瞳と、その視界と思われる赤が強調された幻想的な映像。絶対的な客観者として、Eoは人間社会に振り回される。 これが、犬や猫、あるいは馬などでは、この味わいが出ないだろう。ロバの、愛嬌がありながらも、どこか悲しそうな表情が有ってこその映画だ。 ロバの存在感が映画製作者を刺激するのだろうか? 今年、鑑賞した中で、ロバが重要な役回りを果たす映画は、3本目だ。”The Banshees of Inisherin”、”Triangle of Sadness”。そして、本作が真打ちの「ロバ映画」である。 "La Brigade" (23.5.5)多くの移民を抱えるフランスを舞台に、シェフと移民の少年達の交流を描く映画を観てきた。原題は、「(軍隊の)旅団、分隊」という意味。邦題は「ウィ、シェフ!」。 主人公は、一流店でスーシェフを務める女性。しかし、プライドが高い彼女は、マスコミにも度々登場する有名シェフと衝突し、店を辞める。新しい職場として見つけたのは、移民の少年達が暮らす自立支援施設。当初は、食材も調理設備も全く整っていない厨房に頭を抱えるのだが、少年達に料理を教えながら助手として使う内に、少年達にも彼女自身にも変化が…。というお話。 成人年齢に達するまでに資格を得なければ強制送還される移民少年達の厳しい現実を描きつつも、全体的には予定調和的なストーリーである。あまり深刻な葛藤はなく、底が浅いとも言える。日本では、このレベルの移民受け入れは難しいだろうなという真面目な感想も頭をよぎるが、基本、呑気に鑑賞した後に爽快な感覚が残るタイプの映画だ。 なお、鑑賞前は、原題が意味不明だと感じていたのだが、終盤の展開でその意味が明らかになる見事さも印象的だった。こういう軽妙なお気楽映画、結構好きである。 「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」@東京都現代美術館 (23.5.6)ファッション・デザイナー Christian Diorの回顧展を観に、東京都現代美術館に行ってきた。パリのMusée des Arts décoratifs(パリ装飾芸術美術館)で開催された後、ロンドンのVictoria and Albert Museum、上海の龍美術館(西岸館)、成都の成都当代美術館、ニューヨークのBrooklyn Museum、ドーハのM7などを巡回してきた展覧会である。 ファッション・デザイナーに焦点を当てた展覧会では、三菱一号館美術館の「ガブリエル・シャネル展」や、Bunkamura ザ・ミュージアムの「マリー・クワント展」が記憶に新しいが、それらが、デザイナーの業績を時系列に整理したり、当時の社会に与えた影響を考察したりというアプローチだったのに対し、この展覧会は、ただただ、ハイ・ブランドとしてのディオールの美意識を徹底的に見せつけるもの。 写真家 高木由利子が今展のために撮り下ろした写真も多数展示され、それも効果的。 特に、この美術館の企画展示室の特徴、巨大な吹き抜け空間をたっぷり使った「ディオールの夜会」と名付けられたセクションは圧巻。3階分の吹き抜けにひな壇のようにマネキンが並び、さらに、プロジェクション・マッピングでその表情が刻々と変わる。この空間のゴージャスさを、どう表現すれば良いものか…。とにかく壮観。 意地悪い言い方をすれば、お金持ち臭が充満していて、反感も覚えてしまうのは、私の狭量さか。 当日券は、毎日、早々に売り切れ。日時指定の予約優先チケットも取得難(転売ヤーの標的にもなっているらしい。発売開始と同時に気合いを入れてゲットして正解だった)という人気の展覧会だが、確かにこの空間を体感する価値大だと思う。 遠出こそしなかったものの、まぁまぁ充実した連休でした。 |